Story1 エディターSHUNSUKE 憧れのナジャに会いに行く

三度の飯よりモードを愛するエディターSHUNSUKE。好きが煮詰まりすぎてベルリンまで、ナジャ・アウアマンを追いかけた!

ナジャ・アウアマンという、ゴールデン・レシオを訪ねて

 ナジャ・アウアマンという存在を知ったのは10代の頃。ヘルムート・ニュートンが撮影したかの有名なビジュアルを雑誌で目にし、まさに雷に打たれたような衝撃を覚えたものだ。
 スーパーモデルブームが世界を席巻した90年代。身長180㎝、股下108㎝という驚異的なプロポーションで、世界一長い脚を持つモデルという異名で知られた彼女。ナオミ・キャンベルやシンディ・クロフォードをはじめ、パワフルで個性的な女性像がもてはやされた当時。近寄りがたいほど完璧な彼女の容姿は、明らかに異質に映ったことだろう。
 19歳になったとき、地元のベルリンでスカウトされてモデルデビューを果たしたナジャ。同年パリに拠点を移した彼女が、歩く黄金比として世界中にその名を轟かせるまでに、多くの時間は必要ではなかった。「若い頃の夢はファッションデザイナー。写真家を志していた時期もある。自分がカメラの前に立つことになるなんて、当時は考えもしなかった。これまで仕事をしてきたデザイナーの中でも特に感銘を受けたのは、カール・ラガーフェルド、ジャンポール・ゴルチエ、ジョン・ガリアーノ。当時のファッションショーは、今考えても熱狂的なエネルギーに満ちあふれていたわ」
 スーパーモデルとしての栄華を極めたナジャ。しかし90年代の後半に入ると、突如表舞台から姿を消す。
「娘のコジマが生まれて、私の人生は大きく変わった。今の私にとって、家族と過ごす時間は他の何にも代えられない、素晴らしいもの。モデルとしての仕事はめっきり受けなくなった」と語る彼女。現在、ベルリンから2時間ほどの距離に位置するドレスデンに、コジマと3人の息子と一緒に住んでいて、休日は子どもたちと森に出かけるのが好きだという。
「昔と比べて食生活も変わったわ。若い頃はベジタリアンだったけど、今では子どもたちの健康のことも考えて、肉も魚も食べる。得意料理はラタトゥイユ。なかなかおいしいのよ!」
 かつてモデルとして世界中を飛び回った彼女は現在47歳。もちろん美しい顔だち、そしてかの有名な美脚は健在ではあるが、目尻には時の流れを感じさせるように、しっかりと年相応のシワが刻まれている。しかしそのことに関して、彼女は悲観的ではない。
「20代の頃は、完璧でなくてはならないというプレッシャーと闘っていた。でも今では、シワのある自分の顔が好き。そう思えるようになったのは、歳をとって自分の内面に自信が持てるようになったからだと思うわ」
 ヘアメイクが完成し、衣装に着替えてカメラの前に佇むその姿は、紛れもないスーパーモデル、ナジャ・アウアマンであった。
「私がモデルの仕事をする上で、常に心に留めているのは、モデルは作品の中の一部だということ。今となってはそんな考え方は古いのかもしれないけど」と静かに語る彼女。なるほど、このプロ意識、そして真摯な姿勢があったからこそ、彼女はファッション史に残るミューズとして不動の地位を獲得できたのだろう。時代に左右されない、タイムレスな存在。スーパーモデル伝説は、現在進行形で続いている。もし今後、また彼女に会う機会があれば、次こそは娘のコジマたちも交えて撮影をしようと心に決めた。森の中に佇むナジャと、彼女の子どもたち。考えただけでワクワクするではないか。

“20代の頃は完璧でいなければというプレッシャーと闘っていた。今ではシワが刻まれた自分の顔が好き” ―Nadja


コート¥270,000(参考価格)・パンプス¥86,000/TOGA 原宿店

「普段の自分の服装に近い」と彼女が衣装に選んだのは、トーガ2018-’19年秋冬のレザーコート。地毛であるダークブロンドのヘアが、成熟した大人の魅力を引き立てる。

(左)驚くほど気さくなナジャ。撮影終わりに2ショットを撮りたいと頼むと、快く引き受けてくれた。「一生の記念。額に入れて家に飾ります!」(SHUNSUKE)
(右)クールな見た目とは裏腹に、穏やかな語り口が印象的。彼女がカバーを飾った本誌のバックナンバーを見せると、ウキウキと当時の撮影現場の様子を話す姿も神々しい

Nadja Auermann(ナジャ・アウアマン)
1971年生まれ、ドイツ出身。’93年に髪の色をプラチナブロンドに変えて大ブレイク。スーパーモデルの中でも断トツに股下が長く、’97年、’99年には“世界一脚の長い女性”としてギネスに登録された。モニターを見ながらポーズのリクエストを出すと、無駄のない動きで足を組み替え、一瞬にしてポーズを完全再現。現役の勘のよさを披露した

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