ファッションウィークが終わってやっと一息と思いきや、10月第3週目は、パリ・アート・ウイーク。現代アートフェア、フィアックを中心に、夜な夜な展覧会オープニングやパーティが開かれました。私にとってのハイライトは、マルメゾン城(Château de Malmaison)でのカレン・キリムニック(Karen Kilimnik)展へのプライベート・ヴィジット。フィラデルフィア在住のカレンは、現実離れしていてとってもシャイなアーティストです。秋のパリでも半袖Tシャツ、短パンにナップサックという出で立ち。一方好みや作風は、とてもロマンティック。ディジョンにあるコンティ・アカデミー(高級ワインで有名なロマネ・コンティ所有の城)での個展、パリ・オペラ座でのバレエ「サイケ」の緞帳、そしてパリ・グランパレでの「ミス・ディオール」展……。これまで見た彼女の風景画や肖像画、インスタレーションは、どれもロマンティックで繊細。そしてシュールで、ときにはウィットが利いているのが特徴です。一目でカレンだとわかるのです。
カレン・キリムニックの個展オープニングに連れて行ってくれたのは、彼女をリプレゼントするニューヨークの303 Galleryのスタッフたち。会場となった、パリから45分程のリュエイユ=マルメゾンにあるこじんまりとしたお城は、カレンが大好きな場所だとか。ここは19世紀初頭にナポレオン・ボナパルトの最初の妻、ジョゼフィーヌ・ド・ボアルネが住んでいた館で、二人が離婚するまではナポレオンもよくここで過ごしていたそうです。カレンは3年程前にこのお城をたずね、軍人で留守がちだった皇帝ナポレオンと、浪費家で当時のファッション・アイコンでもあったジョゼフィーヌのラブ・ストーリーにインスパイアされ、本展のための制作にとりかかりました。オブジェやコラージュを含み、油彩画を中心とした20点の新作は、それぞれの部屋や調度品、それらにまつわる逸話に捧げた、意義深い作品ばかり。残念ながら10月20日〜30日と展示期間は短いのですが。ちなみに、マルメゾン城が現代アーティストを迎えるのは初めて。まるで時が止まっていたこのお城の時計の針が、やっと動き出したようです。
パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
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