2017.10.27

パリを沸かせた現代アートフェア

10月半ばのパリを沸かせたのは、毎秋恒例のフィアック(Fiac!)。世界主要のギャラリーが集まるこの現代アートフェアは、著名アーティストの代表作をおさらいできるうえ、最新作を鑑賞できます。また、若手アーティストの作品をチェックするよい機会でもあります。そしてこのアートウイーク期間中には、数々の展覧会がオープンしました。

今回の話題のトップは、ニューヨークを拠点とする大御所ギャラリー、ガゴジアン(Gagosian)でした。パリに2つあるブランチのうち、郊外のブルジェ空港倉庫街で幕を開けたのは、コンテンポラリー・ダンスの振付師、ウイリアム・フォーサイス(William Forsythe)の初のアート・インスタレーション。ロボット仕掛けによる巨大な二つの黒旗は、時にはスローモーションで、時には突風を受けたかのようにたなびき、彼のダイナミックな振付けを示唆しています。

Wiiliam Forsythe / Choreographic Objects
Gagosian Le Bourget, 26 avenue de l’Europe 93350 Le Bourget 〜12月22日

 

これと並行してガゴジアンのパリ市内のギャラリーでオープンしたのは、「ピカソとマーヤ」展。彼の多数の子供の中でも最も頻繁に描かれた長女、マーヤとの密接な関係が、キュビスムの肖像画や未公開の家族写真などで綴られました。人形や紙細工のコラージュ、デッサンなども含めたパーソナルな展示が魅力。そのキュレーションは彼女の娘(ピカソの孫)でアート史研究家のダイアン・ウィドマイヤー・ピカソ(Diana Widmaier Picasso)が手掛けました。

Picasso and Maya / Father and Daughter
Gagosian Paris 4, rue de Ponthieu 75008 Paris 〜12月22日

友人のアーティストを招きつつ、新作とこれまでの代表作をミックスして大規模な展覧会を披露したのは、フランスを代表する二人の女性アーティスト。一人はヴェニスのアートビエンナーレで銀の獅子賞受賞歴もある現代アートの筆頭株、カミーユ・アンロ(Camille Henrot)です。星の動き、神話やシンボリズム、日常生活、社会学、心理学までに渡る視点で、曜日別の7つのインスタレーションで展示したのは、フィルム、デッサンからジュエリー、キャンディーの包み紙、片方だけのソックスまで。

Days are Dogs / Camille Henrot
Palais de Tokyo 13, Avenue du President Wilson 75116〜1月7日

もう一人は、別れや紛失と言った出来事を写真と文で皮肉&ブラック・ユーモアたっぷりに綴るのが常の、ソフィー・カル(Sophie Calle)。今回の会場は、狩猟自然博物館です。ミュゼ所蔵の動物の剥製や猟銃の一連に、セレナ・キャロヌ(Serena Carone)による磁器や陶器のスカルプチャーを織り交ぜ、父の死や離婚に際しての感情を、詩的に語っています。

Sophie Calle & her guest Serena Carone / Beau Double, Monsieur le Marquis!
Musee de la Chasse et de la Nature 62, rue des Archives 75003 Paris 〜2月11日

ところでフィアックとは関係ないものの、アートはしご番外編として是非知っておきたいのが、アートにゆかりの深いワイナリー、シャトー・マルロメ(Château Malromé)です。かのアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックが暮らしていたここでは、彼の作品の展示の他、当時のまま保管されている住まいを観ることができます。同時にぶどう畑とワイン醸造所の見学が可。この夏館内にオープンしたコンテンポラリー・ギャラリーでは、現在森山大道と荒木経の写真の数々が展示中されています。私たちにはおなじみの写真家ながら、こんな環境で見ると、また新鮮な印象。会期あとわずかですが(〜11月5日)、今後の展覧会情報はサイトで。敷地内には、レストラン、喫茶店、ショップもあり、自家製のワインやハチミツも食せます。
Château Malromé 33490 Saint-André-du-Bois

最後にパリから近い外国に足を延ばすなら、ベルギーへ。アントワープのファッション・ミュージアムMomuではオリヴィエ・テイスケンス(Olivier Theyskens)の回顧展が始まったばかりです。自身のブランド、ロシャス、ニナ・リッチ、テイスケンス・セオリー、そして新たに自身のブランドを再スタートした彼の世界を、改めて一望するチャンス。ちなみに本展を最後に、Momuは改装に向けてしばし休館となります。

Olivier Theyskens / She walks in Beauty
Momu, Fashion Museum Antwerp Nationalestraat 28, Antwerp 〜3月18

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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