イタリア・アマルフィ海岸、ポジターノで 3日間だけのドルチェ・ヴィータ

8月もそろそろ終わり。ヴァカンス最終ラウンドは、南イタリアのポジターノ(Positano)へ!アマルフィ海岸の醍醐味は、穏やかな地中海をのぞんで続く崖の斜面に細い道がうねり、カラフルな家が点在する、ユニークな景勝。この海岸きっての街、ポジターノをロケ地とした映画には、『リプリー』(1999年)や『理想の女』(2005年)が挙げられます。私はずっと前からここに行ってみたかったのですが、今回友人の誘いでやっと実現!お誘いとは、スイスはバーゼルの現代アートミュージアム、バイエラー財団(Fondation Beyeler)のディレクターであるサム・ケラーさんと妻ジュディスさんの盛大なダブル・バースデーパーティです。

初日はまず、山の中腹にあるホテルから急な傾斜の石畳の階段を30分近くかけて降りて、船着き場へ。ヨーロッパ各地から集まった100人近くのゲストたちと交流しながらのショートクルーズを経て到着したのは、イル・ガッリ諸島のメインの小島でした。ここ、イルカの形をした島であるガッロ・ルンゴは、島全体が私有地。見所は、アラブ様式の噴水がある庭にル・コルビジェのアドバイスによって1920年代に建てられたヴィラをはじめ、要塞に似た石造りの塔、真っ白なチャペルなど。この島を1989年に購入したのは、なんとダンサーのルドルフ・ヌレエフ(Rudolf Nureyev)だとか。

翌日はメインイベントで、ポジターノの船着き場からボートで約10分のローリト・ビーチへ。ダ・アドルフォとル・シレーヌ、2件のレストランとその前に広がるビーチを貸し切ってのバースデーパーティは、13時にスタートしました。「海辺でフェリーニ、ドルチェ・ヴィータ」をテーマ&ドレスコードとした一日は、デッキチェアでなごむもよし、海に飛び込むもよし、テラスに座って延々とランチをとるもよし、のフリースタイル。招待客にはアートや映画関係の仕事に就く人が多く、フィルム上映会も続行。フェリーニ作品をはじめ、イタリアの海辺で撮影された映画の名場面を集めた上映を楽しみました。陽がおちる頃になると、皆水着やビーチウエアからドレスに着替え、夜の部門への準備。私が選んだのは、アルベール・エルバスによるランバンのロングドレスです。偶然にも招待客の一人がランバンのテキスタイルデザイナーのカミーユで、ドレスを認識した彼女と意気投合。この後は花火が打ちあがり、ナポリから呼ばれたゲストシェフによる石釜焼きピザのビュッフェが振舞われ、そして会場はダンスフロアに。12時過ぎまで、宴はエンドレスでした。

そして最終日の午後は、前日のパーティで知り合いになったジュリアの招待で、ル・シレヌーズ(Le Sirenuse)をたずねました。5つ星ホテル、ル・シレヌーズはこの地方の名家、セルサーレ家のサマーハウスを同家の兄弟数人がホテルに改装して、1951年にオープン。それ以来ビジネスとサービスのスーパーバイズからアンティーク家具の買い付け、客室のリネンの洗濯、ホテル併設コンセプトストアであるエンポリオの買い付けとオリジナルウエアのデザインまで、すべてがファミリービジネスだとか。ジュリアも跡取りの一人です。ちなみにシレヌーズとはラテン語で“人魚”の意味。前述イル・ガッリ諸島にまつわる人魚の伝説からつけられた名前です。同ホテルの自慢スポット、シャンパン&オイスターバーでベリーニを頂いたあとは、ホテル、イル・サンピエトロ(Il San Pietro)内のレストラン、カルリーノでのカクテルディナーで、3日間に渡ったイベントは幕を閉じました。

パリに戻ると、あちこちからきこえて来るのはブリジット・バルドーがヴァカンスへのノスタルジーを唄ったヒット曲、La Madrague 。夏のワードローブを片付け、ロントレと呼ばれる新学期にむけての準備が始まります。

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ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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