夢の素材が開発されたと聞いた。わざわざ取り寄せた最新ファブリックのウェアは、確かに見たことのないもので、暖かく軽く、しかも肌触りがいい。服に未来はあると思った。でも防寒用にTシャツの上から羽織って自転車に乗ったら、風通しが良すぎてめっぽう寒かった。25年前の冬の話……。
パタゴニアのシンチラジャケット。この頃はまだUSA製です。「シンチラ」の商標で呼ばれる素材は、パタゴニアがモルデン・ミルズ社と共同開発したモコモコした化繊のパイル地。ひらたく言うとフリースですね。柔らかく保温力抜群、なおかつ通気性、速乾性も高いシンチラフリースは、当時のアウトドアウェアにおける最先端テクノロジー。
新しもの好きの自分は雑誌で見かけたシンチラが欲しくてたまらず、まだ東京に一店舗しかなかったパタゴニアの目白の直営店を訪れました。いちばんパタゴニアらしいスナップTプルオーバーじゃなく、あえてフルジップのジャケットというのが、要所でハズシてしまいがちな自分らしいチョイス。しかしショップにヘザーグレイの在庫がなく、結局は自力でメイルオーダーして取り寄せることに。そのためだけに学生の分際でクレジットカードを作って注文し、何週間か待ってやっと届いたシンチラ。毎日のように着ていたものです。
手持ちでこれより古い服はあるだろうかと自宅を漁ってみたものの、学生時代の服はほぼ残っていませんでした。実はこのジャケット、いまだ現役で、寒いときすぐ羽織れるよう、常に部屋の片隅に置いています。はじめて手にしたときと同じく、暖かく軽く、肌触りがいい。
あれから四半世紀。通信販売で服を買うことに慣れていなかった当時、心配性の自分はクレジットカードの番号をどこかに書くだけで「スキミングされる! 身ぐるみ剥がされる!」と怯えたものです。でもいつのまにかネット通販は当たり前の日常になりました。
会社員になって初の冬のボーナスで買ったアップルのマッキントッシュ・パフォーマはウェブブラウザ未搭載。話題になりはじめたインターネットなるものを体験すべく、わざわざネットスケープをインストールし接続に四苦八苦する間、電話線から鳴っていた「ピーヒョロロ」というノイズも、いまとなっては間抜けに響く「ウェブ黎明期あるある」でしかありません。
本日、SPUR.JPはリニューアル・オープンしました。自分がSPUR編集部に来たのは2002年、まだSPURのサイトが「e-SPUR」と呼ばれていた頃。コンテンツも手作りで手探りで荒削りでしたが、本誌とは違うパーソナルな思いを形にできるのが新鮮でもありました。ウェブを取り巻く環境や、人々が使うデバイスはあっという間に進化を遂げますし、そんな「折々の最先端」に合わせてSPUR.JPもアップデートしていきます。それでもウェブならではの面白さ、スピーディでパーソナルな「ここだけの話」感は大切にしていければと思います。
服は迷ったら買う派。そして色違いで揃える派。車はFR派。ジョジョは四部派。夜は糖質オフでハイボール派。圧倒的イヌ派。