まるでカラー・セラピー、インドレスの色彩豊かなコレクション。

私事ですが、最近北マレ地区に引っ越しました。早速スウィーティーの散歩がてら寄ってみたのが新居から徒歩5分の、インドレス。友人のジャーナリスト&インフルエンサー、ソフィー・フォンタネルが度々投稿しているので、前から気になっていたブティックです。ガラス張りのファサードのむこうに広がるのは、色彩に溢れたボウタイブラウスやスリップドレスの一連。ちょうど上階のショールームでは21年FWコレクションの展示会をしていると言うので、のぞいてみました。
案内してくれたのは、ブランドのファウンダー&デザイナーのヴィス・シュルテです。オランダ出身の彼女はベルギー・アントワープのロイヤル・アカデミーでファッションを学んだ後、パリでカステルバジャックや故高田賢三氏に師事。そしてトートバッグのブランドを立ち上げたのは、もう20年も前だとか。後にインドレスには自然とウエアが加わり、豊かで微妙なカラーパレットをコアとしたコレクションへと発展したのです。ブラウス、ワイドパンツ、イージードレス、パーカ、ステンカラーコートなどエッセンシャル・アイテムから成るインドレスのワードローブでは、フェミニン&マスキュリン、そしてグラマラス&トラディショナルがちょうどいい塩梅に融合しています。シルクやカシミア、ツイードなど素材にもこだわるから、着心地の良さは言うまでもありません。

ブティックでの展示からコミュニケーション用のビジュアルまで、インドレスに一貫するのは、色への感受性を示唆するアートディレクション。まず、色を愛するデザイナーとしては当然過ぎるかもしれませんが、ブティックとショールームの至るところには、鮮やか色の花瓶に生けられた花束が。ちなみに、花のコサージュはインドレスの定番小物の一つです。
またヴィスが色のインスピレーションを汲み取るジャンルの一つに、料理があります。だから秋冬のカタログは著名シェフ、ヤニック・アレノとのコラボレーション。彼がシェフを務める3つ星レストラン、ルドワイヨン(コロナ禍で閉鎖中)をロケーションに、ヴィスは幾つかの特定な色から想起される料理を撮影用に依頼しました。
そして特筆すべきは彼女のパートナー、フレデリック・グラフがディレクションを手がける、毎シーズンのイメージ・フィルム。21年春夏版は、色に関する想像力を一段と掻き立てます。「Color is a beautiful thing」と題された、動画ルックブック的な6分に渡るフィルムでは、カラフルなルックの数々を故意にモノクロで撮影。アコースティックギターを伴うメランコリックな歌をバックに、英語、フランス語、オランダ語のナレーションで各ルックの色の描写が入ります。コンセプチュアルながらなんとも肩の力が抜けていて押し付けがましくない、それでいてなるほど!と思わせるフィルム。ルックブックやインスタグラムでのカラー写真と合わせてぜひ見てみて下さい。

Indress 74, rue Charlot 75003 Paris

Text : Minako Norimatsu

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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