2015.12.31

シルヴィ・ギエムと今年最後に買った服

 2015年、いちばん最後に買った服は、これから先、一度も袖を通すことのないTシャツでした。

 昨日12月30日に神奈川県民ホールでの「シルヴィ・ギエム ファイナル」最終公演を観てきました。シルヴィ・ギエムが輝かしいキャリアの最後を飾るために選んだ地は日本。引退公演に向けた彼女の思いは、ジャーナリスト佐藤友紀さんによる素晴らしいインタビュー記事をSPUR12月号に掲載したとおりです。

 編集部のエディターは何人も12月のうちに東京、地方での公演に行っていました。先日、ある編集者がシルヴィの作品「Two」について「そのダンスを観ている間、突如として自分の中の特殊能力が覚醒し、人体の発するオーラを見ることができるようになった。シルヴィ・ギエムの手からラベンダーの光が吹き出るのを見た……」などと滔々と語りはじめ、正直「あ、これはヤバいやつや!」と思ったんですよね。シルヴィ・ギエムのダンスが凄いのは当然として、手の光云々は照明の具合の問題だろ、と。どんだけ感受性強いんだ、と。
 で、自分も昨日シルヴィ・ギエムの踊る「Two」を見たんですけども、なぜかオーラが見えるんですよ。フルスピードでしなる彼女の四肢は確かに輝く光をまとっている。ライティング技術だけでは片付けられない、アーティストのハンドパワーに違いありません。

 続く最終演目「Boléro」では、クライマックスと幕切れが近づくに連れ、その最後の瞬間を見たいような、永遠に終わって欲しくないような…… 固唾をのんで見守る観客全員がジレンマに陥っていたに違いありません。これまでにもボレロは見たことがありましたが、今回は本当に最後の一瞬までが愛おしい、不思議な感覚の舞台でした。

 カーテンコールでは、観客がみなシルヴィ・ギエムにペンライトを振り、彼女のキャリアの「第一幕の終わり」を讃えたのでした。

 終演後、サプライズとして特別販売Tシャツへのスペシャル・サイン会が開催。そこでシルヴィ・ギエム自身からサインをもらったのが冒頭のTシャツです。実際に着ない服は買わない主義ですが、これだけは特別。一年の最後に宝物のような服と出会えるとは思ってもいませんでした。

 シルヴィ・ギエムは、本日12月31日から元日へのカウントダウンに向けた「東急ジルベスターコンサート」で本当のラストステージとなる「Boléro」を踊ります。その模様はテレビ東京系で生中継予定。自分も昨日の興奮を追体験するつもりです。

 今日で2015年も終わり。来る年も本年同様、読者の皆さんの素晴らしいファッションとの出会いのきっかけにSPURがあれば、と思います。よいお年をお迎えください。

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