小説やRPGゲームを通じて親しんできた、冒険の場所"ダンジョン"に心躍らせる。オールタイムベスト級の長編マンガを筆頭に、今読みたい3作品 『ダンジョン飯』九井諒子著 KADOKAWAハルタコミックス/全14巻・各792円 レッドドラゴンに食べられたファリンを救い出すため、ライオス一行は地下へ潜る。迷宮で長く暮らすセンシとともに、モンスターと戦い、倒し、おいしく調理しながら探検を続ける。 アニメ化もされ快進撃を続ける『ダンジョン飯』。メイド・イン・ジャパンのファンタジーが世界に注目されるきっかけになる! そう断言したくなるほどの、想像を絶する面白さに大興奮した、九井諒子先生初の長期連載作品です。全14巻を一気読みしたあとも、作品世界から抜け出したくなくて『ダンジョン飯 ワールドガイド 冒険者バイブル 完全版』も熟読しました。高密度に構築された世界観、キャラクターたちの人生と哲学と趣味嗜好、九井先生の絵の素晴らしさと脳内に広がっているであろう宇宙に感動します。ダンジョンの生態系まで作り込み、冒険者の食料にもなるモンスターの構造も図解。読み手の知識欲を満たすことが、食の場面やレシピのリアリティにつながります。設定が物語にきっちり落とし込まれ、生と切り離せない食の喜びと罪を描き出す。さらには、この世界観がギャグとシームレスに接続する凄技にも震えます。本作と短編集を読み返しつつ、新作が読めるのを何年でも待ち続けたいと思います! 『タワーダンジョン』弐瓶勉著 講談社シリウスコミックス/既刊2巻・各759円 王が殺され、王女がさらわれ、竜の塔へ救出に向かった近衛戦団も軍隊も痛手を負う。近隣の村でのどかに暮らしていた青年ユーヴァは、召集兵としてダンジョンに挑むことになる。 『タワーダンジョン』は弐瓶勉先生の最新作です。王女が何者かによって竜の塔へと連れ去られ、王国存亡の危機が訪れる。王女を奪還すべく召集された主人公は力持ちで気のいいやつ。迷宮探索本格ファンタジーと銘打たれていますが、王女はなぜ、誰にさらわれたのか? どんな危機が訪れるのか? 竜の塔とは? など、まだまだ明かされていない謎ばかり。物語の軸は古典的でありながら、それを斬新な形で読むことができそうでワクワクします。絵作りも、一見淡白なほど線と要素が絞られていてめちゃくちゃかっこいい! 弐瓶先生にしかできない熟練の職人技と、その進化を目撃できる話題作、ここからの展開がとにかく楽しみです。 『獣王と薬草』艮田竜和 原作 坂野旭 作画 ももちち キャラクター原案 小学館裏少年サンデーコミックス/既刊2巻・各792円 ダンジョンで出会った獣王ガロンの治療によって命を救われた冒険者ティナ。ひそかに交わされた契約によって、モンスターたちの治療を手伝うことに。 『獣王と薬草』は、艮田竜和先生が原作を、坂野旭先生が作画を手がける医療ファンタジーです。冒険者のティナという女性と魔族の獣王ガロンという主人公二人の、立っているだけで絵になるようなキャラクターデザインと、異色の二人の関係性も魅力的。キャラクター原案はももちち先生。敵キャラにも華がありますよね。150年続いた魔族との戦争が終わったところから物語が始まり、その後の世界を描きながら、善悪の二極ではない多様性へのアプローチをエンタメに仕上げた注目作です。 マンガ編集者林士平 マンガ編集者。「少年ジャンプ+」の人気作品のほか、新連載『ケントゥリア』『おぼろとまち』『さらしもの』などを担当。遠藤達哉先生のロンドン取材記『SPY×FAMILY』番外編も配信中! マンガに関する記事はこちら! 【林士平の推しマンガ道】名手の名作は短〜中編マンガにあり! 【林士平の推しマンガ道】旅情もリアルな情報もマンガで摂取 【林士平の推しマンガ道】作家の想像力が読み手を異世界へ連れていく、珠玉のSFマンガ 水原希子が主宰する【OK】が、手塚治虫のマンガ『火の鳥』とのコラボアイテムを発売! 「ONE PIECE ONLY」展、PLAY! MUSEUMでスタート。世界中で読まれるコミックスの秘密を解明! #ONEPIECE 【林士平の推しマンガ道】クライムサスペンスから、人間の深くて暗い業を読む