ファッションは単に美しいものを提示するだけではなく、人々が見落としがちな問題に目を向ける機会となる媒体であるべき。プライベート・ポリシーのハオランとシーインはそう考える。毎回のショーでひとつ社会問題のトピックを選び、それについての新聞をリリース代わりに配布している。今季は「Get Well Soon」と題し、米国の医薬品に焦点を当てた。「薬品会社と保険会社の利益を追求するあまり、研究に正しくお金が使われていないと言われています。薬には不当に高い値づけがされ、患者の命がマーケティングの犠牲になってしまっている」と語る。コレクションでは白衣やゴムグローブ、手術着など医療の作業服の要素をストリート感のあるスタイルに溶け込ませた。注射器から逃げる熊のキャラを取り入れたりと、ユーモアもひとさじ。「医療なんて関係ないと思っている若い世代が、議論するきっかけになれば」。ショーを開催した2カ月後、世界は新型コロナウイルス禍のまっただ中にいる。「私たちは政治的に重要なことを決断する大きな力は持ち合わせていないけど、ニュースキャスターのように、人々に気づきを与え、行動を促すことができる。その行動はGoogleで検索するような小さな変容かもしれないけれど、それらが集まったとき、大きな力となって世の中を変えていけると信じています」