インド・ラジャスタン地方の古都、ジャイプールに10月半ばにオープンした、ニラ・ハウス(Nila House)。サステイナブルなものづくりを提唱するこのコンセプト・ストアでは、インドに古くから伝わる手織りの伝統を守り、ケミカルを使わない自然草木染めで環境保護に貢献することを柱としています。ちなみに “ニラ”はサンスクリット語で“ブルー”の意味。だからニラ・ハウスのアイコニック・カラーは、マメ科コマツナギ属の植物の葉や幹を使った藍色。ウエアとホーム・コレクションでは、手織りのオーガニック・コットンで無垢な白、またはさまざまなブルーのシェイドにインディゴで染めた生地を素材としています。アイテムはカジュアルなトップからクルタ(チュニック)、クッションカバー、ブランケット、タオルなど。いずれもトラディショナルなデザインにモダンなタッチを加えた、洗練されたデザインです。
ニラ・ハウスの生みの親は、イギリス発のライフスタイル・ショップ「バンフォード」で知られる、キャロル・バンフォード。インドをこよなく愛する彼女が2013年に発足させた「ザ・レイディ・バンフォード財団」では、クラフツマンシップを守り、また近郊の村人たちに職を与えると言う社会貢献の目的も合わせて、ニラ・ハウスのプロジェクトを立ち上げたのです。そうして見つけたのが、ジャイプールの中心にある1940年代のハヴェリ(インドに典型的なタウンハウス)。改装は、インドきっての建築家、ビジョイ・ジェイン (Bijoy Jain)に依頼しました。緑が生い茂る小径を抜けると、手前にはショップ・スペース。中庭を取り巻く回廊に沿っては、ブロックプリントや手織りの職人が実演をし、制作体験もできるワークショップが数部屋、そしてファブリックに関する世界中の本や資料を閲覧できるライブラリー、各種染料や生地サンプルの展示室。さらに地下には、小さなミュージアムとも言える、インド各地方のテキスタイル製品のアーカイブズが。バンフォード夫人は「ニラ・ハウスが、手仕事への情熱やアイディアを交換・シェアする場所になって欲しい」と、今後は“アーティスト・イン・レジデンス”も企画しているそう。サステイナブルに興味はあるけれどどこから始めたらいいかわからずにいるデザイナーの手ほどきもすると言うから、興味のある人はぜひコンタクトしてみては。
Text: Minako Norimatsu