ライター栗山愛以が今季もショーの会場内でへなちょこスナップ。捕獲したおしゃれさんたちを例に挙げ、動物たちの素朴な疑問を一刀両断する!
「コシェの会場、劇場『カジノ・ド・パリ』の客席でスタートを待つスタイリストのヴァネッサ・ピントさん(1)。色鮮やかなケンゾーのコートとドレスにスポーティな足もと+ディオールのサンダルで頭にはスカーフ。こうしたエスニックな薫り漂うミックスマッチなスタイルに心惹かれたのは、その日の朝にマリーン セールを見たから。昨年LVMHプライズを受賞し、じわじわ話題にはなっていましたが、初のランウェイショーで実力を思い知らされました。以前籍を置いていたデムナ・ヴァザリア手がけるバレンシアガっぽさはあるものの、スポーツと中東のようなムードを融合させていて独特。なんといってもデビュー当初から取り扱っているザ・ブロークン・アームのアナイス・ラファルジュさんも(2)。ちなみにコートは北欧のメンズブランド、アワーレガシーとのこと。3はラストルックのドレス」
「かのスパイス・ガールズが愛用し、90年代を席巻していたバッファロー。ずんぐりむっくりしたスニーカーがブームの中、喜び勇んで通販したところ、パリにも同志が! バレンシアガで遭遇したコム デ ギャルソンVMD担当オルガさん(4)はブラウン、ラコステでコーヒーを手にゆっくりしていたスペイン『METAL』マガジンのレナ・ノヴェロさん(5)は黒をセレクト。ジュンヤ ワタナベもコラボしていたし、きてます。」
「銀縁メガネはギーク感捻出の常套手段かもですが、ステラ マッカートニーの開場を待っていたスタイリストのジュリー・ニヴェールさん(6)はさらにボサボサ頭をプラスしていて目を引きます。秋冬は目出し帽(バラクラバ)にも注目。マリーン セールやカルバン・クラインでそれらしきものが発表されています。普段には無理よね……というあなたは露『VOGUE』のマリア・ポポヴァさんのキュートな姿(7)を参照すべし。極寒のパリで役立っていた様子
「8はエルメスで出会った英『GRAZIA』のレベッカ・ロウソープさん。丈感とノスタルジックな雰囲気が絶妙なチェックのコートはなんと初期のゴーシャ ラブチンスキー。セリーヌのハイウエストのパンツとぼってりしたスニーカーでシックなおじさんスタイルを完成させています。」
「9・10はスナップ常連のスタイリスト、アレクサンドラ・カールさん。コンサバ寄りかと思いきや、着回しているジャケットはバレンシアガ。パワーショルダーがおとなしめな装いにパンチをきかせてます。11はバレンシアガですれ違ったオルガ・スシュコさん。新たに可愛い子発見! と思ったら、ウクライナ版『VOGUE』の編集長でした……。ダッフルはコム デ ギャルソン、ハイウエストのパンツはドリス ヴァン ノッテン。デザイン力のあるブランドを選ぶこともコツなのかも。12はA.P.C.で向かいの席だった英『The Observer』ヘレン・シーモンズさん。トレンチはメゾン マルジェラ。切りっぱなしになっていて、やっぱりひと味違う!」
創意工夫を学べ! 全身マリーンもいいけどね
今季もこれみよがしな新作で着飾った着せ替え人形タイプは極力スルー、自分に合うものをこだわりを持って自然と身につけている方を探した。精鋭たちがなぜ素敵なのかよくよく分析してみると、決め手はちょっとした小物使いやブランドの選択方法、全体のバランス。ただ一枚ぺろっと着ておしまい、ではなく、自らの雰囲気や体型をふまえながら時間と労力をかけて工夫を凝らし完成に行き着いているであろうことが推測できる。やっぱり鏡の前で試行錯誤してこそたどり着ける境地なのだ! ストリートスタイルはおしゃれの教科書だよね! と、そんなことを言っておいて何なのだが、今季の白眉は頭からつま先まで揃えたい! と思わせてくれたマリーン・セールであった。この子が打ち出すものは何でもよく見えてしまう……というくらいの洗脳されっぷり。こんな興奮は本当に久しぶりだから許してほしい。きっと私は来季ひねりなしの全身マリーン セールでパリコレに臨んでいるはず……。