これぞアップサイクル! 刈り込んだ愛犬のふわっふわのヘアで、とっておきのアイテムを作る

ロンドンの友人、マルコ・マティジックが犬とヒトの間でお揃いが楽しめる小物のライン「モンタギュ・マティジック」(Montagu Matysik)を発表しました。マルコはスタイリスト、ビューティ&サステイナビリティのジャーナリスト、イラストレーター、そして小物デザイナーと言うマルチ・アーチスト。彼のビジネス・パートナー、ジョルジーナ・モンタギュは日本に住んだこともある、アートや建築畑のジャーナリスト。首輪、リードからバッグに渡るコレクションの素材は、なんと刈り込んだプードルの毛です!

ことの発端は、ジョルジーナが実家の箪笥の奥深くに眠っていたウールの残反を見つけたことでした。実はこれ、1930年代に彼女の曽祖母のネリー・イオニデスが、プードルの毛で織らせた生地。ネリーは当時、言わば犬のボーディング・スクール「ヴァルカン」を主宰していて、大型犬種“スタンダード・プードル”を育成する他、トリマーや飼育係の教育にも当たっていました。プードルといえばモコモコしたヘアカットを連想しますが、これはビューティ・コンテストのためではありません。元来猟犬だったプードルには、撃ち落とされた鴨を水に飛び込んで取ってくるという役目があったため、これは泳ぎやすさと水の中での保温性重視で考案されたカットだとか。プードルの毛は柔らかく、キメが細かく、丈夫。犬の血行や毛のクオリティのためにも、定期的なカットは必須です。そこで溜まる一方のヘアを捨てるのではなく素材として利用しよう、と今でいうサステイナブル的な発想から生まれたのが、プードル・ウールでした。ネリーはプードル・ヘアで作ったツイードで、サヴィル・ロウにてスーツやコートを仕立てさせていたそう。こんな話に感動したジョルジーナは、職人を探してこの素材を蘇らせ、マルコにデザインを託したのです。

モンタギュ・マティジック」によるさらに特別なコンセプトは、持ち込まれた愛犬の毛で織った生地で製品を作る、ビースポーク・サービス。犬好きの私は、せっかく治療した犬猫ヘアのアレルギーがぶり返さないよう、透かし模様のロケットに愛犬の毛を入れて肌身離さずつけていたことがありました。それとはちょっと違いますが、愛犬の毛を纏えるなんて、驚きです。我が家のスウィーティは残念ながら短毛ですが。ちなみに「モンタギュ・マティジック」売り上げの10%は、病気を抱えている人を嗅ぎ分ける犬を訓練するMedical Detection Dogsに寄付。私たちと犬のコラボレーションには、いろいろな形があるんですね。

 Text: Minako Norimatsu

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ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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