先日、橋本愛が主演を努めた舞台『班女』を観る機会に恵まれた。三島由紀夫没後50周年を記念し、三島の代表的な作品を、全て異なる演出家が手がけるといった趣向の企画のひとつだ。
作品の中で、橋本が演じるのは、花子という女性。吉雄という運命の相手との再会を待ち焦がれながら、現実と空想の狭間に佇む “狂女” だ。真っ白のドレスに身を包み、吉雄の持ち物であった扇をうっとりと見つめる花子の、なんと儚く、美しいことか。純潔であるからこそたくましいその姿は、どこか橋本自身の佇まいともシンクロする。
「花子という女性から受ける印象は、尊い人。すごく高いところにいて、理解はできても、一心同体にはなれないというか。ひとつだけ、自分と重なるところがあるとしたら、新聞を破り捨てるシーンでしょうか。私の中に秘めている破壊衝動みたいなものが、唯一花子とシンクロできたところでした」。
これまで映画を中心に出演してきた彼女にとって、本作は2回目の舞台作品だったという。
「舞台が楽しい。映画ももちろん好きだけど、より高次元の緊張感だったり、ライブ感、臨場感を体験できる貴重な場所。本物の役者さんが舞台にこだわる理由が分かったような気がします」。
「橋本愛の武装MODE」も7回目になるが、今回は歴代最もシアトリカルなルックを選んだ。青山のセレクトショップ、ル・シャルム・ドゥ・フィーフィー・エ・ファーファーも手がける幾田桃子と千々松由貴によるブランド、モモコ チヂマツ。巨大なボウモチーフをあしらったミニドレスは、どこか60年代のフューチャリズムを彷彿とさせる。
「ピンク、リボン、ミニ丈と、ともすればコンサバになりかねないフェミニンな要素を使っているのに、その印象は極めて前衛的。コンサバも、デフォルメしすぎると振り切ったモードになるんだという逆説的なアプローチが面白い。デザイナーの幾田さんと千々松さんは、ファッションデザイナーであると同時にアーティストや社会運動家としての顔も持っていると聞きました。実用性ではなく、ファンタジーを追求したこのドレスは、ある種新しいフェミニズムを象徴しているように感じました」。
「橋本愛が最近買ったもの」KIDILL×rurumu カーディガン
「普段はこれほどポップに振り切った色使いやデザインのものは買わないけれど、これは特別!着るだけで別人のようなマインドになれる、魔法具です。前衛的なのに着るとおばあちゃんのはんてんみたいな素朴なシルエットになるところも好き」。
橋本愛 プロフィール
熊本県出身。映画『告白』(2010年)、熊本県出身。映画『告白』(2010年)、『桐島部活やめるってよ』(2012年)、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』(2013年)などで注目を浴びる。 直近では大河ドラマ『西郷どん』(2018年)、『いだてん』(2019年)と2年連続大河ドラマ出演を果たしたのち、2021年度「青天を衝け」では大河ドラマ初のヒロイン役を務める。 昨年5年ぶりに民放連続ドラマ『同期のサクラ』に出演し話題を集めたが、今年も日本テレビ10月期「35歳の少女」の出演を控えている。
model: Ai Hashimoto photography: Yuki Kumagai styling: Tamao Iida Hair and makeup: Hiroko Ishikawa edit: Shunsuke Okabe