2020.08.19

大爆発からの復旧に挑むベイルートを支援しましょう!

8月4日、ベイルートの大爆発のニュースを知ったのは、南仏プロヴァンスに滞在中のことでした。本誌昨年11月号でも紹介した、親友サフィア(テ&ボーテbyラデュレのジェネラル・マネージャー)の別宅があるアンスイに来ていたのです。彼女と共通の友人、デザイナーのラビ・カイルー(Rabih Kayrouz)と彼のパートナーでレストラン経営者のカマル・ムザウァック(Kamal Mouzawak)のことが心配になって早速連絡すると、なんとラビは頭に怪我をして入院中とのこと。詳しい状況はわからないまま、私たちはとにかくテレビやネット、SNSで見られる映像に愕然としてしまいました。10年前、一緒にこの街に旅した時の思い出を温めながら。ラビとカマルに初めて会った旅では、彼らの別荘もたずねて楽しい時を過ごしたのでした。豊かな自然に囲まれ、中東の文化にヨーロッパのエスプリが融合した美しいこの街では、その文化の奥深さに触れただけでなく、度重なる戦争を生き抜いて来た人々のエネルギーに圧倒されたのを覚えています。ベイルートでの出会いを機に、私たちはパリでも住居とアトリエ&オフィスを構え、コレクションを発表するラビ、そしてパリにも頻繁に来るカマルと親交を深めていました。

ラビが自身のメゾンをスタートしたのはもう20年近く前ですが、モダンでフェニミンなスタイルと、中東特有のホスピタリティで、ここ数年はパリのプレス陣にもファンを増やしています。一方カマルは、2004年にレバノン各地からの産直ファーマーズ・マーケット「スーク・エル・タエブ」(Souk El Tayeb)をオープン。その傘下で5年後に始めたレストラン「タウレット」(Tawlet)はパリや東京でのポップアップも好評で、今ではレバノン全国に数店舗を数えます。日替わりメニューはヘルシーで美味しいだけでなく、貧しい村の主婦をキッチンに迎えることで仕事を供給すると言う、社会貢献の意味合いも。2015年には、アンティークや地元の工芸品を配したセンスのいいゲストハウスもオープンしました。Make Food Not Warをモットーとするカマルが、今回の惨事で自身のレストランが大打撃を受けたにもかかわらず、ニューヨークから支援にやって来たワールド・セントラル・キッチンと手を組んで早速始めたのが「エマージェンシー・キッチン」。彼の指揮で用意される多くの食事は病院やボランティア・センターに配給されていますが、活動を続けるための資金を募っています

そんなカマルと、外傷とトラウマからの回復に努めつつまずはSNSを通じて情報発信に努めるラビ。とにかくこの二人は、ヒューマニズムとヘリテージを大切にする、コンテンポラリー・レバノンの代表者。彼らを通じて、惨事からの立ち直りに挑むベイルートの人々を支援しましょう!

Text: Minako Norimatsu

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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