2022.08.31

20周年おめでとう！　ベルリンのコンセプトストア、アンドレアス・ムルクディス

KVADRAT / RAF SIMONS 「シェイカー・システム」（ソファを除く）より。右：ピンクの組み合わせ例。　左：右上から時計回りにレザーを合わせたトートバッグ、レザーストラップとアクセサリーケース、レザーストラップとマガジンホルダー、レザー枠のミラー兼トレイ。Photos : Courtesy of Kvadrat

KVADRAT / RAF SIMONS 「シェイカー・システム」（ソファを除く）より、黒の組み合わせ例。ペグレール（細長い軌条）にパーツを取り付けて、好きなように構成できるモジュラー式。キャップやクッション、キーチェーンも。Photo : Courtesy of Kvadrat

KVADRAT / RAF SIMONS 「シェイカー・システム」より、オフホワイトのアイテム。右：レザーフレームの鏡は、裏返すとVidar地を貼ったトレイに、というツーウェイ。　左：ベッドスローはダブルフェイス・ウール。Photos : Courtesy of Kvadrat

Endyma / Helmut Lang Archivesより。右：樹脂加工をしたカーゴ・カーコート（2000年春夏）。　左：ラングのシグネチャー、ハーネス（胴体固定用ベルト）をつけた同コートの内側。Photos: Courtesy of Endyma

Endyma / Helmut Lang Archivesより。右：玉虫色コーティングのメッシュにコットンのロングタンクトップを重ねた、アシメトリーのドレス（2004年春夏）。　左：袖に切り込みを入れた、ミリタリーTシャツ（1997年秋冬）。Photos: Courtesy of Endyma

Endyma / Helmut Lang Archivesより。右：２重レンズ、チタン・フレームのサングラス（1999年春夏）　左：コレクターズ・アイテム！　ネオプレンと工業用ゴムのストラップ、と素材使いが斬新なサンダル（2003年春夏）。Photos: Courtesy of Endyma

アンドレアス・ムルクディスのメインストアは、中庭を入って右手にある。右：同店では、ドリス・ヴァン・ノッテンのビューティ・ラインのローンチも催された。　左：アートギャラリー然とした、ファッションのディスプレイ。Photos : Minako Norimatsu

本店向かい、98番地には、アンドレアス・ムルクディスの家具ギャラリーが。右：ガラスを使ったe15のフロアライト。左：ベッドはe15、抽象画はノルウェーのアーチスト、オラフ・クリストファー・イェンセンの作。Photos : Minako Norimatsu

この夏、久々にベルリンに行ってきました！　５年前、ビルケンシュトックの数都市巡回型期間限定ストアBox #1のキックオフ・イベントに参加して以来です。コラボレーション・シリーズのお披露目を兼ねた同イベントの会場は、ベルリンきってのコンセプトストア、アンドレアス・ムルクディス。この機会にはファウンダー／オーナーのアンドレアスにインタビューもできて、貴重な体験でした（2017年7月20日の記事で紹介）。かれこれ15年ほど前、初のベルリン旅行の際には、まだミッテ区（元東ドイツ）にあった彼の最初の店舗にも行ったことがあったので、新店舗のランクアップに感動したのを覚えています。そして今回、彼と親しい現地の友人の取り計らいで、アンドレアスに再会できたのです。元々は新聞社の紙倉庫だったという巨大な白のスペースには、今でも変わらずウェア、小物、ビューティプロダクツが整然と並び、その様相はまるで美術館。拡大された店舗の右奥には、家具、オブジェ、カーペット、ランプなどホームウェアも並んでいます。セリーヌ、ジル・サンダー、ザ・ロウなどのハイブランドから、アイザック・レイナのクラフト感が高いレザーグッズ、アムステルダムのエクストリーム・カシミアによるファンキーなニットまで、セレクトににじみ出るのは、マーケティング目線よりもアンドレアスの個人的な価値観。彼はクリエイティブなデザイナーはもちろん、クオリティの高いオーセンティックなブランドも好きで、一度買い始めたら長い付き合いを目指すそう。そしてメインストアの向かいのギャラリーは現在インテリア専門のDas Hausとして、ドイツのインテリア・ブランドe15の家具にアートを配しています。単なるショップとしてではなく、ベルリンのアートとモードのシーンを牽引する場所としてアイコニックな存在になったアンドレアス・ムルクディスは、今年創立20周年。この秋からは様々なイベントが予定されているとか。

皮切りは、デンマークのインテリア生地ブランド、クヴァドラ（Kvadrat）とラフ・シモンズによる「シェーカー・システム」のローンチ。両者のコラボレーション歴はすでに８年余りになるそうですが、私が初めて見たのは2019年のミラノサローネ国際家具見本市でのプレゼンテーションにて（2019年4月25日の投稿で紹介）。まるで点描画のようなファブリックのクッションや、素朴感が拭われてコンテンポラリーに仕上がったコーデュロイで覆ったヴィンテージの家具の一連に目を見張ったものです。それらは主にファブリックの活用例でしたが、カプセル・コレクションとしてのホームウェアの展開は、今回が初めて。元々インダストリアル・デザイナーだったラフは、シェイカーのシンプルで賢いインテリア・スタイルにインスパイアされたとか。玄関先に混沌とした状態で置きがちな日用品をすっきりと、まるでユーティリティウェアのように効率よく、ディスプレイを兼ねてオーガナイズするというコンセプトです。いずれもピンク、オフホワイト、黒、またはダークグリーンの単色でまとめ、素材はクヴァドラとラフの共同開発によるウールとナイロンのVidar 4。Vidarはクヴァドラの定番ですが、ラフが再解釈した新色４色が、Vidar 4なのです。アイテムによってはレザーやカシミアも使われていますが、いずれもVidar 4とマッチングカラーで。コペンハーゲンにオープンした同コレクション専門のショップを含み世界で６件のみのエクスクルーシブな展開先の一つが、アンドレアス・ムルクディスと言うわけです。

もうひとつは、エンディマ（Endyma）によるヘルムート・ラングのアーカイブの期間限定展示・販売。エンディマは最近アテネからベルリンに拠点を移した、1990〜2000年代を中心としたモダン・ヴィンテージのショールーム＆ショップ。特に、1986〜2005年にコンセプチュアル・ミニマムなスタイルで一時代を築いたラングのコレクションは、世界一を誇るとか。エンディマではリサーチにも事欠かず、各アイテムには素材や年も詳しく表示されています。

このほか9月半ばからは、香りと音楽を関連させるコンセプチュアルなアルパ・ストゥディオズ（Arpa Studios）のフレグランスと、アーチスト、アニカ・イ（Anicka Yi）のスカルプチャーを対話させたインスタレーションがスタート。隣のイベントスペースではマーク・スタインメッツの写真展も同時展開。そして10月末にはモンクレールとのコラボを果たした「キラ」（Quira）の秋冬コレクションローンチに期待が高まります。元ジルサンダーやフィービー・ファイロ期のセリーヌのニット・デザイナー、ヴェロニカ・レオーニによるアヴァンギャルドなウィメンズウェアです。さらに今後は、ロックやリック・オウエンズなどとのコラボレーションによるエクスクルージブアイテムも発表の予定。アンドレアス・ムルクディスから目が離せなくなりました。

KVADRAT / RAF SIMONS Shaker Systemと Endyma / Helmut Lang Archivesは開催中〜9月10日まで。　Potsdamer Strasse （本店は81番地, イベントスペースは77番地） 10785 Berlin

Text: Minako Norimatsu