この冬よく着ているのが、ヴィンテージで買ったエルメスのカシミアコート。おそらく80年代後半のもので、シルエットはズドンと幅広。そして堂々のヒザ下ロング丈。しかも、あえて普段より2サイズアップ。
この巨大コートをどうするか。どうせならガウンみたいにブカっとしたオーバーサイズで着てみたい。とはいえ、そのままでは小学生が父親の背広を着るみたいになるため、カスタマイズに着手。いかにも80年代なマッチョ感のある肩は、着たときに自然に落ちるよう、ショルダーパッドは芯地以外すべて撤去。他にもスリムになりすぎない程度に随所を微妙に摘む、袖丈を詰める等々、ギリギリ車検が通るレヴェルの改造を施しました。コートのリフォームにあたってイメージしたのは、あの80年代のヒーローです。
80’sを代表する男っぽくコートを着こなすファッションアイコンといえば、「あぶない刑事」のタカ&ユージをおいて他にはいないでしょう。思い返せば、当時の「あぶデカ」人気は尋常ではなかった。地元岡山での中学時代、ファンだった友人はふらふら横浜へ出かけ、観光スポットではない倉庫街まで見て回っていた。別の友人は、タカの男っぽい顔だちに憧れ、成長期に顎を鍛えるべく毎日朝から晩までガムを噛み続け、結果エラが張ってしまった。
「あぶない刑事」はたまに地方ロケを敢行していましたが、80年代後半に、地方撮影のついでか、岡山駅地下街にタカ&ユージが来場するというイベントが組まれました。残念ながら自分は部活のため参加できませんでしたが、実際にイベントに向かった兄によると、現場には凄い数のファンが大集結。しかも全員いろんな意味で元気たっぷり。興奮が高まりすぎて危険だったのか、タカ&ユージは登場の2秒後、周囲のスタッフに押し戻されそのまま舞台を去り、二度と姿を見せなかったとのこと。その後、熱狂的ファンのみが残された現場は「さながら暴動のようであった」と兄から聞かされました。タカ&ユージは、ビートルズ来日レベルのフィーバーを岡山にもたらした大スターだったわけです。
その青春時代の憧れの存在に、実際にお会いすることになりました。発売中のSPUR3月号「SPUR刑事ドラマ検定」特集でインタビューがあり、挨拶におうかがいしたのです。カメラに向けてキザなポーズを決めるタカ&ユージは、期待を遥かに超えていた。素晴らしかった。昔と変わらずカッコいいというのではなく、きちんと年をとっていてなおかつそれがカッコいい。そんな素敵な大人が実際にいるということは、夢があるし励みにもなります。
新作映画『さらば あぶない刑事』でもふたりは大活躍していますが、スクリーンを観ながら「昔の方がよかった」とか「ちょっと残念」と感じる部分がまったくない。ファンにとっても、おそらくおふたりにとっても幸福な作品だと思います。ちなみに新作でタカが着る黒いトレンチ、ユージの黒いチェスターフィールドは、どちらも細身のシルエットにモダナイズされていました。
すっかり時間が押していた3月号インタビューの終了間際、ライター氏が「編集長から何か質問ありますか?」と振ってくれたんですが、「おふたりに会えて胸がいっぱいなので、自分からは結構です」と丁重にお断りしました。本当は、岡山のファンイベントはどんな状態だったのか直接聞いてみたかったけど、そういう思い出話はもういい。2016年の今が一番かっこいい、ダンディ&セクシーなタカとユージの雄姿をぜひSPUR3月号で御覧ください。
服は迷ったら買う派。そして色違いで揃える派。車はFR派。ジョジョは四部派。夜は糖質オフでハイボール派。圧倒的イヌ派。