7月初旬のオートクチュール週間。後半はビッグ・メゾンがクチュールの真髄に迫り、アクサセリーでも贅を極めた新作が発表されました。
まずは世界中が注目していた、シャネル。カール・ラガーフェルドの他界後、彼の長年の右腕から後継者となったヴィルジニー・ヴィアールの、ソロ・デビューの日が遂にやってきました。今回の会場セットは、円形の巨大な図書館。ガブリエル・シャネルもラガーフェルドも稀に見る読書家だったことへのオマージュです。また、“ページをめくる”と言う意味合いもあったかもしれません。ドレスや靴には、まるで本のページのようなディテールも見られました。絶妙なバランスで散りばめられたのは、ツイード、カメリア、モノクロ、キルティングなど、シャネルにとってアイコニックな要素の数々。カール・ラガーフェルドが築いたスタイルに敬意を払いつつ、よりフェミニンで軽やかに仕上げたヴィルジニーに、拍手は鳴り止まず。
また、今回も息をのむほど美しいショーでセンセーションを巻き起こしたのは、ヴァレンティノのピエールパオロ・ピッチョーリ。前回に続き“多様性”に基づいたコレクションで、彼は色を炸裂させ、シルエットで冒険をし、あらゆるスタイルや文化を取り入れつつ、エレガンスを追求しました。セシリア・チャンセラーやローレン・ハットンなどかつてのトップモデルや女優を含めたキャスティングや、フロントロウに顔を見せたムッシュ・ヴァレンティノの存在も会場の熱気を高めたのは、言うまでもありません。そしてフィナーレで白衣を着たお針子さんたちが登場すると、会場では涙するゲストの姿も。
さて、ウイットの効いた言葉遊びで新作を発表したのは、ちょうど20年を迎えたディオール・ファインジュエリー部門のクリエーションを司る、ヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌです。この機に彼女が発表したのは「ジェム ディオール」。貴石を意味するジェム(gem)には、これとちょうど発音を同じくする、フランス語のJ’aime(=アイ・ラブ)と言うメッセージも込めて。ヴィクトワールはこれまで、自然のモチーフ、ドレスのディテール、シルエットを自分なりに解釈するという、どちらかというと描写的なジュエリーで知られてきましたが、今回は純粋にジェムストーンへの愛をジュエリーで表現したとか。
クリエイティブ・パワーに溢れるクチュール週間。来年1月の次回が楽しみです。
Text: Minako Norimatsu