8日間に渡って開かれた17秋冬パリ・ファッションウイークが3月7日、幕を閉じました。今回は、私の“感動モーメント”をご紹介しましょう。
若手デザイナーによる、荒削りながらエネルギー溢れる作品を見るのは、ワクワクする瞬間です。今私が最も注目しているブランドの一つが、ヴェジャス(Vejas)。ミナコラム昨年6月24日の投稿でもご紹介したように、ヴェジャス・クルシェフスキー(Vejas Kruszewski)は、カナダ出身の若干20歳。パリでの2度目のプレゼンテーションでは、彼が得意とするオーガニックなラインとスポーツウエア・テイスト、テイラードのディテールなどが、これまで以上にこなれてミックスされました。
一方、惜しまれつつクロエを去ることになったのは、クレア・ワイト・ケラー。私は彼女の6年の任期の間に3度インタビューする機会に恵まれましたが、毎回その穏やかな人柄と幅広くオープンなクリエイティブマインドに触れて、とてもハッピーな気持ちになったのを覚えています。なので彼女がフィナーレで姿を現した時には、思わず涙ぐんでしまいました。チームワークを大切にしてきたクレアのフェアウェルを記念してアフターパーティを開いた、クロエのスピリッツにも、拍手!
さて、この週は我が家の愛犬スウィーティも、感動モーメントを体験しました。彼は私たちがショーや展示会を回る間車の中で待機していますが、この日の夜はトッズのブティックで開かれた、“ダブルTタトゥー”カクテル・パーティにお供。タトゥー・アーティストのサイラ・ハンジャン(Saira Hunjan)とのコラボレーションによる、バッグとシューズの発表会です。ここではサイラがトッズのシンボル、ライオンからインスピレーションを得て描いた模様を、ナチュラルレザーに彫るデモンストレーションが進行中。そしてスウィーティはなんとこの場の主役、サイラに抱き上げられ、記念撮影までしてしまったのです。
3月6日はブールデル美術館 (Musée Bourdelle)での『バレンシアガ ルーヴル・オ・ノワール(BALENCIAGA, L'OEUVRE AU NOIR)』展オープニングへ。これはガリエラ衣装美術館 (Musée Galliera)の場外展で、黒にフォーカスと言うアイディアを出したのは、同美術館ディレクターのオリヴィエ・サイヤールです。コスチュームはもちろん帽子やジュエリーなど小物や写真、デザイン画、パターンまで、クリストバル・バレンシアガによる黒の作品を、ブールデルによる彫刻と呼応させる形で展示しています。これに“色”を添えたのは、黒を巡ってのユニークな編集。同じデザインのドレス2点――黒で仕立てた一点と別色の一点――を並列させたり、黒地に模様や装飾を配した作品を集めた展示です。“モード史のお勉強”ではなく、純粋にバレンシアガ作品の美しさを感じ取った、感動の一夜でした。
パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
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