11月18日の投稿でご紹介した、1週間に渡ってのGucciFest。連日短編映画「OUVERTURE of something that never ended」が少しずつ公開されるのと並行して、グッチがサポートする若手デザイナーたちにも新作発表の機会が与えられました。この短編映画に毎晩オンタイムで見入っていた視聴者の一人が、ある若きデザイナーシャルル・ドゥ・ヴィルモラン(Charles de Vilmorin)。パリ・モード界の新しいプリンス、そしてアレッサンドロ・ミケーレに選ばれた15人のうちの一人です。思えば、シャルルが衝撃のデビューを遂げたのは、ロックダウン真最中の去る4月のことでした。今回彼はこのGussiFestでフィルムを発表するにあたり、ポップでカラフルなファースト・コレクションに、新たに作った神秘的でロマンティックなコスチューム数点を加えたそうです。
「求めたのは、好奇心をそそる雰囲気。ライティングや音楽と雑音が夢と現実のコントラストを成し、視聴者はその世界に引き込まれていつどこにいるのかさえ分からなくなってしまう……」。シャルルはこう語ります。「僕のデッサンに生命を吹き込んで生まれたのが、詩的で神秘的な雰囲気の登場人物たち。愛と寛容を謳うこのコレクションで、幻想的ながら恐怖感も与える“生き物”たちは善と悪、男性と女性、若者と年寄り、幸福と悲嘆の両方を演じるけれど、国籍もジャンルも曖昧。メイクアップも、このアイディアからなんだ」
また、今回初めてフィルム製作をしたと言うシャルルが大切にするのは、女優のシャルロット・ル・ボンを初め、友人たちとのコラボレーションです。シャルル曰く「映像からも読み取れる様に、彼らは美しいだけでなく、個性の強い真のアーティストたち」。冒頭でささやかれる詩も含め、音楽は彼が長年ファンだというシンガーLaurie Darmonの作だとか。「コラボレーターたちとはよく話し合い、インスピレーションとなるデッサンを渡したら、あとは自由にそれぞれのヴィジョンで解釈してもらったんだ。今回のようなプロジェクトでは、それぞれの創造性が交錯して一つの存在となり、同時にそれぞれの個性を認識し会えるのが面白い」。
「お伽話の様だけどちょっとだけ怖い、ティム・バートンやバズ・ラーマンの映画が大好き!」と言うシャルル。彼はグッチのOuverture...では、美しい映像と大切な主題に魅せられたそうです。また最近では、気鋭シンガーMottronのビデオ・クリップの衣装を手がけ、ファッションと舞台衣装をミックスする楽しみも味わったとか。彼は今後フィルムに傾倒するのでしょうか?「ショーではモデルのパルファンが香り、衣ずれや足音も聞こえる。だから期待以上のことが起こるフィジカルなプレゼンテーションが大好きだ。でもグッチのおかげで今回考えさせられた。フィルムは別のタイプのアドレナリン。何か新しいもの、美しいものが表現できる。だから新しいフィルムを創りたくて、ウズウズしているよ」
Text: Minako Norimatsu
パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
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