【林士平の推しマンガ道】真造圭伍先生の名作から厳選。まずはこの3作を読んでほしい!

ささやかな日常の喜びや恋心、SF、そして社会に存在する闇も描き出す。林さんが十数年追いかけている、推し作家・真造圭伍先生の魅力に迫る!

林士平の推しマンガ道

今回は作家推し!  『ひらやすみ』を絶賛連載中の真造圭伍先生の魅力について語りたいと思います! 『森山中教習所』での連載デビューから、『ぼくらのフンカ祭』『みどりの星』『トーキョーエイリアンブラザーズ』など連載が6作品と、3冊の短編集も出ています。短編の数の多さには驚きますが、扱うテーマの幅広さと、絵づくりの変化も味わえるのがうれしいですね。

『センチメンタル無反応』真造圭伍著

『センチメンタル無反応』真造圭伍著
小学館ビッグスピリッツ コミックススペシャル/全1巻・890円

日常とSFの融合、コミュニティへの憧れなど、幅広いテーマに挑んだ最新短編集。7編+エッセイマンガ1編を収録。短編集『台風の日』『休日ジャンクション』もおすすめ。

最新短編集『センチメンタル無反応』は、日常が破壊される様をカラリと描く「居酒屋内戦争」、学生時代の空気が蘇る「ディパーチャー」、このテーマをこのテイストで表現できるのか!と驚く「清水家のすべて。」など粒揃いです。なかでも、ご自身の入院体験をつづった「悪性リンパ腫で入院した時のこと」の、「不幸をくれてありがとう」という一言が読み終えても頭から離れません。

『ひらやすみ』真造圭伍著

『ひらやすみ』真造圭伍著
小学館ビッグコミックス/ 既刊6巻・各715円

知人のおばあちゃんが遺してくれた平屋で暮らすヒロト君。従姉妹のなつみちゃんやその友人、学生時代からの親友、不動産屋さんもやってくる、のんびりにぎやかな日常がまぶしい。

その入院中に生まれたという『ひらやすみ』は、東京・阿佐ヶ谷の平屋で暮らすヒロト君と、従姉妹の美大生なつみちゃんを中心にした群像劇です。ヒロト君はその日暮らしのフリーター。とはいえ、持ち家があり、親友がいて、従姉妹の友達とも仲がいい。地域のコミュニティにも溶け込んでいます。阿佐ヶ谷という街の描き方にリアリティと愛情が感じられるし、美大の場面や、マンガ家を目指すなつみちゃんの奮闘も解像度も高く描かれています。さらに、登場人物一人一人の感情の拾い方、表現のつけ方、人の描き方が素晴らしい。真摯かつ優しい作家の目線が端々に感じられて、読み進めるうちにキャラクターたちのことを大好きになってしまうんですよね。

『ノラと雑草』真造圭伍著

『ノラと雑草』真造圭伍著
講談社モーニングコミックス/ 全4巻・671円〜

JKビジネスの現場で出会った少女と刑事。心に大きな穴を抱えた二人は希望を見つけることができるのか。現代日本のリアルな姿と、寄る辺ない心身を抱えた人間を描いた衝撃作。

『ひらやすみ』のさまざまな表現を可能にするほど、作家の力量をぐっと高めたのが、前作『ノラと雑草』だと思うんです。貧困、虐待、直視するのがきつい社会の姿を描いて、時代とがっちりリンクさせた長編。世相を切り取るという意味でこの2作は対になっていると言えるかもしれません。ネグレクトされ、性的に搾取されるヒロインと、娘の幻想を追って彼女を匿う刑事。どちらに感情移入してもとにかくつらい。時代がこの作品を真に理解するにはもう少し時間がかかるかもしれませんが、現代日本のリアルに迫るすごい作品です。日常、SF、社会問題、ファンタジーにもリアルにも挑む真造先生のマンガ、これからもずっと追いかけていきます!

林士平プロフィール画像
マンガ編集者林士平

マンガ編集者。「少年ジャンプ+」連載中の担当作に『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』『ダンダダン』『幼稚園WARS』『BEAT&MOTION』『ディアスポレイザー』。『ルックバック』が劇場アニメになります!

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