ここ最近、プレタポルテをクチュールの期間に開くメゾンが増えています。そして、初めてまたは久しぶりのランウェイ、NYをあとにしてのパリ・デビュー、というケースもあり、何かと話題が多かった今回のオートクチュール・ファッションウイーク。大手のメゾンはさておき、ここでは私なりのベスト4をご紹介しましょう。
初日、7月2日はロナルド・ヴァン・デル・ケンプ(Ronald Van Der Kemp)によるRVDKのドゥミ・クチュール(フランス語でセミ・オーダーの意)でスタートしました。彼は3年前からプレゼンテーション形式で見せてきましたが、今回が初めてのランウェイ。ロマンチックなドレスからアランニットのセットアップ、趣向を凝らしたジーンズ、パッチワークのドレスまでスタイルはさまざまですが、いずれもグラマラスでエキセントリック。
パリ・デビューを果たしたのは、マレヴィ姉妹によるロダルテ。“風変わり”な女性像のモデルは、ロバート・アルトマンの映画『3人の女』('77)に登場する“夢見る人、アーティスト、インテリ”3タイプのヒロインです。フローラル・プリントや、パステルカラーのチュールで仕立てたデリケートなドレス群に差し込まれたのは、レザーのバイカー・ルック数体。モデルたちが頭には生花の冠を載せ、手に持ったカスミソウの束を引きずりながら歩く、と言った演出は限りなく絵画的でした。
ベルトラン・ギヨンによるスキャパレリでは、いつもにも増してシュルレアリスム色が濃厚でした。“ショッキング・ソサイエティ”と題されたコレクションの主役は、スワロフスキーとのコラボレーションによる一点。“クリスタル・ファイン・メッシュ“と呼ばれる素材を重ねたドレスは、20世紀前半に活躍したアーティスト&テキスタイルデザイナー、ゾフィー・トイバー・アルプの作品が着想源だとか。
そしてハイライトは、アズディン・アライアの、6年ぶりのクチュール・ショー。フロント・ロウにはニコラ・ジェスキエールやカーラ・ブルニ・サルコジの姿も。ランウェイは久々のナオミ・キャンベルがAラインのシアリングコートをまとって幕をあけると、拍手が沸き起こりました。おなじみのニットのボディフィットなドレスをはじめ、レザーのセットアップやコートドレスなど、70あまりのルックはどれも、まるで彫刻! アライア・マジックの普遍性に、誰もが納得した夜でした。
パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
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