2018.05.12

「この服がすごい!」座談会

トレンドはもちろんのこと、国内外のファッション事情に精通しているスタイリスト。そんな彼女たちの物欲をかきたてる服はどこがすごいのか? これを読めば、あなたのショッピングも最新のコスパ主義に変わるはず

安いだけがコスパにあらず“モード”のさじ加減が大事

――百戦錬磨の目の肥えたスタイリストが自腹で買う洋服はやっぱり“すごい服”なんじゃないかと思うんです。どんな基準で買う、買わないをジャッジしているんでしょうか?

小川(O) いやー、シビアに見てますよ。まず、トレンドだけで判断するのは言語道断。自分で洋服を作っていたこともあるので、とにかく服の作りは重視しています。ジャケットの袖つけがきれいだったり、どんな生地を使っているかなど、服の仕様をまずチェック。サイはその期待を裏切らない!
矢内(Y) 私は身長が小さいので、メゾンの洋服だとぴったりくるものが少ないのが悩み。スタイリングにヴィンテージアイテムを選ぶことが多いんです。でも、職業柄それだけにならないように、今年のエッセンスも加えたい。そんなときにMM6 メゾン マルジェラは価格もデザインもよく練られていてコスパがいいと思います。
小蔵(M) 私はハワイ生活が長くて、最近までチビT+デニムのハワイアンスタイルが多かったんです。さすがに東京の生活にもなじんできたので、ワードローブに欠かせないデニムはキープし、そこに合う服を買ってます。幅広いブランドを俯瞰できるので伊勢丹新宿店で探すのがルーティン。
由田(S) 私は10年ほど前にNY留学していたのですが、実はNYって可愛くて安い服の幅が広い。いわゆるメゾン系とファストファッションの間の“スキマ”な価格帯のバリエーションが豊富でコスパのよいブランドが揃っている気がします。

――みなさんが選ぶ“すごい服”はクォリティやトレンド感、手持ちのワードローブと合うかが高ポイントなんですね。そこからおのずとコスパのよさが導かれてくる?

 そうですね。NYと言えば、CKカルバン・クラインのパーカやTシャツってカジュアルに着られて、かつメインコレクションのムードを残してるって思いませんか? リース中に見て、これは使えるな〜と買っちゃいました。これぞ最強のコスパアイテムかも。
 いいね。メゾンほど高くなくて、手の届く価格帯であり日常とモードをつなぐ服は、結局のところ重宝しますよね。私は普段ヴィンテージのリーバイスをはくことが多いのですが、イザベルマランはデニムとも相性抜群なので、買って損なし。
 確かにヴィンテージと合わせても、すんなりフィットするフレンチシックさが魅力だよね。最近、セレクトショップでも扱っているサムイは元マリメッコのデザイナーだったサム=ユッシ・コスキが手がけていて、等身大な自分でいられる服って感じで、おすすめしたいな。
 “すっぴんでも着られる服”、いいですね。私がヴィンテージとの相性がいいと思うのはサイモン ミラーかな。やっぱり普段のワードローブと合わないと途端に着なくなりますね。

コスパのよさは値段と活用頻度で割り出す!

 そうそう。持論があるのですが、「洋服の価格÷着た回数」で自分にとってのコスパを導き出せるんです。たとえば10万円のコートを買ったとして、それを毎日着たら一日いくらになるかなって。デイリーなスタイリングに使えることはもちろん、メンテナンスやクリーニングをして、また次のシーズンに使ったりできる服こそ本当にコスパがいいと思うんだよね。自分にとってサイの服はそんな存在です。価格が高いと感じる服もあるけど、いいものを安くは売らないだけで、むしろ適正価格だと気づかせてくれました。
 自分にとってのコスパのよさってありますよね。日本に帰ってきて驚いたのがユニクロです。写真家の友達がシンプルなパーカを着てて、おしゃれだったので、どこのブランドか聞いてみたらユニクロユーだった。お店に見にいったら、欲しいものが結構あって。最近はクロスボディバッグを色違いで3色購入。生地がしっかりしてて、日常使いにいいですね。
 サイズ感や色を日本人に合わせて作っているところも使いやすいんでしょうね。

日本ブランドが作り出すコスパのよさ

――サイズ感や手頃な価格帯ということで、日本のブランドを選ぶ人も増えていますよね。注目するのはどこ?

 テンダーパーソンボディソング。どちらもサブカルチャーが背景にあって、思い切りのよいデザインができる新進気鋭ブランド。デザイナー本人たちもユニーク。やっぱり顔の見えている人の服は欲しくなっちゃう。
 昨秋デビューした日本のブランドアンスクリアはこなれた価格設定がうわさになってた。プレーンなアイテムを買うならここがいいかも。オーラリーの勢いも止まらないですよね!
 周囲から、ストリートアイテム好きなイメージを持たれているのですが、実は可愛いものも好き。レキサミのデザイナーを務める幾左田千佳さんのブランド、チカ キサダは最近のヒットです。
 私はやっぱりデニムに合わせたいなと思って、ジュン・ミカミのニットトップスを買いました。ちょっとレトロで長く使えるデザインが多い。
 娘を産んでから「(娘が大きくなったら洋服を譲れるので)洋服買い放題ですね」って言われることも増えて、実は罪悪感が薄れかけてたんだけど、まだまだコスパについて追求する余地がありそうね!

小蔵昌子さん
ハワイで中学〜大学を卒業後、ファッションの仕事に就きたいなら東京、と帰国を決意。一度はIT企業に勤めるも、今では英語力を生かし海外誌でも活躍する。

小川夢乃さん
メガネの奥に潜む審美眼でモードなアイ テムを一刀両断。2人の子どもを抱えながら、時間とお財布のやりくり中。でも美しい靴への投資は惜しまない。

矢内麻友さん
モードからインテリアまでこなす、ハイブリッドスタイリスト。小柄な体で精力的に、東京中をくまなくリサーチ。ヴィンテージにも詳しい。

由田 静さん
SPUR若手スタイリストの中でも群を抜くリサーチ力とスピードを誇る。新作アイテムを常にインプット。甘いものも大好きで新作お菓子チェックを欠かさない。