JFKの滑走路が大雪のため閉鎖と機内で聞いた。よってニューヨークからはるか西方、シカゴに着陸。そこから国内線でワシントンDCへ、さらに列車に乗り継ぎ。かなり無茶な遠回りをして、20時間以上遅れてマンハッタンに到着。現在はニューヨークでコレクション取材をしています。
ニューヨークで仕事以外に楽しみにしていたのは、ある店での買物。外観からは何を売ってるのかさっぱりわからないここ、実はバイ・アポイントメント・オンリーのスニーカーショップ、その名も「World of Niche」です。“ワールド・オブ・ニッチ”つまりは“ニッチの世界“ということで、店名からしてマニアックであることを堂々と表明。
来店にあたってはウェブでの事前アポイントが必要で、受け付けるのは30分に1名のみのマンツーマン接客。スニーカーは少数限定生産の完全オリジナルだけど、ウェブでは過去のアーカイブのみを掲載。現在販売しているコレクションはショップに行くまで見られないという強気の商売。
東京でウェブ予約して日時をコンファームした際も、「予約時間厳守。五分遅れたらキャンセルするで」「入口でベル鳴らしてや。ノックは無用やで」「一人で来てや。友達と一緒はあかんで。」「買えるシューズは一人一回につき、一足だけやで」と、立て続けに注意書きが表示されました。(実際には英語)
そんなわけでブリーカーストリートの店舗へ約束の時間ちょっと前に出向き、忠告どおりベルを鳴らす。奥からスタッフの青年が現れて「予約の人? ちょっとお待ちを」と、またすぐにドアを締められてしまう。雪の残る歩道で待つこと数分。やっと「どうぞ」とドアを開けてくれたのは確かにさっきの青年だけど、なぜかスーツに着替えてる。ひょっとして、この男の衣装チェンジのために待たされたのか?
巨大な球体のオブジェが天井からぶらさがっているだけの簡素な店内は、さほど広くもない。「じゃ、履いてきた靴を脱いでください」。マットの上で雪まみれのブーツを脱ぐ。続いて足のサイズを尋ねられたので教えると、いくつか置いてあるサンダルの中から一足を選んで手渡される。これが見事にブカブカ。なぜさっきサイズを訊いたのか? 謎が深まる。
「では商品をお見せします」。すると店内の巨大オブジェだと思っていた球体がパカっと割れて、内側からシューズが現れた。この儀式めいたサプライズとともに明らかになった最新コレクションは、全部で3型。それぞれメンズ、レディスあり。各色50足限定。青年のミステリアスな接客も、実際の商品が現れた後は実にスムーズ。素材、デザインの特徴など各シューズの要点を丁寧に説明してくれる。
来店時間の制約から買物をするまでの流れが面倒なルーティンだらけにも関わらず、その面倒臭さがかえって楽しい。そのような感想をスタッフの青年に伝えると、「確かに、うちはExperientialなショップですからね」。
今回のニューヨークコレクションの目玉だったカルバン・クラインでも、「CALVIN KLEIN By Appointment」なるクチュール的ラインが発表されたばかり。「バイ・アポイントメント」や「エクスペリエンシャル」など、ウェブで気軽にポチるのとは対極の、ちょっと遠回りで面倒臭いスタイルは、これからのショッピングのキーワードになるのかも。
結局、この日買ったのは「World of Niche」の定番シューズともいえる「Bullet」をアレンジした新作「Bullet Hiker」。シューホールはトレッキングシューズ風のD環。カラーはこのシリーズでは初となるブラックで、素材はマットレザー。木製シューキーパーが付属して300ドル。けっこういい値段するけど、それもまた経験。
服は迷ったら買う派。そして色違いで揃える派。車はFR派。ジョジョは四部派。夜は糖質オフでハイボール派。圧倒的イヌ派。