DESIGNER:HELMSTEDT/HARRY WERE

キッチュなプリントがつくり出す、持続可能な白昼夢

毎回詩の朗読から始まる「ヘルムシュテット」のショー。世界観を伝えるためには重要なのだとデザイナーのエミリーは言う。ファッションに携わるには若すぎると感じ、23歳でアートを学ぶためにロイヤル・デニッシュ・アカデミー・オブ・ファイン・アーツに入学。色と、素材としての紙に熱中し、後にオブジェも制作。その技術は生地を覆うプリントや、ショー会場を飾る可愛らしいペーパークラフトのオブジェに見ることができる。満を持して、2018年にブランドを設立。「ファーストシーズンは、私が住んでいるクリスチャニア(ヒッピーによる自治体)の古い劇場を無料で借りることができたの。銀行からの融資2万クローネで生地を買い必死に縫った。モデルはみんな友達。本当に低予算のショーだった」。その2週間後にはマガジン・ドゥ・ノール・ファッション・プライズからの電話でノミネートされたことを知り、のちにグランプリに輝いた。その賞金でブランドの基礎をつくり、コペンハーゲンファッションウィークに参加。4シーズン目の2020-’21年秋冬の会場には巨大なパイやティーセットが。「心に残っている家族の記憶がベース。古い建物やタペストリー。フランスのクラフトにも注目した。だからフランス大使館で披露することにしたの。あと、ベリーパイは祖母の得意メニュー(笑)」

1 祖母のベリーパイをプリントした2020-’21年秋冬のルック
2 総ベリー柄のロングドレス
3 リサイクルポリエステルニット
4 2020年春夏のキノコブラウス DKK2.850,00
5 自作の水彩画パンツ DKK2.650,00

©HELMSTEDT

Emilie Helmstedt/エミリー・ヘルムシュテット
デンマーク出身。2018年に若手サポートコンペ、マガジン・ドゥ・ノール・ファッション・プライズを受賞し、コペンハーゲンファッションウィークにてデビューした新星。

Q ファッションに目覚めたのはいつ?
A 10歳の頃にはクラフトや縫い物に興味が

Q 初めてデザインしたアイテムは?
A フェスティバルのために自分で作ったドレスかな。子どもはみんなプリンセスのように着飾るの

Q クリエーションで大切にしていることは?
A 自分自身があること。アイデアに忠実であること

Q どんな幼少時代だった?
A みんながクラブ活動をしたりお泊まり会をしている頃、家で一人でいた。布団をリビングに出してきて穴倉をつくってその中で遊んだり、ツリーハウスでお茶会をしたり。自分の世界で生きていたと思う

Q 着想源は?
A 子どもの頃の記憶。義父がアーティストで家にアトリエがあったから、いつも色に囲まれていた。夢や感情も重要。白昼夢のように日中に現れたイリュージョンを作品で表現しているの

小さなコミュニティで手作りされた、真にサステイナブルな服

ニュージーランドを拠点にしながら、インスタグラムを通じハンドメイドのセーターやドレスを販売しているハリー・ウェアー。ファッションエディターやデザイナーも含め、じわじわと世界中にファンが増えている。特にファッション業界が定めるシーズンやシステムにはこだわらず、「自分が心から作りたい、と思ったときに作るようにしているの。そのほうが素敵なものができるから」と語る。双子の姉妹と二人の弟たち、犬や猫、うさぎやモルモットなどたくさんの動物に囲まれた大家族に生まれ育ち、ニュージーランドの大自然をいつもインスピレーションとしてきた。「できるだけニュージーランド産のウールを材料にして、地元の熟練した作り手たちと共同製作しています。買ってくれた人がずっと愛用できるようなもの、修理しながらも長く着られるような服を作りたい。余った毛糸や生地も無駄なく使いながら、どれも一点もの、と言えるようなスペシャルな物づくりが理想」とハリー。立体的でドリーミーなデザインのセーターや、ゆったりしたシルエットのドレスには、彼女のおおらかでハッピーなオーラが感じられる。ともすれば“グリーン・ウォッシング”とも見える、サステイナブルであることがトレンドのような昨今だが、彼女は実に自然体で、そのコンセプトを体現している。

6~9 ドレスは完成したら随時サイトにポストされており、価格はNZD620〜。セーターも同様だが、注文も受け付けている。NZD790〜で製作は2〜3カ月ほど

©Harry Were

Harry Were/ハリー・ウェアー
ニュージーランドのオークランド出身、在住。インスタグラム(@harrywere) を通じてハンドメイドのプロダクト (セーター、ドレス、ジュエリー) を販売。フォトグラファーとしても活動。

Q ファッションに目覚めたのはいつ?
A ものごころついたときから。双子の姉妹がいて、両親はよくお揃いの服を着させてくれた

Q 幼い頃はどんな子どもだった?
A クリエイティブ、ハッピー、繊細、生意気、好奇心旺盛

Q 初めてデザインしたアイテムはどんなもの?
A 人形用の洋服

Q 尊敬するデザイナーは誰?
A 地元の作り手をサポートしている小規模なデザイナーたち

Q ミューズは?
A 双子の姉妹、カーター

Q お気に入りの本は?
A カーターの料理本『Carter’s Cookbook』。写真は私が撮っていて、約1年かけて一緒に作りました

Q 1時間自由な時間があったら何をする?
A 海に泳ぎに行って、アイスクリームでも食べるかな

FEATURE
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