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クラフトウェアで知られる【ドーザ】による、白とゴールドの世界

ドーザは手作りの服や小物、ハウスウェアのプロジェクト

サステナブル&クラフトファッションの走り、ドーザ(Dosa)。今年40周年を迎えたドーザが、Shades on White / Whisper of Goldと題してギリシャのショップ、ムッキムー・アテネ(Mouki Mou Athens)をジャックしました! ドーザはファッションブランドというより、テキスタイルリサーチに基づく、手作りの服や小物、ハウスウェアのプロジェクト。韓国に生まれ、15歳でアメリカに移住、現在はロサンゼルスを拠点とするクリスティーナ・キム(Christina Kim)が、1984年に母のヴィヴィアンとともに設立しました。彼女は元々ワシントン大学でアート史を、イタリアではフレスコ画を学んだファインアートのアーティストですが、母が縫製を仕事とし、パタンナーの友人がいたことから、偶然服を作るようになったのだとか。ドーザの作品は自然素材を使い、染めから仕立て、ステッチまですべてが手作業。小さな頃から集めていたアンティークの素材をリサイクルすることも多々あります。また彼女は、飽きが来ず質が良くて、いつまでも着られるベーシック・アイテム(キャミソールやスリップドレス、シャツやブラウスなど)を、“スタンダードイッシュー”として展開しています。

ムッキムー・アテネはアテネの旧市街、アクロポリスの丘をのぞめるプラカ地区に昨年5月にオープンした、ファッションとライフスタイルのコンセプトストア。ギリシャ出身、ロンドン在住のファッション・エキスパート、マリア・レモス(Maria Lemos)が 2013年にロンドンにオープンしたブティックの姉妹店です。味のある服を好む彼女は元々ドーザのファンで、30年来の友人であるティナ・ラッコネン(Tiina Laakkonen)と長年ドーザ熱をシェアしていたとか。ティナは元モデル&スタイリストで、ニューヨーク州のハンプトンで昨年まで自身が内装から買い付けまでを手がけていた「ティナ・ザ・ストア」でも、ドーザを取り扱っていました。今回の企画も実はティナが発案し、3人のフレンドシップから生まれたものだとか。「コラボレーションをすると、新しいエネルギーが生まれるわ。私たちは子ども同士で遊ぶように楽しんで、ともに仕事しているの」と、アメリカから駆けつけたティナは語ります。

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ムッキムー・アテネのテラスにて。Shades on White / Whisper of Goldのために小さな余り生地をドット柄に配した作品は、ディスプレイのメインの要素

古代ギリシャのフィルターで異文化ミックス

Shades on White / Whisper of Goldの準備にあたって、クリスティーナは古代ギリシャへのイメージを膨らませました。「実はギリシャを訪れたのは、今回が初めて。でも小さな頃から叔父が寝がけに読んでくれたのがギリシャ神話だったから、もともと古代ギリシャにはとても興味があったのよ。ニューヨークでは、メトロポリタン美術館のキクラデス文化の部屋に何度行ったことか。それにギリシャのゴールドリーフの冠に惹かれるのは、韓国の伝統的な金の冠が大好きだからかも」。彼女はこんな風に、インスピレーションソースを語ってくれました。

とはいえ、アフガニスタンやシリアも含めていろいろな国のクラフツマンシップを取り入れつつ、各国で仕事の供給という倫理的な役割も果たしているドーザでは、Shades on White / Whisper of Goldでも“クロス・カルチャー”ぶりを発揮しています。ムッキムー・アテネのショーウィンドウに垂れるゴールドの簾は、メキシコで。オハカの紙細工協同組合の職人たちにより、近所で集めた枯れ葉の形を紙に移してワイヤーを組み込み、手作業でゴールドに色付けして作られました。最初の部屋にはこの制作過程を綴った写真やデッサン、材料や道具が展示されています。

 

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ムッキムー・アテネのショーウィンドーを飾った、ゴールドリーフのすだれ

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ゴールドリーフ制作の資料

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ゴールドリーフの、実際の枯れ葉をなぞって作った型紙

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ゴールドリーフ制作に使われた色鉛筆

古代ギリシャ風刺しゅうから、コラボレーションジュエリーまで

そして普段はデザイナーの服や小物が並ぶメインルームでは、あらゆるラックにドーザの作品が並びます。キクラデス諸島の大理石をイメージした白のコットンやシルクをベースに古代ギリシャの壺に見られる反復模様の刺しゅうを施したドレスからアンティークレースを施したドレスまで、いずれも手仕事が際立つアイテムばかり。またインド・ボンベイで、お寺でのお供えに使われた摘みたてのマリーゴールドとともに蒸し、ゴールドに呼応する黄色の花びらを一面にプリントしたシルクは、トップやパジャマパンツ、チュニックに仕立てられました。ちなみに使用済みの花びらは、その後肥料に。インドの北部からは、クリスティーナがクラウドと呼ぶ、まるで雲のように軽やかな大判ショールが到着しました。厳選されたカシミアにゴールドの糸を織りまぜたショールは、糸を紡ぐ段階から数えると一点の制作に3週間もかかるとか。さらにクリスティーナの友人たちとのコラボレーション、ピッパ・スモール(Pippa Small)によるクリスタルまたはダイヤモンドとK18ゴールドのジュエリーと、前回の投稿で紹介したクリスティーナ・マルティニによるエンシェントグリークサンダルズのサンダルが、ドーザのアイテムの数々を一層引き立てます。

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Shades on White / Whisper of Gold内観

 

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マリーゴールド・プリントのアイテム。

 

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ドレスのディテール。刺しゅうのパターンは、メトロポリタン美術館でのリサーチから生まれた

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右は“クラウド”カシミア・ショール。左は昨年ボローニャの音楽博物館での展覧会のために作った、楽器のモチーフを刺しゅうした布。Photo: Minako Norimatsu

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ピッパ・スモールのクリスタルとゴールドのジュエリー。Photo: Minako Norimatsu

 

 

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エンシェントグリークサンダルズによるゴールド・リーフ・サンダルのアップデート版

 

ムッキムーの最新ニュースは、ロンドン2号店のオープン

クリスティーナ、ティナ、マリアの3人はこの後ギリシャ南部のパトモス島でのプチバカンスへ向かいました。ギリシャ正教の聖地として、空港を設けず観光を制限していることで知られるオーセンティックなこの島には、マリアが3年前にオープンしたゲストハウス、パゴスタス(Pagostas)があるのです。一方私は市内のキクラデス美術館へと出向き、古代ギリシャの歴史を改めてお勉強。ムッキムー・アテネはドーザの作品の売り切れ伴い、次第に従来の展示に戻ります。

マリアはそもそも営業ディレクターとしてのキャリアが長く、22年前にはマルチブランドの常設ショールーム「レインボーウェーブ」をロンドンに開くとともに、毎シーズン各都市で同ショールームの合同展示会を開いています。常にアイデアに溢れ、人々を繋げることが大好きで精力的な彼女は、6月にミラノでの25SSの展示会を開いた後はロンドンに戻り、ムッキムー・ロンドン2号店をオープン。ユニセックスをコンセプトとした新店舗でも、ドーザの作品に出合えます。


Mouki Mou Athens

Diosgenous 15. Plaka, Athens 10556

Mouki Mou London

29, Chiltern Street, Marylebone, London W1U 7PL

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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