コロナ禍のパリコレ21SS・未来のランウェイのあり方とは 1/4

9月末から10月初旬の9日間、新型コロナ対策が強化される中、PFW(パリ・ファッションウイーク)がフィジタル(フィジカル&デジタル)形式で決行されました。デジタル・プレゼンテーションはパリのデザイナー協会のサイト上、カレンダーに従って随時解禁となる映像リンクからチェックし、合間合間にショーや展示会、と言うハイブリッドなスケジュールの数日間。その様子を、ダイアリー形式で4回に渡ってお届けしましょう。

9月28日

若手中心の初日、トップバッターは日本からマメ クロゴウチ。続いて今回PFW初参加の外国勢二人、ウェールズ・ボナー(今回はメンズのみ)とセシリー・バーンセン。単にルックを見せるのではなく、それぞれの世界観を詩的に表現したクリップ風ビデオのロケ地はそれぞれ順に長野、ジャマイカ、デンマークの海岸、と対照的です。これらを続けて見てヴァーチャル・トリップ感に浸り、お座敷FWも悪くないと思った1日でした。

9月29日

朝一番にマリーン・セルによるデストピアンな雰囲気のビデオを見た後、コペルニのショーへ。この秋のFWに先駆けて7月半ばにパリ郊外の麦畑で開かれたジャックムスのショーと言う例外を除くと、3月以来パリでは初のフィジカル・ランウェイです。クレージュを手掛けたことでも知られるセバスチャン・メイヤーとアルノー・バイヤンのデザイナー・デュオは、今回抗菌作用やUVカット効果の素材を使用して、シャープかつ動きやすいシルエットを提案。環境問題に真っ向から取り組んで警鐘を鳴らすマリーンと、ファッションとテクノロジーの相乗効果を追求するコペルニ。視点は異なれど明確なポリシーで突き進む二つの若手ブランドに、ファッションに未来有りきと感じた午前中でした。

午後は、ディオールへ。チュイルリー公園に設置されたテントは社会的距離に準じて、まばらなシーティングです。会場の壁を飾るのはアーティスト、ルチア・マルクッチによるステンドグラス。毎回ディオールのショーではマリア・グラツィア・キウリが選ぶ主張の強いアーチストたちが鍵となっているので、待ち時間の間にショー直前に発表されたショートフィルムをチェック。ショールックで印象的だったのは、エスニック・インスピレーションをモダンに落とし込んだタイダイやインディゴ、イカット織りなどのバリエーションです。ディオールのアトリエで制作されたオリジナルのデッサンからのイカットづくりの風景は、こちら

夕方はコシェのショーを見るため、19区のビュット・ショーモン公園へ。本誌8月号のインタビュー特集でクリステル・コシェを電話取材した際、毎日のジョギングコースであるこの公園近辺で見る、自然豊かなパリの下町の背後に近代的なビルが立ち並ぶ風景が大好きだと言っていたのを思い出しました。バグパイプの生演奏をバックに、今回もストリート・キャスティングで彼女が提唱したのは、昨今最も物議を醸す話題の一つである“多様性”。

そして夜はオテル・リッツにてショパールのカクテルへ。ここでは女優マリオン・コティヤールとのコラボレーションによるコレクション「アイスキューブ カプセル by マリオン・コティヤール」が発表されました。デビュー当時から環境破壊への危惧について語り、数々のミッションもこなす彼女らしく、今回使用したのは倫理基準にかなったエシカル・ゴールド、そしてダイヤモンドは最高水準のもの。しばらくイベントが控えられていたパリで、久々に華やかな雰囲気でフィジカルな1日目は幕を閉じました。

各プレゼンテーション・ビデオの視聴やストリーミング再生は、メゾン名をクリック
*ルック一覧は同サイトのCollectionセクションにて閲覧可能

 Text: Minako Norimatsu

 

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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