美しく、迫力のある泳ぎで 世界のトップを目指す! パラ水泳/南井瑛翔さん【パラアスリートが見つめる未来 vol.16】

パラ水泳/南井瑛翔さん

SPUR7月号 南井瑛翔 パラ水泳

生まれつき左足首から先がない南井瑛翔選手は、まだ22歳ながら、日本のパラ水泳界の期待を集める若きホープだ。

「幼稚園の年長組のとき、スイミングスクールから出てくる子どもたちが楽しそうに見えて、自分も習ってみたいと感じたのがきっかけでした。さらに、両親も生身の体ひとつで勝負する競技である水泳を習わせたいと考えていたそうです。『障がいがあるからといって隠れて暗くならず、自信を持って生きてほしい』と。両親の願いは、後になってから聞きました」

水泳にのめり込み、小学3年生のときには、スクールの上級クラスの受講が完了するほど上達。

「日常生活では義足をつけており、幼少期からサッカーをしたり、走ったりしていました。そんな中、水泳は競技として練習を積み重ね、記録を更新できることがうれしかった。僕は水と相性がよかったんだと思っています」

そんな彼は競技人生のターニングポイントに、パラ水泳の世界に飛び込んだ15歳の頃を挙げた。

「それまでパラアスリートが競い合う世界があることも知らなかったんです。中学生から水泳部に所属し、健常者と一緒に練習や試合に出場していました。ぼんやりと周りとは違うと考えていた頃に、顧問の先生から紹介されて、パラ水泳の選手育成コースの練習に参加しました。そこで泳ぐことへの熱量が増した。自分も活躍できる場があることを知り、同じ障がいのクラスの選手たちと戦えるのが、何よりも面白かったです」

SPUR7月号 南井瑛翔 パラ水泳
写真:SportsPressJP/アフロ

現在は自由形、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライ、そして個人メドレー、すべての種目で卓越した才能を発揮し、4つのアジア記録を含む8つの日本記録を保持する。

「足の長さに左右差があるので、バランスを取るのが難しいんです。今は均等に力をかけられるよう、ウエイトトレーニングに取り組んでいます。泳ぐとき以外は義足をつけるので、スクワットやエアロバイクをこいで持久力を強化することも。僕のフィジカルの強みは肩幅。ガッチリとした上半身を生かし、ダイナミックな泳ぎができるのが自慢です。速さを追求していくことは大前提で、その上で美しくて、カッコいい存在感のある泳ぎを目指しています」

そんな彼が夢中になる、パラ水泳の魅力を聞いた。

「僕のように軽い障がいのある人も、重い障がいを抱える人も、それぞれが今ある機能を最大限に生かし、速く泳ぐ工夫をしているところです。今年の目標は、世界パラ水泳選手権大会に出場し、メダルを獲得すること。それで2026年のアジアパラ競技大会や、2028年のロサンゼルスパラリンピックに弾みをつけたいです!」

南井瑛翔プロフィール画像
南井瑛翔

みない あきと●2002年10月15日、滋賀県生まれ。5歳から水泳を始め、生まれつき左足首から先がなかったことから中学3年生でパラ水泳の世界へ。運動機能障がいが最も軽いクラスで活躍。高校卒業後、近畿大学に進学。大学1年時に東京2020パラリンピックに出場。杭州2022アジアパラ競技大会では100mバタフライ、200m個人メドレーで金メダルを獲得。パリ2024パラリンピックでは100mバタフライと100m背泳ぎで入賞。トヨタ自動車所属。

南井さんを読み解く3つのS

Smile

休日は映画やドラマを観てリフレッシュしています。最近ハマっているのは、サスペンスホラー作品の「ガンニバル」。ホラー系はあまり得意ではないのですが、ミステリーやアクションの要素が組み合わさっていて面白いので、ドキドキしながら夢中で観ています。

Sleep

寝るときは、枕もとの両サイドにぬいぐるみを置いて、わざと閉じた空間を作っています。狭いほうが落ち着いて眠れる気がするんです。寝すぎると体が重く感じるので、試合の前日は気をつけていますが、休日は朝起きて食事をとって、二度寝することも(笑)。

Society

自分の泳ぎや発言を通して、障がいの有無に関係なく、多くの人に勇気を与えられる存在になりたい。そんな思いで競技に取り組んでいます。誰かにとって安心できる社会をつくる一助になれたらという気持ちもあります。そのためにも結果を出すことが第一です!

 

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