「才能」の正体とは? 芸能界を舞台にその光と影を描く、マンガ『Talent―タレント―』

芸能界を舞台にした最新作『Talent―タレント―』について、漫画家のよしながふみさんにインタビー。創作の出発点や、テーマに込めた思いについて話を聞いた。

芸能界を舞台にした最新作『Talent―タレント―』について、漫画家のよしながふみさんにインタビー。創作の出発点や、テーマに込めた思いについて話を聞いた。

『Talent―タレント―』 よしながふみ 著

物語は主人公4人が共演中のドラマのワンシーンから始まる

よしながふみの最新作『Talent—タレント—』は、芸能界を舞台に「才能とは何か」をあぶり出す物語だ。「芸能界はスポーツのように勝敗がはっきりしている世界ではないと思うんです。容姿や演技力や人柄だけでもなく、事務所の力や時代の空気……いろいろな要素が絡み合って、立ち位置が決まる。何をもってスターとされるのかが、曖昧なところが面白い」と作品の着想を語る。

『Talent―タレント―』 よしながふみ 著

柘植一慧(右)と麻生涼平(左)は同じ事務所の先輩後輩の関係

主人公は男女の俳優4人。「男性2人は初めから決まっていたのですが、4人ぐらいいないと、自分が読みたい『才能』の全部が入らない気がして」

「才能」という言葉には、評価や見えない線引きがつきまとう。「そもそも漫画家という仕事が、日々才能と向き合わされる仕事ですし。読者としても作家さんを一作品で評価するのは難しい。何作品も重なってようやく作家性が見えてくる。そう考えると、『続けられること』そのものも才能のようにも思えます」。

第1巻の舞台を2000年代初頭に設定したのも、長い時間を描くためだ。「時間を置かないと見えてこないものがあるはず」。加えて「4人が年を重ねていく様子も見たかった。『大奥』で200年を超える江戸時代が描けたので、四半世紀だったらできそうかなと」と冗談めかして笑う。

『Talent―タレント―』 よしながふみ 著

モデル出身のミコトと二世俳優の演技派、高屋敷華蓮も異なる魅力を持ちながら切磋琢磨していく

この時代設定には、ほかの意味もある。当時の芸能界、特に女性を取り巻く環境だ。「女性は40代ぐらいで、結構な数の方たちがふっと“いなくなる”時代があったと思います。結婚するか、表舞台から退くか。ほかの選択肢が見えにくかった」。

それを象徴するように、女性に求められる役柄は次第に母親役へと収斂していき、一方で男性は、刑事ものや権力闘争といった“年齢を重ねるほど深みが増す物語”を担っていった。また、本作は加齢と切り離すことの難しい「美醜」についても切り込む。「容姿の美しさが加齢によって失われるとしたら、何が残っていくのか」

『Talent―タレント―』 よしながふみ 著

これも物語のカギとなる。「年齢や性別によって立ち位置が変わってしまう。それが前提として存在していた時代もあった。今もまた、別のかたちで同じ問いは残っている。その連なりを描きたかった」

ある場所で選ばれなかった人が、別の場所で輝くこともある。早くに脚光を浴びた才能が、時代の変化のなかで揺らぐこともある。「一度決まった評価が、その人を最後まで規定するわけじゃない。才能はいつ花開くかわからない」。本作には人生の長さを見据えた静かな希望が刻まれている。

よしながふみプロフィール画像
漫画家よしながふみ

東京都生まれ。代表作に『西洋骨董洋菓子店』(コミックスと文庫版は新書館、電子版が集英社)、『大奥』(白泉社)、『きのう何食べた?』(講談社)、『このマンガがすごい! 025』(宝島社)オンナ編第1位を獲得した『環と周』(集英社)など。

『Talent―タレント―』1巻(集英社)

『Talent―タレント―』1巻(集英社)

2000年6月。若い4人の俳優たちは、大女優との共演に緊張しながらも、各々全力で挑んでいた。大人たちの思惑が飛び交うなか、まだ「何者」でもない役者たちが生き抜いていく様を描く、芸能界群像劇。『ココハナ』連載中。

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