マリーエレーヌ ドゥ タイヤックに学ぶインド・ジャイプールの楽しみ・その2
前回はジャイプール中心地の洗練されたショッピングスポットをいくつかご紹介しましたが、今回はまず旧市街、ピンクシティへ。マリーエレーヌ ドゥ タイヤックによる“カラフルなカオス”という表現に頷けるエリアです。赤砂岩を素材としたサーモンピンクの建物が立ち並ぶ通りには、1799年建造の“風の宮殿”(Hawa Mahal)が。シティパレスと地下道で繋がったこの離宮で、かつて宮廷の女性たちは自らの姿を隠しつつ、窓から外の様子を覗いていたとか。
ハワーマハル・ロードは行き交う人々や途切れなくやって来る車、リクショーでごったがえして、道の横断もままなりません。ブロックプリントのウェアからハウスリネン、スリッパ、食器までさまざまな商店が立ち並ぶこの界隈で私が必ず寄るのは、手芸用品問屋、チェインスク・ナンドラル(Chainsukh Nandlal 109, Khanda Purohit)。靴を脱いでお座敷風の店頭で交渉しながらロット丸ごとのリボンや縁飾りを買い物カゴに入れると、まるで“仕入れ”をしている気分に。この店が面した広場の南にはジュエリー・バザールと言って、文字通りジュエリー店がひしめきます。ちなみにこの日は少し早起きして、この地区にやって来ました。なぜなら午前中のうちに散策を終えて花市場に来たかったから。風の宮殿の先、街の北端の門であるチャンディキタクサル(Chandi Ki Taksal Gate)周辺で毎日早朝〜お昼前まで開かれるこの市場に集まるのは、近隣の村からの花農家たち。混沌とした雰囲気ながら、バラやジャスミンの花輪で埋め尽くされた道には芳香が立ち込めてます。
世界遺産、アンベール城へ
翌日は小高い丘の上に建つ世界遺産、ラジャスタン丘陵城塞群へ。その一角、アンベール城(Amber Palace)は18世紀前半に首都が平地に移されるまでマハラジャの宮殿でした。いくつかの門や風光明媚な中庭を進むと、宮殿の細微に至る鏡の装飾が、圧巻。これまで見てきた、ムガール様式をアレンジしたモダン・インディアンのモチーフのルーツを解読できるから、ジャイプールでの数日目に訪れるにはもってこいのお勉強コースです。
足の踏み場もない、テキスタイル製品専門店
市の中心地に戻る途中、街の北東部で寄ったのは、サラシュトゥラ(Saurashtra)。アリババの洞窟みたいなここでは、布やハウスリネン、ウェア、カーペットまでのありとあらゆるテキスタイル製品、それもアンティークから新製品までが積み上げられ、床にも散らばっています。その煩雑ぶりはお目当てがあっても一歩足を踏み入れると何から見たらいいかと途方に暮れてしまうほど。物色で勢力を使い果たした後は、すぐ隣にある18世紀末の邸宅を改装したホテル、サモード・ハヴェリ(Samode Haveli)の静かな中庭でカクテルタイム。
老舗宝飾店と、アーユルヴェーダ・スキンケア
Mirza Ismail Road、通称MI ロードではまず、ジェム・パラス(The Gem Palace)へ。古くは16世紀より代々マハラジャ御用達ジュエラーを誇る家系が構える宝飾店です。私はジュエリーよりも、シルバー細工のハンドバッグに惹かれましたが。アーカイブスも見学した後は同じ道沿いにある小さな“街の洋品店”的なマングラム(Manglam)でクルタ(東南アジア特有のスタンドカラーのロングシャツ)を求め、スキンケアプロダクツ専門店、カマ(Kama)とフォレスト・エッセンシャル(Forest Essential)では、アーユルヴェーダ製品を買いだめ。いずれも、マリーエレーヌの愛用ブランドです。なんでも最近、この二つを含めたインドのコスメブランドが世界的に注目されていて、大手グループが目をつけているとか。
赤とピンクのワンダーランド、郊外のプチホテル
最後にとっておきの新アドレスを。市内から車で約30分弱の田舎にあるプチホテル、ヴィラ・パラディオ(Villa Palladio)です。内装は前回紹介したバー・パラディオと同じく、マリアンヌ・ウードゥジャンス。バーが青を基調としていたのに対し、ここはすべてが赤とピンク。客室はもちろんサロン、レストランからトイレまですべてのスペースでストライプとフローラル・モチーフが交錯するインパクトの強い内装と、真っ白な外壁、そして周りを取り囲む自然が不思議なハーモニーを成す、ワンダーランドです。詳しくは後日のホテル特集で。ちなみに彼女は、ラジャスタン地方の避暑地に新しいプロジェクトを準備中だそう。常に進化するジャイプール、また近いうちに来るのが楽しみです。
まだまだある、おすすめアドレス
●寺院
ビルラー寺院(Birla Mandir)と モティダングリ・ガネシャ寺院(Moti Dungri Temple of Lord Ganesha)
いずれも市内南部にある、ヒンドゥー教のお寺。前者は1988年と近代の建造。全てが真っ白な大理石でできていて、同じく大理石の像やステンドグラスが、ヒンドゥーの歴史を語ります。後者は厄除け・金運のパワーを持つ神聖なガネーシャ(頭部が象の神様)を祀る典型的なヒンドゥー教のお寺で、観光地というより市民の心の拠り所。二つはとても対照的ですぐ近くに位置するので、合わせて訪ねてみて。
●ホテル/カフェ/レストラン
ザ・ジョリ(The Johri)
ジョアリ・バザール・ロードからほんの一歩中に入ると、オープンしたての閑静なホテル&レストランが。19世紀の邸宅を改装しての洗練されたこの隠れ家では、客室は中庭に面した5部屋のスイートルームのみ。マリーエレーヌもお気に入りのレストランは創作ベジタリアン・ディッシュもオリジナルなカクテルも、驚きの美味しさです。市内の高級住宅街、Civil Linesにある28コーティ(28 Kothi)は姉妹店。
●ホテル/レストラン/ショップ
47 ジョブナー・バグ(47 Jobner Bagh)
ジュエリービジネスに携わっていたインド人一家が街のちょっとはずれで始めた、ジャイプールでは新しいタイプのゲストハウス。イタリアの建築家がデザインしたミニマルな建物にはアンティークの家具や写真が配され、小洒落た雰囲気です。地上階かルーフトップのレストランでサーブされるのは、オーナーの妻によるホームメイドの日替わりメニュー。エントランス脇には、オーナーの娘がアンティークや地元のテキスタイル製品を厳選してのショップも。
●レストラン
メラーキ・キッチン(Meraaki Kitchen)
ジャイプール出身の若い女性による、自家菜園の野菜を使ったヘルシー志向のカジュアルなレストラン。ファウンダーの国際的な経歴を生かし、メニューのレパートリーはインドだけでなくアジア全般に渡ります。1日中オープンで、テイクアウトも可。隣にはもう一件マリーエレーヌのお気に入りレストラン、カフェ・ホワイトセージ(Café White Sage)も。敷地内にある、地元の職人たちによるキッチングッズとテーブルウエアのショップ、エレメントリー(Ellementry)も一見の価値あり。
●レストラン&ショップ
ジャイプール・モダン(Jaipur Modern)
1940年代のバンガローを改装してのコンセプトストアには、インドのデザイナーによるクラフツマンシップが生かされたウェアやインテリアグッズが。カフェ&レストランはオーガニックなヘルシーフードがウリで、特にキヌアを使ったディッシュのバリエーションが豊富です。1日中オープンで、テイクアウトも可。
●ホテル/バー
ポロ・バー(Polo Bar)
大理石や木彫りの装飾が見事な最高級ヘリテージ・ホテル、 ランバーグ・パレス(Rambagh Palace)内にあるクラシック・バー。ホテル内にはガストロノミック・レストランも数軒。
●エクスカージョン
タージ・マハル(Taj Mahal)
インドで最も有名な名所と言えば、ムガル帝国第五代皇帝が、38歳の若さで死去した愛妃ムムターズ・マハルのために1653年に建設した、この墓廟。インド北部アグーラに位置し、ジャイプールから車(ハイヤー)で5時間半。朝早く出れば、日帰りも可能。
パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
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