【林士平の推しマンガ道】2025年、"ロマンタジー"旋風が日本にも到来!?

2025年のエンタメを牽引するであろう、今注目のジャンル"ロマンタジー"。マンガの世界でも同カテゴリーを広げる力のある作品が、続々と生まれている!

2025年のエンタメを牽引するであろう、今注目のジャンル"ロマンタジー"。マンガの世界でも同カテゴリーを広げる力のある作品が、続々と生まれている!

林士平の推しマンガ道

全米を席巻する"ロマンタジー"が日本でもブームの予感。創作における王道ともベタともいえる、ロマンスを軸に構築されるファンタジー。そこにキャラクターの関係性や描写で新しい魅力を加えた3作を紹介します。

『夜明けの唄』ユノイチカ著

『夜明けの唄』ユノイチカ著
シュークリーム from RED/ 既刊5巻・814円〜

夜の海でエルヴァに助けられた日から、アルトは彼の家に通い身の回りの世話をするように。まっすぐな想いは「覡」の苦しみを和らげ心身を癒やす。強い絆で結ばれた二人が謎に挑む。

ユノイチカ先生が大ヒットを飛ばす『夜明けの唄』。純愛のほか運命と救済を描く物語の中心にいるのは「覡」と呼ばれる巫子と、彼を慕う村の男の子です。黒い海に囲まれた島、人を襲う夜の海と闘う覡、という緻密な設計があり、読み進めるとその世界観がグッと広がるというか変形する瞬間がある。こちらの想像を超える展開にずば抜けた画力がのっかって、ドライブ感たっぷり。BL系アワードでの受賞が多いですが、BLにあまりなじみがない人にも迷わずおすすめしたくなる作品です。

『死に戻りの魔法学校生活を、 元恋人とプロローグから (※ただし好感度はゼロ)』白川蟻ん著 六つ花えいこ原作 秋鹿ユギリキャラクター原案

『死に戻りの魔法学校生活を、 元恋人とプロローグから  (※ただし好感度はゼロ)』白川蟻ん著 六つ花えいこ原作 秋鹿ユギリキャラクター原案
KADOKAWA フロースコミック/既刊5巻・715円〜

17歳のオリアナと恋人のヴィンセント。二人の人生が唐突に断ち切られたあと、オリアナは記憶を持ったまま7歳の頃にループ。再び出会ったヴィンセントには前世の記憶がなかった。

『死に戻りの魔法学校生活を、元恋人とプロローグから(※ただし好感度はゼロ)』、この連載で紹介するマンガでは最長タイトルですね。六つ花えいこ先生による原作小説があり、キャラクター原案を秋鹿ユギリ先生、コミカライズを白川蟻ん先生が担当。異世界、ループ、学園モノなどなじみ深いタグを並べつつ、ひねりをバチッとはめ込み新規性を打ち出しています。タイトルの言葉の並べ方も面白い。魔法学校の生徒が過去に戻ってある出来事を防ごうとするんですが、1回のループをこのボリュームでやるというのが新鮮です。素直で積極的で、恋心をまっすぐ伝え続けるヒロインの造形が魅力的。背景と出来事の組み合わせに意外性があり、絵がきれいで画面作りも巧み。ぜひともアニメ化してほしいですね。

『ハヴィラ戦記』みのすけ著 町健次郎文化監修  西村奈美子生きもの監修

『ハヴィラ戦記』みのすけ著 町健次郎文化監修  西村奈美子生きもの監修
集英社  ヤングジャンプコミックス/ 既刊1巻・880円

奄美群島で発見された蝶人(ハヴィラッチュ)は小さな人型の生き物。人間に管理された保護区内で暮らす彼らには、家庭も仕事も学校もあるが自由はない。主人公たちの運命の行方は?

みのすけ先生の連載デビュー作『ハヴィラ戦記』の舞台は奄美群島。蝶人という小さな人型の生き物の世界が描かれます。彼らは絶滅を防ぐという名目で人間に管理され、それぞれ交配相手を決められている。人がよかれと思ってやっている種の保護。対象を擬人化するとここまでエグくなるのか、とまず衝撃を受けます。主人公の忍野はつがいであるマイに恋心を抱きつつ、相手を尊重し、マイの自由を必死で守ろうとする優しい男です。小さき存在であるがゆえの危険があり、ある事件をきっかけに蝶人たちのレジスタンスが活発になっていくのですが、この先の展開も、箱庭的世界と外側をどう描くのかもまったく想像できません! 早く続きが読みたい!

林士平プロフィール画像
マンガ編集者林士平

マンガ編集者。「少年ジャンプ+」の人気作品のほか、『クニゲイ〜大國大学芸術学部映画学科〜』『ヤッターラ』『良太は弟を殺した』などの新連載、読切も担当。椎名林檎さんのライブがめっちゃよかったです!

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