ファッションの世界でキャリアを築いてきた3人のインサイダーに、忘れがたいイットモデルにまつわるエピソードを教えてもらった。
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Anna Sui アナ・スイ(ANNA SUIデザイナー)
PROFILE アメリカ・デトロイト出身。1980年に最初のコレクションを発表し、’91年には初のショーを開催。ロマンティックかつどこかダークな世界観で知られ、日本にも多数のファンが。
いつの時代も私をインスパイアするミューズがいた
「私が子どもの頃、地元デトロイトのデパートにジーン・シュリンプトンがやって来たことがあったんです。彼女に会いたくて、母に頼んで連れて行ってもらいました。あんなに細くて背が高く、透き通った肌の人を見たのは生まれて初めて。ラフなヘアスタイルと小さな顔に、どこまでも長い首。ビバのTシャツを着ていたことを覚えています。まるで火星から来た人のように、異世界の住人のように見えました。ものすごく興奮しましたね。写真にサインをしてもらったのですが、その写真は今でもとっておいてありますよ。
70年代には、キャシー・ダーメンが抜きんでていましたね。くるくるとした巻き毛やふさふさのアイラッシュが印象的でした。ハリウッド風ヴィンテージスタイルが抜群に似合ったジェーン・フォースとドナ・ジョーダンも好きでした。高田賢三や山本寛斎といった最初の日本人デザイナーたちとともにファッションシーンに登場した山口小夜子も、革新的なモデルでした。
ナオミ・キャンベルとリンダ・エヴァンジェリスタ、クリスティ・ターリントンとはずっと親しくしていて、1991年、私にとって初めてのショーを開催するよう背中を押してくれたのは彼女たちでした。さらに3人は、そのショーに出演してくれただけでなく、他のモデルたちに私のショーに出るよう働きかけてくれたのです。特にナオミは、長年にわたり常に私のミューズであり続けました。誰よりたくさん私のショーに出てもらったし、彼女との仕事はいつもインスピレーションに満ちていました。今も変わらず彼女にはそういう天性のパワーがあるし、私にとっては大切な友人でもあります。
いつだって、コレクションの気分を体現するモデルがいるものです。端的に言うと、オープニングガールとして最初に登場して、クロージングルックも着るモデルがそうです。過去には、カレン・エルソンやアギネス・ディーンがその役割を果たしてくれました。最近では、ジジ・ハディッドがそんな存在ですね。彼女は現代の美しさを体現しているだけでなく、タイムレスな魅力の持ち主。美しくインスピレーションに満ちた素晴らしいモデルたちと仕事をすることができて、私はとてもラッキーです」
’60s
Jean Shrimpton(ジーン・シュリンプトン)
(写真左)ツィギーとともに、60年代のスウィンギング・ロンドンを象徴するモデルだったジーン
’70s
Donna Jordan(ドナ・ジョーダン)、Jane Forth(ジェーン・フォース)(写真中)アンディ・ウォーホル〈中央〉のミューズでもあったドナとジェーン
Cathee Dahmen(キャシー・ダーメン)
(写真右)天然の巻き毛と大きな瞳が人気だったキャシー
’80s
山口小夜子(写真左)アジア系モデルの草分けとして80年代に旋風を巻き起こした山口小夜子。1983-’84年秋冬のケンゾーのショーにて
’90s
Christy Turlington(クリスティ・ターリントン)、Naomi Campbell(ナオミ・キャンベル)、Linda Evangelista(リンダ・エヴァンジェリスタ)(写真右)アナ スイの1994年春夏コレクション。3人のスーパーモデルがベビードールドレスを着たあまりにも豪華なショー
’00s
Karen Elson(カレン・エルソン)
(写真左)「カレンはラファエル前派の絵画のよう」とアナ
Agyness Deyn(アギネス・ディーン)
(写真中)「完璧なモッズ・ガール!」とアナも絶賛のアギネス
2018
Gigi Hadid(ジジ・ハディッド)(写真右)「ジジはいつの時代でもスターになれる存在」とアナ。写真はアナ スイ2018-’19年秋冬コレクションより