次の休暇はこれを読もう! コンパクトに楽しめる名作3選【林士平の推しマンガ道】

マンガに没頭する一学生だった林士平さんを夢中にさせた名作SFと、"編集者魂"を突き動かした2作。読めばエネルギーをもらえるマンガって?

林士平の推しマンガ道

今月のおすすめは元気がもらえるマンガ!1〜2日間の休日でも一気に読めそうな、完結し、かつ巻数少なめの3作を選んでみました。

『プラネテス』幸村 誠著

『プラネテス』幸村 誠著
講談社/ 全4巻・各825円

21世紀。活発な宇宙開発によって生じるスペースデブリ(宇宙空間に漂うゴミ)を回収するハチマキたちの人生を軸にしたSFマンガ。マンガとアニメで星雲賞を受賞。

『プラネテス』は、学生時代にコンビニで第1話を立ち読みして衝撃を受け、掲載誌を買いました。連載第1話ながら、連作短編のようなつくりになっています。わずか46ページの短さにして、「終わった、帰投する」という言葉で締める最後の1コマまで完璧。1巻収録の2〜5話も完成度が高く、絵に割かれたカロリーも膨大で、手はじめに1巻だけ読んでも大満足間違いなしの名作です。幸村誠先生、これがデビュー作なんだからびっくりします。宇宙と地球を舞台にしたSFで、想像できないほど遠くではない近未来。見たことのないもの、知らないものに触れて、読むたび脳みそが喜ぶのをひしひしと感じます。大きなテーマはずばり「愛」。そこから哲学にも近接していきます。これは連載中の『ヴィンランド・サガ』にも継承されていますよね。

『ひゃくえむ。新装版』魚 豊著

『ひゃくえむ。新装版』魚 豊著
講談社/ 上下巻・各1,320円

人はなぜ、何のために走るのか。脚力で居場所を確保していた小学時代から、部活、インターハイ、プロの道へ。100mを疾走する男たちの姿を追うヒューマンドラマ。

読んですぐさま先生に連絡を取り、会いに行くほど衝撃的だったのが『ひゃくえむ。』と『映画大好きポンポさん』です。『チ。』で大ブレークした魚豊先生の連載デビュー作『ひゃくえむ。』は、新装版なら上下2巻組。キャラの人間味に魅せられて、100m走のごとく一気読み推奨の陸上マンガです。僕が特に好きなのがトガシ。天才が天才でなくなり、それでも抗うさまに心をつかまれます。名台詞がたっぷりで、ネームとがっちり噛み合っている。シーンの演出も熱量のある絵もすごいんです。

『映画大好きポンポさん』杉谷庄吾【人間プラモ】著

『映画大好きポンポさん』杉谷庄吾【人間プラモ】著
KADOKAWA/ 全3巻・880円〜

映画プロデューサーの少女を中心に、映画に人生を懸ける人々を描く。pixivへの投稿後、2カ月で50万ビュー突破! 「ニャリウッドスタジオシリーズ」の看板作品。

杉谷庄吾先生の『映画大好きポンポさん』はpixiv※発。ディスプレイで見せる作品ならではの、カラー絵の使い方に新しい時代を感じました。映画好きの青年が映画を撮って成功する。そんな夢物語の実現が、WEBでバズって単行本になり、劇場アニメ(2021年公開)も製作されるという現実とリンクします。たびたびニヤリとさせてくれるし、フリを回収する構成も見事。ひと目で先生の絵だとわかるキャラ造形もいいんです。自由に動き回るポンポさん。スピンオフも作られたフランちゃん、カーナちゃんたちも可愛いです。同タイトルだと全3巻ですが、スピンオフ、オムニバスを含めると7冊が刊行されているシリーズです。SNS等に掲げられている杉谷先生おすすめの順番で読んでみても。

※イラストやマンガ、小説の投稿・閲覧用プラットフォーム

林士平プロフィール画像
マンガ編集者林士平

マンガ編集者。「少年ジャンプ+」で連載中の担当作に『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』『ダンダダン』『幼稚園WARS』『BEAT&MOTION』。友人と富山サウナ旅に行ってきました!

マンガに関する記事はこちら!

FEATURE