モードと写真のイエール国際フェスティバル。ここからスターデザイナーがまた誕生する

4月末の週末、若手のデザイナーと写真家のコンクール「モードと写真のイエール国際フェスティバル」International Festival of Fashion, Photography and Fashion Accessories in Hyèresの第33回が開かれました。メイン会場は丘の上から南仏の街イエールを見渡せるアートメセナの邸宅、ヴィラ・ノアイユ。コンクールを巡ってはトークショーからワークショップ、展覧会、ポップアップストアなども展開され、フェスティバルはのべ4日間に渡ります。プログラムの核となるのは、モード部門とアクセサリー部門、そして写真部門で書類選考を勝ち抜いた、各部門10 人のファイナリストたちによるプレゼンテーション。そして少し離れた海沿いの倉庫では、モードのファイナリストたちによる各7ルックと、昨年のグランプリ受賞者による最新コレクションが披露されます。

プレゼンテーションとランウェイの第一ラウンドが開かれると、各国のジャーナリストたちの間の話題はオランダのデュオ、ボター(Botter)に集中しました。ボターの片割れ、アントワープのロイヤル・アカデミーに学んだラシュミーはカリブ諸島出身、パートナーのリシも、母のルーツはドミニカ共和国。だから彼らが作るメンズウエアのインスピレーションはカリブ、特に漁師たちや道でたむろするキッズたちの日常だとか。それとミックスさせたのが、グレンチェックやレジメンタル・ストライプと言ったクラシックな素材で仕立てた、テイラード。確実なカッティングに基づいて崩したジャケットやスーツは、キュービズムとでも言えるシルエットに仕上がっています。そしてスタイリング小物は、ビニール袋や浮き輪!

一方彼らは6月に発表されるLVMH賞でもノミネートされているし、既に小規模ながら販売経路もあり、彼らを選ぶのは短絡的すぎるのでは、と言う声も多々ありました。でも審査員の間では、この成熟した技術とクレイジーさのバランス感が評価され、満場一致でグランプリはボターに決定!例年の受賞者の例にならって、彼らは今後、シャネルのメティエダール(刺繍メゾンのルサージュ、ジュエリーのグーセンスなど)の支援でコレクションを制作することに。一年後にここで発表される彼らの新作が楽しみです。

Text: Minako Norimatsu

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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