ヴァレンティノ・ガラヴァーニと彼のライフパートナー、ジャンカルロ・ジャンメッティによる財団が、ローマに壮大なスペースをオープンした。ここでは、初の展覧会を紹介する。

 

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ヴァレンティノ氏の財団で、赤のパワーを実感

ヴァレンティノ・ガラヴァーニと彼のライフパートナー、ジャンカルロ・ジャンメッティによる財団が、ローマに壮大なスペースをオープンした。ここでは、初の展覧会を紹介する。

 

ヴァレンティノ氏、その功績と引退後の取り組み

ミラノ近郊に生まれ、パリのサンディカ・クチュール校でファッションを学んだ、ヴァレンティノ・ガラヴァーニ。彼がジャン・デセ、ギ・ラロッシュで経験を積んだ後、26歳の若さでローマにて初コレクションを発表したのは、1959年のことだった。翌年出会ったジャンカルロ・ジャンメッティを生涯通じての公私共の伴侶に、オートクチュールとプレタポルテのエンパイアを築き上げた彼の功績は、語るまでもない。ジャッキー・ケネディやエリザベス・テーラーをはじめ多くのセレブリティたちに愛され、精力的にコレクションを発表する一方、彼は「夜」(ミケランジェロ・アントニオーニ監督、1961年)や「8 1/2」(フェデリコ・フェリーニ監督、1963年)など名作映画で衣装をデザイン。そのグラマラスな日々や情熱的な仕事ぶりは、ドキュメンタリー映画「Valentino: The Last Emperor(マット・ティルナウアー監督、2008年)」でアップテンポに編集されている。同映画のインタビュー・シーンで「私が美しいものを愛するのは、私のせいではありませんよ」と答えているのは、彼特有のユーモアの象徴。輝かしい50年余りのキャリアのピリオドとして、2008年のラスト・ショー、続くパリ・装飾芸術美術館での回顧展「Valentino: Themes and Variations」で、彼は見事に有終の美を飾った。その後もパートナーに支えられ、彼のパッションとエネルギーは美しいものを追求し続けている。2016年には、両氏の財団が発足。ブランド自体は2002年に売却されているので、現在のメゾン「ヴァレンティノ」と事業的には直接の関わりを持たない、パーソナルなプロジェクトだ。

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ヴァレンティノ・ガラヴァーニ(左)とジャンカルロ・ジャンメッティ。Photo : Courtesy of Fondazione Valentino Garavani & Giancarlo Giammmetti

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アトリエにて、若かりし頃のヴァレンティノ・ガラヴァーニ。Photo : Courtesy of Fondazione Valentino Garavani & Giancarlo Giammmetti

 

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2003-2004年秋冬オートクチュールのショーのフィナーレで、トップモデルたちに囲まれたヴァレンティノ・ガラヴァーニ。Photo : Courtesy of Fondazione Valentino Garavani & Giancarlo Giammmetti

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PM23、「Horizons/Red」展のエントランス。Photo: Courtesy of Fondazione Valentino Garavani & Giancarlo Giammmetti

 

ドキュメンタリー映画Valentino: The Last Emperor(マット・ティルナウアー監督、2008年)の予告編。

ヴァレンティノ氏の財団、初回の展示は赤がテーマ

ヴァレンティノ・ガラヴァーニ&ジャンカルロ・ジャンメッティ財団(以下FVG)は、二人が拠点とするローマで活動をスタート。文化と教育を振興することを目的とした、非営利団体だ。その慈善活動の一環として、2年前にはヴァレンティノ氏の故郷ヴォゲラで朽ち果てた劇場の、改装オープンにこぎつけた。同時に進行していたのは、ローマの中心地、ミニャレッリ広場に位置するパラッツォの改装工事。この5月に完成したスペースはPM23と名づけられ、アートとモードの展覧会「Horizons/Red」がオープンした。前述の回顧展でキュレーションを務めたパメラ・ゴルバンの監修による展示では、ヴァレンティノのアーカイブから彼のシグネチャー・カラーである「ヴァレンティノ・レッド」のドレス50点と、ファインアート、コンテンポラリーアートの名作を絡めている。30点のアート作品はいずれも赤を巡ったセレクトで、アンディ・ウォーホルからピカソ、ジェフ・クーンズ、マーク・ロスコ、ジャン=ミッシェル・バスキア、フランシス・ベーコン、ダミアン・ハースト、ルイーズ・ブルジョワ、サイ・トゥオンブリー、ゲルハルト・リヒターなど錚々たる名前が並ぶ。ローマに、新しい名所が誕生した。

 

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「Horizons/Red」展の出品作品、1981年春夏オートクチュールと2008年春夏オートクチュールのドレス。Photo: ©FVG Services 2024 ©Michele Colasuonno,2024

 

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「Horizons/Red」展の出品作品、ゲルハルト・リヒターの「ABSTRAKTES BILD」。 ©️GERHARD RICHTER

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「Horizons/Red」展示風景、ヴァレンティノ・レッドのドレスの一連。Photo: ©️Whatever Milan

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「Horizons/Red」展の出品作品、サイ・トゥオンブリーの「無題」。 ©️CY TWOMBLY

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「Horizons/Red」展の出品作品、1977-78年秋冬プレタポルテのドレスのディテール。Photo: ©FVG Services 2024 ©Michele Colasuonno,2024

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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