好奇心を呼び覚ます"漆黒"
昨年デビューした気鋭のブランド、プルーン ゴールドシュミットより。デザイナーの幼い頃のワードローブや、彼女が理想とする力強い女性像にインスパイアされたコレクションだ。ゆったりと柔らかな生地のフラウンスカラーが情緒的なムードを醸し出す。モディリアーニが描く神秘的な女性のようにしなやかで、センシュアルな魅力を引き出す。
真夜中の色と踊る
未知なる世界へ誘うのは、ミステリアスな魅力あふれる黒。唯一無二のカラーはまとう人をパワフルで、ときに可憐に魅せる
光沢感のあるタフタ素材。首まわりを包み込むラッフルカラーは、ドローコードで高さとボリュームを調節可能。
ヴィンテージのリネンをアップサイクルし、仕立てたブラウス。袖口には趣の異なるレースを重ね、甘さに奥行きを添えて。
映画監督ウォン・カーウァイの作品に着想を得た今季。体に沿ったドレープが、フェティッシュな魅力を開花。
胸元のカッティングがささやかなセンシュアリティを薫らせる。スカーフとして身につけられるボウタイつき。
スクエアホールがデコラティブに配されたブラウス。ギャザー部分がウエストのシェイプを際立たせる。
軽やかなキュプラ地のボディや袖をフリルでデコレート。エフォートレスなシルエットを、ゆったりと着こなして。
「大都会の憂いが漂う黒いブラウスの女」
モディリアーニ《アンナ・ズボロフスカ》
Amedeo Modigliani "Anna Zborowska"
19世紀末から20世紀初頭にかけて、印象派を出発点とした画家たちはさまざまな実験を試みるようになった。これら個性的な芸術家にはフランスの外からやってきた画家も多く、彼らは「エコール・ド・パリ」派と呼ばれた。アメデオ・モディリアーニもそのひとりで、イタリアの良家の出身だったが、妥協を嫌ってボヘミアンのような生活をしていた。
ガス灯に替わって電灯が普及したパリでは、夜の娯楽が盛んになり、人々は着飾って深夜まで食事や観劇を楽しむようになった。上流階級の男性の夜会服では黒が主流となり、女性にとっても黒が高貴でファッショナブルな色とされるようになった。モディリアーニは大都会パリに住む女性の肖像画を多く描いたが、その大多数がブラウス(ときにはセーター)とスカート姿で椅子に座るというポーズで、背景も簡素だった。着飾った姿で精緻に描かれた古典的な肖像画と違って、ブラウスとスカートの絵姿にはリラックスしたモダンさが漂う。
モディリアーニの描く女性は、顔と首が異様に長い。彼女たちのアーモンド型の目には瞳が描き込まれておらず、そのせいでかえって凝視されているような印象を与える。ほっそりとしたその姿はどこか官能的でメランコリック。しかし、それと同時に彼女たちの佇まいからは、華やかなパリでの生活の背後に潜む不安感が姿をのぞかせている。
この絵のモデルは、友人で画商のレオポルド・ズボロフスキーの妻アンナ。彼女はモディリアーニの恋人ジャンヌのよき相談相手でもあり、夫の死後も画商として作品を売り続けた。