【エンシェントグリークサンダルズ】で夏の足元は古代ギリシャ風に!
こだわりはクラフトと、ナチュラルダイレザー
エンシェントグリークサンダルズは、文字通り古代ギリシャを着想源として、この国に伝わる職人技術を生かしたサンダルのコレクション。クレタ島で靴工場を経営していた祖父を持つビジネスマンのニコラス・ミノグロウと、シューズデザイナーのクリスティーナ・マルティニが、2012年にローンチしました。二人の出会いは、2009年。
「彼とは、お互いの故郷であるギリシャの伝統的なサンダルを、より良いクオリティとモダンなデザインで、と言うアイデアをシェアしたの」と、クリスティーナは回想します。その後話し合いやリサーチを重ねて、2年後にクリスティーナの個人的な転機をきっかけにやっと、二人のプロジェクトは現実的に。彼女が妊娠したため、当時の仕事(ニコラ・ジェスキエール率いるバレンシアガでのシューズデザイン)を辞め、自身のリズムでものづくりに専念したいと思ったこと。そして彼女の夫が、祖母の出身地であるギリシャ北部のケルキラ島で祖父のオリーブオイル農場を継ぐことになり、夫妻がギリシャに戻ったことが理由です。
「ブランドのコンセプトとして想像したのは、架空の神話。クレタ島では神々たちが、腕利きの職人たちに魔法のパワーがあるサンダルを注文していた、と言う筋書きで」と、クリスティーナは笑います。ロゴには、オリンポス十二神の一人、ヘルメースが履いていたとされる翼のついたサンダルが描かれました。
そして2012年、ナチュラルカラーを中心としたレザーのフラットサンダルだけでスタートした初コレクションには6000足ものオーダーがつき、すぐに話題となりました。パリでの初の取扱店は、他でもないコレット(1997年から20年間世界のトレンドをリードしたコンセプトストア)。レザーの染色にはケミカルを一切使わず、世界各地で規模が縮小しつつあるクラフツマンシップを支える、というサステナブルでエシカルな一面も、時代の先取りだったと言えるでしょう。クリスティーナによれば、ギリシャのサンダルに特有な“手作り”を見分けるポイントは、ソールの側面のカットアウト。「靴の本体、つまり上の部分をソールに縫い付ける作業は、必然的に機械で行われます。でも穴に本体のパーツを差し込み、糊付けするギリシャのやり方は手作業で」。
コラボレーションからカプセルコレクションまで
ローンチ後の12年を通じて、やや厚みのあるソール、立体感のある本体、レーザーカット、細かいステッチなどをシンプルなデザインを基本に、技術面でもデザイン面でも発展を遂げてきたエンシェント・グリーク・サンダルズ。今年はまさに飛躍の年で、さまざまなプロジェクトを発表しています。皮切りは4月にローンチされた、カスタニエールとのコラボレーション。カスタニエールはスペインの伝統的なエスパドリーユのブランドで、ジュートを使ったソールに象徴されます。この企画ではサンダルの本体はエンシェント・グリーク・サンダルズでデザインと制作を、伝統的ソールを使っての組み立てはカスタニエールで、と言うプロセス。
また単独の企画としては、5月初旬から数回のドロップに分け、ヴィンテージを再解釈したデザインでPVCを素材としたジェリー・コレクションを発表。「私の祖母も、夏はこのタイプのサンダルを愛用していたの。ビーチでも街でも履けるし、オールマイティ」。と、クリスティーナ。ジェリーはオンラインショップ、アテネ本店はもちろん4月にオープンしたアテネ空港の免税店でも大人気で、ファーストドロップのバレリーナはもはやソールドアウトだそう。
またセレクトショップ、バイ・マリーのマルセイユ店では、取り扱い10周年を記念して、限定モデルをローンチしました。もう一つの限定モデルは、月末にアテネのセレクトショップ、ムッキー・ムーで始まるドーザのクリスティーナ・キムとのコラボレーション。これについては次回のムッキー・ムー×ドーザのイベントのレポートをお楽しみに。
ライフスタイルに見る、素朴なグリーク・スタイル
さらに、エンシェント・グリーク・サンダルズのエスプリをより象徴的に物語っているのが、インテリア・スタイル。コージーな家をイメージしてクリスティーナ自身が構想したアテネの旗艦店で壁を飾るのは、彼女が愛する北イタリアのカラフルな手織りタピストリーです。テーブルウエアは、コロナ禍にプロダクト・デザイナーとのコラボレーションによるカラフルなグラス一連でスタート。その後ギリシャの民芸品にインスパイアされ、手描きのセラミックやギリシャ彫刻を刺繍したテーブルリネンなども加わりました。昨年夏に夫が祖母宅を改装してオープンした、ビジットまたは宿泊もできるファームDr Kavvadiaのためにはレザーのボトルカバーやバスケットも加わり、ホームウエア・コレクションは少しずつ発展しています。
今後は靴職人を養成する専門学校の企画に関わる予定もあると言う、エンシェント・グリーク・サンダルズ。すべてのモデルは公式サイトで、定番(Icons)と2024SSコレクションと並んで日本からもオーダー可です。(価格は200€前後)
*日本での取り扱いはエディションにて
パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/