作者の宮﨑駿はフランスの雑誌「M le Monde」の表紙になったことがあり、同アニメーションは『Le Voyage de Chihiro』の名でフランスでも大ヒットしましたから、前評判が高かったのは言うまでもありません。アマゾナ、ハンモック、パズル、フラメンコと言った定番バッグからTシャツ、シャツ、フーディ、カーディガン、キュロットなどのウエアまで、今回発表されたロエベ製品には、千尋を始めハク、カオナシ、湯婆婆(ゆばーば)、ススワタリ、アオガエル、オオトリさまら、おなじみのキャラクターが配されています。その手法はシンプルなプリントからジャカード織り、刺繍、アップリケ、果てはレザーのマーケトリーまで、とロエベならではのクラフツマンシップ。
ロエベ x 『千と千尋の神隠し』の製品は世界共通ですが、実はこの機会に、パリでしか手に入らないものがあります。それは、2021年8月31日の投稿でご紹介した“食のクリエイション・スタジオ”、バルボステの創作フード。ポップアップストアの中央に設置されたカウンターでは、この機に特別にデザインされたスイーツが販売されています。リサーチに熱心なバルボステのシャルロット・シットボンが、この一つ前のプロジェクトのためにインスタグラム上でスカウトしたのが、若手プロダクト・デザイナーのチボー・べー(Thibault Baes)。今回も技術面で大事な役割を果たしたのは、チボーです。バルボステの定番である琥珀糖を、『千と千尋の神隠し』で度々現れたステンドグラスに似た形で表現したいと言うシャルロットの願いを叶えるために、彼は3Dプリンターによる流し型を考案しました。よくデザイナーが、パタンナーなど技術スタッフからインスパイアされると言う話を聞きますが、これもまさしく、クリエイションとテクノロジーの相乗効果だと言えるでしょう。そしてステンドグラスの鮮やかな色は、オレンジ・ブロッサム、マリーゴールド、ラヴェンダーなどのエッセンシャル・オイルで表現。シャルロットのアイディアを食べ物に昇華させるのは、パートナーの金子さやかさんです。また、バルボステの看板アイテムであるカスタマイズ・フォーチュンクッキーには、千尋の同朋キャラクターを、食用カラービーズで描きました。他にもススワタリの大好物である金平糖、一枚一枚繊細に装飾された花びら型のサブレ、そしてハイビスカスまたは玄米茶のドリンク、まるでオブジェのように型作られたモチ、などなど。こうしてロエベとバルボステのおかげで、『千と千尋の神隠し』の世界は味覚にも落とし込まれたのでした。
Le Bon Marché にて2月6日まで。24, rue de Sèvres 75007 Paris