人生を謳歌するためのファッション。プッチの“新しい旅”。

プッチは、ナポリ生まれのエミリオ・プッチ侯爵がリゾート・ウエアを主体として1947年にフィレンツェで設立したブランド。その後デイリーウエアやイヴニングも発展させ、60-70年代にはカラフルなサイケデリック・プリントで、一時代を築きました。彼の没後、紆余曲折を経ながらプレタポルテのメゾンとしての道を歩んできたプッチの新たなアーティスティック・ディレクターは、カミーユ・ミチェリ。これまでディオールやルイ ヴィトンのコスチューム・ジュエリーを手がけて来た、イタリア系のパリジェンヌです。
彼女はプッチのアイコニックなプリントを拡大・縮小、また手描きで改め、楽しさや大胆さといったメゾンのDNAをモダンに再解釈。新生プッチの初コレクションは、“ラ・グロッタ・アズーラ(青の洞窟)”と名づけられました。カミーユ言うところの“新しい旅”への出発のお祝いは、南イタリアのパラダイス、カプリ島で。エミリオ・プッチ自身が初めてブティックをオープンした、プッチゆかりの地です。展開はSee now buy now方式で、毎月ドロップ。入荷先はプッチ店とメゾンのe-shopのほか、マルチブランド・オンラインショップのマイテレーザ(mytheresa)。ここでは、4月最後の週末に開かれたお披露目イベントの、一部始終をお届けしましょう。

Day 1
カプリ中心地へのアクセスは、ちょっとだけ複雑です。パリからだと、まずエアでナポリへ2時間。空港からナポリ港へ移動し、対岸のカプリ港まで、高速ボートで40分。フニキュラーで急な坂をスルッと登り、やっと街のヘソである広場へ。1日目の午後、ホテル・キジサーナには各地からのジャーナリスト、インフルエンサー、そしてカミーユの家族や友人たち総勢150人余りが続々と到着しました。ホテルでウェルカム・キットを受け取りリラックスした後、最初のアポイントメントは夕方、広場にあるバー・ティベリオで。島時間が流れるここではプログラム上の定刻は全く無視され、アペリティフが延々と続きます。島風が吹き初めて少し肌寒くなるとやっと、ゲストたちはディナー会場のレストラン、イル・ジェラニオへ移動。黄昏時の光に、石畳の坂道をそぞろ歩きするゲストたちがまとうプッチの極彩色が浮かび上がり、それは美しい行列でした。ディナーはカミーユの挨拶に始まり、とにかくおしゃべりと、笑いと。最後は皆が民族音楽の楽団にジョイントし、セレブレーションの第一夜は興奮のうちに幕を閉じました。

Day2
“セルフ・ケア”を信条に毎日モーニング・ヨガを欠かさないと言うカミーユの発案で、2日目は任意のヨガ・クラスからスタート。彼女お抱えのヨギが手ほどいてくれたのは、体の軸を整えるストレッチです。参加者たちのユニフォームは、もちろんプッチ。抜けるように青い海を眺めつつ、鮮やかなプッチ・プリントに身を包んでのセッションでは、最高の環境と身を包む色が、エクササイズの効果を高めてくれたかもしれません。
ヨガの後は、待望のブティックへ。1stドロップの初日とあって、小さなブティックは買い物客で溢れています。私はその間、路上に設置されたブースで、プッチのショップ・スタッフによるスカーフの巻き方レッスンを楽しみました。こうして充実した午前中を終え、そろそろランチ会場へと向かいます。フニキュラーで坂を下り、港とレストランのあるビーチとを行き来するシャトル・ボートに乗り込むと、船内にはプッチのクッションやパレオが満載。ゲストたちの高揚ぶりは言うまでもありません。またティベリオ・ビーチに近づくと最初のサプライズは、岩場に座ったプッチ着用のモデルたちでした。さらにずらりと並んだデッキチェアーに寝そべったモデルたちのルックは、色とりどりのスイムウエア。言わば”生きるタブロー”を囲んで、撮影会が始まりました。その後はアペリティフのグラスを手にし、テーブルにつくまで、約1時間。ここでも時間の流れは緩やかなのです。オマール・リゾットの美味しさに、ブラタ・チーズの大きさに驚いていると、皆が食べ終わらないうちに、向こうのテーブルでは歌い出す人、踊り出す人……。シンプルな会食は、またしてもパーティに。

その後は三々五々ビーチを後にし、束の間の自由時間。程なくして、今度は夜のパーティが始まります。広場から少し離れたところにあるヴィラ・ベルジトは、垂れ幕のように飾ったプッチのスカーフが目印。ゲストのうちモデルやインフルエンサーたちは皆プッチを纏っているので、ここも新作を間近で見られる好機です。会場ではプッチ・クッションに埋まってパスタを食するもよし、庭を散歩するもよし。果てはタロット占いにはまる、バックギャモンに興じる……と楽しみ方は三者三様。とは言え夜が更けてくれると、全員がダンスフロアへ!こうして、会場はまさしくプッチ色に染まったのでした。

Day3
パーティ翌日。プッチ流ドルチェ・ヴィータを体験したゲストたちはカラフルな思い出をお土産に、三々五々カプリを後にしました。旅の終わりに感じがちな哀愁は影も形もありません。カミーユの引率によるプッチの“新しい旅”は始まったばかりですから。

新作はエミリオ・プッチ 伊勢丹新宿店、日本橋三越、阪急梅田にて。 Pucci.commytheresa.comでは日本からもオーダー可。
カミーユ・ミチェリのインタビューは後日本誌にて掲載予定。お楽しみに。

Text: Minako Norimatsu

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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