プラチナ・ジュビリーに湧くロンドン、最新アドレス

今年は言わずと知れた、エリザベス女王の即位70周年。ロンドンでは6月2日、いよいよプラチナ・ジュビリー記念パレードが開かれます。その後もイギリスは今年いっぱいお祝いムード。そこで今回はこの機に行ってみたい、ロンドン中心地のホットスポットをご紹介しましょう。

まずは、昨年秋コヴェント・ガーデンにオープンした ザ・ロンドナー。アートに溢れたモダンなデザインで、巨大な規模であることから「スーパー・ブティック・ホテル」という新しいカテゴリーを生み出した、5つ星ホテルです。デザインは、最近ではパリの百貨店ラ・サマリテーヌを手がけたことでも知られる建築家デュオ、ヤブ・プッシェルバーグ。 16フロアにはペントハウスを含む350部屋もの客室だけでなく、3つの宿泊客専用バー&カフェ、広々としたプールやヘアサロン、ネイルバーに加え、巨大なボールルームやイベントルームなどのエンターテインメント・スペースが広がります。レストランだけの利用なら、アートギャラリー然とした一階のシャンペン・バー、ザ・ステージ、樽からカウンターまで全体が銅で、近未来的なビヤホール、ジョシュアズ・タヴァーン、そしてルーフトップのパノラマ・ビューが楽しめる居酒屋、8 アット・ザ・ロンドナーを試してみたいところ。

リラクゼーションなら、アエレ・エインシエント・バスへ。古代ローマ・ギリシャ時代のお風呂をイメージした内装は、石造りの壁やアーチ型が際立ちます。キャンドル風ライトに灯された複数のプールは、36度または40度のホット・バス、勇気があれば一瞬でも浸かりたい14度または10度のコールド・バス、そしてジャクジー。また塩分を高くしたソルト・バスに手足を広げて数分浮いたら、プールサイドにあるピラミッド型に積まれたヒマラヤ・ソルトの山から適量をとって、スクラブ&シャワーを。合間には、蒸気サウナもいいでしょう。施術では、アルガン・オイルを使ってのマッサージのほか、ギリシャにちなんでか赤ワインのバス、という特別メニューも。アクア・スパや温泉に慣れていても、アエレの洗練された作りとほの暗いライティング、そして何よりもプール周りでアドバイスをしてくれる多くのスタッフのきめ細やかなサービスには、感激するでしょう。

話題のレストランは、元チルターン・ファイアーハウスの経営陣の一人による、ルイ。店名は、フランスの太陽王ルイ14世とトランペット奏者のルイ・アーム・ストロングという、二人の全く異なるルイへのオマージュだとか。だから料理もインテリアも、アメリカ・ニュー・オリンズとフランスという思いがけないハイブリッド。ジャズを聞きながら食せるのは、洗練されたクレオール料理のほか、オイスターやロブスターまで、最高のクオリティのシーフードです。華やいだ雰囲気で、着飾った客層に欠かないルイはセレブにも人気で、2月にはリアーナがここをバースデー・パーティの会場に選んだそう。

ちょっと川方面に向かうと、サマセットハウスの近くには隠れ家的ブックショップ、レフェレンス・ポイントが。品揃えは戦後から現在までのアート、建築、デザイン、ファッション、カルチャーまで。どれも前衛的なレアな本ばかりです。特に探し物がある場合は、事前に伝えたらリサーチ&取り寄せもしてくれるとか。店内の一角をジャックしているセコンド・ストアが提案するのは、1980-90年代のファッションのカタログや雑誌で、ミッドセンチュリーの家具を配したコーナーで閲覧も可能。定期的にフィルムの上映会や詩の朗読会、パーティも開かれます。つまりここは単なる本屋ではなく、興味をシェアする人たちの交流の場なのです。

一方メイフェアでは、オンラインショップのショールーム、マッチズファッションの隣にある、ファイン・ジュエリーのジェシカ・マコーマックをお見逃しなく。19世紀のタウンハウスには着想源のアンティークをモダンに再解釈したジェシカのコレクションはもちろん、アンティークの家具やオブジェ、そしてビースポークのジュエリーボックスも。この先には、セレクトショップの草分け、しばらく閉まっていたブラウンズが住所も新たに、フェイシャル・ルームやカフェも備えてオープンしています。

最後に特筆したいのは、テイト・モダン美術館で開催中の「国境を越えたシュルレアリズム展(Surrealism Beyohd Borders)」(〜8/29)。昨年ニューヨークのメトロポリタン美術館で開かれ、今年2月にロンドンにやってきた本展は超現実主義を、1920年代にヨーロッパで発展したムーブメントより、時代的にも地域的にももっと広義に捉えたキュレーション。選出は、メキシコ、エジプト、ブラジル、日本などにも広げ、反戦、反人種差別、など社会的意味を含んだアート作品にも及んでいます。日本が誇る古賀春江の「海」(1929年)も出品。

ファッションからウェルネス、カルチャーまで。ロンドンはアトラクションに事欠きません。

 Text: Minako Norimatsu

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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