【林士平の推しマンガ道】旅情もリアルな情報もマンガで摂取

次の休みの予定を思案している旅好きにも、おこもり派にもすすめたい! 読めばムズムズ、未知の景色に心が躍り、旅に出たくなるマンガを紹介します

次の休みの予定を思案している旅好きにも、おこもり派にもすすめたい! 読めばムズムズ、未知の景色に心が躍り、旅に出たくなるマンガを紹介します

林士平の推しマンガ道

Google Earthで旅の疑似体験もできてしまう現代ですが、描き手が実際に訪れたからこそ生まれる物語性が付与され、臨場感を味わうことができるのが旅マンガ。ひとり旅、バックパッカー、ホテル滞在を楽しむホカンスまで、今月は旅好きとしてもマンガ好きとしてもおすすめできる3作です。

『ぼっち旅〜人見知りマンガ家の ときめき絶景スケッチ〜』鳶田ハジメ著

『ぼっち旅〜人見知りマンガ家の ときめき絶景スケッチ〜』鳶田ハジメ著
フレックスコミックス  ポラリスCOMICS/770円

行く場所も計画も変更だって自由! 西表島でヤシガニを探したり、砂漠への憧れを満たすべく船に乗ったり、時には人と交流したり。旅の楽しみと絶景の連打に心躍るエッセイマンガ。

鳶田ハジメ先生の絵に旅心を盛大にくすぐられる『ぼっち旅〜人見知りマンガ家のときめき絶景スケッチ〜』。作家の脳内をとおって出てきた風景描写は、動画や写真では得られない心地よさと緻密さに満ちている。すごくいい。一枚絵、背景、おまけページのMEMOや旅の持ち物、装備やお土産の図解まで、絵の力に惹きつけられっぱなしです。旅の行程だけでなく、計画や準備、シミュレーションの段階から旅の楽しみって始まっているんですよね。極寒の網走や船で行く伊豆大島など、未知なる場所への憧れに加えて、自分も旅マンガの編集がしたい! と仕事モードまで刺激される作品でした。鳶田先生の旅マンガをもっと読みたい! 続編を心から待ち望んでいます。

『つかれたときに読む 海外旅日記』五箇野人著

『つかれたときに読む 海外旅日記』五箇野人著
小学館 ゲッサン 少年サンデーコミックススペシャル/ 既刊5巻・1,090円〜

世界各地で"袖触れ合った"人たちと、話したり写真を撮ったり家に招かれたり。SNSとブログで公開された旅マンガに未公開作品を加えた無印、続編、さらに3〜5巻が発売中。

さらなる未知を見せてくれるのが、『つかれたときに読む海外旅日記』。アジア、ヨーロッパ、中南米、アフリカなど、世界中を旅する五箇野人先生のエッセイマンガです。甚平姿でハチマキを締め、すれ違う人にはおじぎで挨拶。話しかけられたり一緒に写真を撮ったり、家に誘われたり、ローカルの極致と言いたくなる場所と体験が描かれます。自分だったら絶対に越えられないであろう、人と人を隔てる壁をスルリと抜けた先に見える景色。作家の目線をとおして発見される、世界の温かさがうれしいマンガです。

『おひとりさまホテル』まろ原案・マキヒロチ漫画

『おひとりさまホテル』まろ原案・マキヒロチ漫画
新潮社 バンチコミックスコラル/ 既刊4巻・各792円

ホテルを手がける設計会社に勤め、ホテル愛にあふれる主人公と同僚たち。それぞれのやり方で、実在する施設やサービスを楽しみ、日常的に"非日常"を満喫する姿が描かれる。

マキヒロチ先生の『おひとりさまホテル』は、『おひとりホテルガイド』の著者・まろさんが原案を担当。実在する国内外のホテルや街を、リアルな情報満載で描いていてホカンス欲が煽られます。このマンガの発明は、なんといっても「ホテルを作る人たち」を中心に据えたこと。ホテルのサービスや建築を評価したり分析したりする目線や言葉に納得しながら読み進められます。今すぐ予約を入れたくなる新しいホテルも知ることができて、山の上ホテルやホテルオークラのようなクラシックホテルの歴史に触れられるのもいいですね。

林士平プロフィール画像
マンガ編集者林士平

マンガ編集者。「少年ジャンプ+」の人気作品のほか、『ケントゥリア』『おぼろとまち』『さらしもの』など新連載も担当。僕もときどき近くのホテルをとって、マンガを読んだりサウナに入ったりしています。

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