アフリカ人女性の手仕事でポジティブファッションを伝えたい
南アフリカ共和国のケープタウンをベースにするサステイナブルなテキスタイルデザイナー、シンディソ・クマロ。今年の「LVMH ヤング ファッション デザイナー プライズ」で唯一選ばれたアフリカ人であり、初の女性でもある。埋めれば1カ月で土に戻る、麻のようなナチュラルファイバーを使用しているほか、コットンの端切れなどをアップサイクリング。自身の持つズールーやデベレのヘリテージから着想した絵柄を、プリントやコラージュで表現している。またNGOと協力し女性の自立をサポート。「手織りや手刺しゅうなど、アフリカの女性が持つスキルに価値を与えたいの。手織りにはセラピーの効果があり、そこから作られる生地はヒーリングの力がある。私の物づくりは“ポジティブ”であることが一番大切」。もうひとつクリエーションで重要なことがある。それが "ストーリーテリング" だ。アフリカの女性や奴隷として連れ出された女性たちのことを伝える。「最新コレクションの着想源はサラ・フォーブス・ボネッタ。奴隷としてナイジェリアから連れ去られたけれど、最後はヴィクトリア女王のゴッド・ドーターになった女性なの。みんなが知らない物語を伝えたい」。その思いはカラフルなステッチの入った着物ジャケットや、ヴィクトリアンなラッフルドレスに織り込まれている。
©Sindiso Khumalo
1 2020年春夏のビジュアル
2 細かい筆致で描かれたアフリカのシンボルをプリントしたドレス R3,250.00
3 白リボンがポイントになったスモックドレス R3,250.00
©Yu Masui
Sindiso Khumalo/シンディソ・クマロ
セントラル・セント・マーチンズでテキスタイルを学ぶ。2015年に伊『VOGUE』誌が主宰する“Who’s On Next Dubai”でグランプリを受賞。LVMHプライズ2020ではショートリストに。
Q ファッションに目覚めたのはいつ?
A ケープタウンで建築を学んでいたのだけど、父が亡くなったのをきっかけに、自分の好きなことをする決意をした。それがファッションだったの。5歳のときからドローイングや彫刻をしていたからテキスタイルに進んだのは自然な流れだった
Q クリエーションで重要なことは?
A “ヒーリング”。手仕事を通して、母が子どもに与えるようなぬくもりを伝えたい
Q ミューズは?
A 語られていない、アフリカの女性たち
Q 好きな映画は?
A 『となりのトトロ』(’88)が大好き。二人の子どもと観ているけれど、子どもが生まれる前からもよく観ていた。『千と千尋の神隠し』(’01)もそうだけど、宮崎駿の映画はどれも好き
ファッションは服だけじゃない五感を刺激する体験型インスタレーション
「2020–’21年秋冬のインスタレーションのテーマはフード。私のブランドは洋服だけでなく、さまざまな“体験”の場でもある」とポーラ。1月のパリ・メンズコレクション中に招待状が届いた。会場で行われていたのは“Flat Viewing”をテーマに五感を刺激するお茶会。心地よい音楽の中、ソウルのDAMBI’s tearoomが、漢方茶とインセンスを調合、味覚と嗅覚に働きかける。受け皿のセラミックもコラボによるオリジナル。“ディアブロ”と呼ばれる、つま先がツノのようにふたつに分かれたアイコンシューズのディテールが、皿に躍っていた。「家具や照明のデザインにも興味がある。ライフスタイルを提案しているわけではなく、どれもインスタレーションの産物だけれど」。アルゼンチンとスペインのミックスでスペイン南部で育ったポーラ。マドリッドでデザイナーだった叔母の仕事を手伝う形で母も服作りに関わるように。「常にアトリエで遊んでいたから、子どもの頃から服作りは生活の一部だった」。ジャズ好きな父の影響で常に音楽に触れ、読書は家族の趣味。「本、アート、インスタレーション、映画など、シーズンによって着想源はさまざま。ただインスタレーションは表現自体ではなく、プロセスを参考にする。同じ過程をファッションにあてはめて試すことも。結果より“ジャーニー”に興味があるから」
4 アンティークの花の型を使ったアプリケスウェット
5 感触が楽しいプロダクトが特徴的
6 VRによる2020年春夏のプレゼン
©Coco Capitan, ©Paula Canovas del Vas
Paula Canovas del Vas/ポーラ・カノヴァス・デル・ヴァス
セントラル・セント・マーチンズ卒。2018年にブランド始動。「ダイエット・プラダ」が紹介したことで一躍時の人に。カニエ・ウエストによるオペラの衣装なども手がける。
Q クリエーションで大切にしていることは?
A デザイン的に自分自身が楽しめるもの。でも私は女で女性のための服を作っているから着心地のよいものでなくてはならない。そしてサステイナブル。オーガニックコットンやアップサイクルのような素材は重要
Q デザイナーとしての直近の目標は?
A いかに環境によいクリエーションをできるか。私たちの中綿入りジャケットはアップサイクルポリエステルを使用。ただ、エシカルがサステイナブルというわけではない。レザーは一切使わない、でもレザーの代用品が環境によいとは言えない。だから今、そこを模索しているところ
Q よく使うアプリは?
A 特に占いは信じないけど「Astrology Zone」。読んでて楽しい
Q ミューズは?
A マリア・カラス、ドロシー・アシュビー