王子や大統領といった顧客を持つフランスのシャツメーカー、シャルヴェ。ここでは着る人が服を作る。1838年以来――つまりロンドンのサヴィ ル・ロウが世界のメンズファッションの中心地となる何十年も前から――、男たちはここシャルヴェで、シャツやスーツをあつらえ、同時に彼ら独自 のアイデンティティを鮮やかに具現してきた。シャルル・ド・ゴール元大統領に、ウィンストン・チャーチル元首相、イヴ・サンローランまで、誰もがシャルヴェをまとった。たとえば、ホテル暮らしを繰り返していたヘンリー・キッシンジャー元国務長官は、ランドリーサービスの洗濯に持ちこたえるような厚手の生地にこだわった。
PHOTOGRAPH BY SARAH AUBEL
ジョン・F・ケネディは〝ジョン・ティアニー〞の名前で、冷戦中のワシントンではお決まりだったダブルカフス・シャツをオーダーしていたが、あくまでも彼らしい少年風のテイストで仕上げたらしい。絢爛な貴族社会が背景として描かれた、英国の作家イーヴリン・ウォーの『ブライヅヘッドふたたび』で、シャルヴェが主人公セバスチャン・フライトの気品を象徴しているのも不思議ではないだろう。(続きを読む)
SOURCE:「Not Just Any White Shirt」By T JAPAN New York Times Style Magazine
JAMES MCAULEY TRANSLATED BY JUNKO HIGASHINO
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