デカダンス!ラグジュアリアス! パリ・オートクチュール週間ハイライトvol.2

1月末にパリで開かれた、オートクチュール週間。前回の百花繚乱ベスト3に続き、今回は話題騒然ベスト3をご紹介しましょう。

 まずは、ジョン・ガリアーノによるメゾン マルジェラの、初の男女ミックス“アーチザナル”コレクション。今回もショーの前にはガリアーノが自分の声でインスピレーションを語るポッドキャストが発表されました。新世代の“グラマー”を探ってきた彼が考える“デカダンス”は、もう哲学! とてもわかりやすい英語で情緒豊かに喋っているのが面白いので、ぜひ聞いてみては。ショーではセットもコンセプチュアルで、なんとランウェイは鏡。天井を覆うのは、プードルが反復するサイケデリックなグラフィティです。壁も一面この絵で、床に映る天井とあいまって、写真で見るとまるでデジタル加工のビジュアルのよう。ダークな“世紀末”を未来的なアヴァンギャルドに仕上げたガリアーノのアプローチは、他とは一線を画すものでした。

 一方反逆精神をストレートに、とは言えユーモラスに表現したのは、ヴィクトー&ロルフです。18ルックはほとんどがキャンディ・カラー。ドレスの一連には、「信頼してね。私嘘つきだから」など、いずれも挑発的または矛盾したメッセージが書かれています。しかもメッセージは一点一点異なる書体で、ポップなデザイン。チュールが増殖したかのようなすごいボリュームのドレスとのギャップが際立ちます。

 そしてディオールは、今回も意味深いテーマでアピール。サーカス小屋風の巨大なテントのセット、イントロに登場した女性オンリーのアクロバット集団「ミンブレ」のパフォーマンスで、インスピレーションが“サーカス”であることは明白です。これに続いてマリア・グラツィア・キウリが見せてくれたのは、優しいトーンの幻想的で初々しいルックのオンパレード。舞台衣装という直接的なアプローチではなく、ファンタジーや軽やかさ、シュールさなど、サーカスの楽しさが詩的に解釈されました。

一方ジュエリー界で今回の最も大きな話題は、ブシュロン。18か月に渡る改装を終え、ヴァンドーム広場のブティックが新たにオープンしたのです。メゾンの設立当時の姿を取り戻しつつモダンな要素を配し、最終的にはショップと言うより“家”をイメージと言うコンセプトの新ブシュロンは、4フロア。ライブラリーやガラス張りのテラス、果ては超上顧客が泊まれる部屋まであり、巡るのが楽しい空間です。

 そしてクチュール週間を締めくくったのは、フェスティヴァル・ディエールのカクテル・パーティ。審査員の面々と各分野のファイナリストが発表される、言わば同フェスティヴァルのティーザーです。審査員団を率いるのは、まずモード部門がナターシャ・ラムゼイ・レヴィ、アクセサリー部門はシャルロット・シェネ、写真部門はクレイグ・マックディーン。昨年のグランプリ受賞者、もうじきニナ リッチでのデビューを果たすオランダのデュオ、ボターも最新作を発表する予定だと言うから、楽しみです。5月頭にはフェスティヴァルの報告をお届けするので、お見逃しなく!

 Text: Minako Norimatsu

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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