日曜日の服とヘザー・ケメスキー

 ゆっくり寝ようと決めた日曜の朝。まどろみを破るのは、窓の外から大音量で聞こえてくる「“ヒゲ”のテーマ」。ベースラインが異様にグルーヴィなこのヒゲダンスの曲にかぶせて「ご家庭内に不要な電化製品、オートバイ、鉄くずはございませんか……」というアナウンス。マイ・サンデー・モーニングはたいてい近所を通る廃品回収の軽トラックに起こされます。おはようございます。このコラムを書いている今、まだbodcoのパジャマを着ています。

 SPUR1月号が発売されて一週間が過ぎましたが、特に今月号は「表紙が可愛い!」と評判です。カバーガールはカリフォルニア生まれのモデル、ヘザー・ケメスキー。彼女のことは一年前に海外から取り寄せて買ったファッション誌で見つけ、すぐにインスタグラムをフォローし密かに注目していたのですが、5月に行われたルイ・ヴィトンのクルーズ・コレクションで、ショーとルックブックのモデルに抜擢されて一気にブレイク。今号の表紙とルイ・ヴィトン特集を撮影するにあたり、担当の編集には絶対に彼女をブッキングするよう頼んでいたのでした。

 ヘザーのトレードマークはショートヘアとノーズピアス。髪型はモデルをはじめた頃はロングだったものの、フォトグラファーのキャス・バードの勧めでボーイッシュなショートにしてから今のスタイルが定着。鼻のピアスは毎日着けてるものだけど「たまに撮影用にはずすときには、服を着てないような不思議な気持ちになる」とのこと。自分の好きなスタイルの軸がしっかり決まっているからこそ、カメラの前に立ったときも自然で嘘がない。風に吹かれるヘザーの笑顔の写真は、1月号のヘッドライン「MY SUNDAY BEST いちばん好きな服を着る」に狙いすましたかのようにぴったりとはまりました。

 先日アップルストア表参道で対談をしたピアニストのユジャ・ワンも、ミニ丈のドレスやクリスチャン・ルブタンのパンプスで演奏するのは「好きな服を着たほうが心地よいから」と語っていました。その話を壇上で聞きながら、ユジャ・ワンの言葉とヘザーの笑顔、1月号に込めたメッセージが綺麗につながったように感じました。ここ一番の大舞台や自分にとって大切な局面で「いちばん好きな服を着る」というのは、当たり前のことだけど、かなり効果のある魔法です。日曜日も残り少なくなってきましたが、みなさんどうぞ一番好きな服でお洒落をして出かけてください。俺もそろそろパジャマから着替えます。

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