スニーカーの供養塔を建てたい。激しいマニアではないものの、90年代以降、今日まで買ったスニーカーは一般レベルとは確実にケタが違うはずで、すべてを履きつぶすには足も時間もたりない。何足も無駄にしてしまった。供養塔が無理ならお焚き上げをしたいが、有毒ガスが発生しそうでそれも難しい。
とはいえ、なかには天寿をまっとうするスニーカーだってあるものです。一番愛用したのはニューバランスの「M1700」で、1999年に発売されたUSA製のグレー。それまでもニューバランスの1000番台は好きだったけど、どれも真面目でプチブルっぽいイメージで、服に合わせるのが難しいことがなきにしもあらずでした。なのに99年当時、満を持して発売されたM1700ときたら、クラストップの優等生がいきなり瓶底メガネをかけて登校してきたって雰囲気で、それまで以上に輪をかけて微妙なルックス。今でこそクラシックに見えますが、当時はダサさ紙一重だったわけで、どう服と合わせればいいのか戸惑いを覚えました。結局は細かいことを気にせず現在まで履き続け、特に2000年代前半はグレーのスラックス&M1700という格好ばかりしていました。何年か前にはニューバランス・ジャパンにお願いして、ソールを全交換したほど。人生で一番履いている靴はきっとこれです。
1月の末、M1700のUSAメイドがデビュー以来初となる復刻発売されました。前のめり姿勢でネット予約しグレーと黒を購入。この日をどれだけ待ったことか。当たりが柔らかいのにしっかり芯がある履き心地も懐かしい。例えば後継のM2002も足を入れた瞬間の驚きが凄いし技術進歩も実感するけど、M1700は履いていて落ち着ける。
17年間履いたM1700を新品と並べてみると、同じグレーでもこんなに色が違うんですね。「味」の一語では片付けられない。有り体に言って汚い。正直、自分でもちょっと引いた。古いM1700は、これからは靴箱でゆっくりしてもらって、年に一回くらい晴れた日に履いて出かけようと思います。
私事で辛気くさい話で恐縮ですが、先日に叔父が亡くなり、葬儀に出席しました。棺の中には、外科医だった叔父が生きている間にもっとも多く袖を通したであろう白衣と、普段よくかぶっていた運動用のキャップが入れられました。「あの人はいつもこれを着ている」。みんなにそう思ってもらえるスタイルがあることは素晴らしい。自分は仕事柄毎日いろんなものを着るし、それだけスタイルもブレまくりですが、ひとまず新しいM1700は、初代同様ボロボロになるまで履いてみます。
服は迷ったら買う派。そして色違いで揃える派。車はFR派。ジョジョは四部派。夜は糖質オフでハイボール派。圧倒的イヌ派。