2026-27FWメンズと26Fallコレクションから、ベスト展示会2つと若手のランウェイ、そして赤のアイテムをピックアップ。
2026-27FWメンズと26Fallコレクションから、ベスト展示会2つと若手のランウェイ、そして赤のアイテムをピックアップ。
【CELINE(セリーヌ)】マイケル・ライダーいわく“必要なものはすべてここに”
マイケル・ライダーによる”新生”セリーヌが年明けから店頭に並び出し、私たちを狂気させたアイテムの数々がやっと買える、着られるものになった。そして1月には彼の3回目のメンズ・コレクション(2026FW)が、今度はショーではなく展示会形式で発表された。シンプルに今着たい、そして長く愛せるいい服、と言う彼のポリシーは変わらない。シーズンごとに新しいトレンドを打ち出すわけでも、劇的なストーリーテリングをするわけでもない。それなのに彼が言うところの“エッジの効いたクラシック”は、見れば見るほど新しい。レザーのエルボウパッチを配したニット、白のトータルルック、シャツのバリエーション……どれも目新しくはないが、よく見るとデニムジャケットは襟無し、ネクタイの先端はスクエア、とありそうでなかったものばかり。ヴィヴィエンヌ通りの本社では、セーターやジーンズを積み上げたトーテム、色グラデーションにS字型にならべた靴とソックスが、壁に吊るしたスカーフやルックと共存。今をときめくアーティストの作品ではなく、着るものを素材としたインスタレーションに、マイケルがストレートに服と向き合う姿勢が感じられた。
スカーレット・レッドは、この秋最もホットな色。ネクタイのシルクとエルボウパッチのレザー、と同じ赤でも異素材を交錯させると、ニュアンスが広がる。そしてこの秋、ベルトは細め。Photo: Zoe Ghertner
ハイネックのアンダーシャツは、すっかり定番。デニムジャケットも、襟がないと定番と比べてこんなに表情が違う。Photo: Zoe Ghertner
【BALENCIAGA(バレンシアガ)】ストリート・クチュールの新しい形
バレンシアガはウィメンズのFall2026と同時に、ピエールパオロ・ピッチョーリによるバレンシアガ・マンの初コレクションを本社ショールームで展示。本コレクションでは、スポーツとテクノロジーまたはサルトリアル、ストリートとフォーマル、と言った相反するスタイルをクロスオーバーさせた。一方では、メゾンの歴代のデザイナーがファッション史に残したシルエットを再解釈。ミニマルながら構築的なシルエットと意外性のある色合わせから成るピッチョーリのモダン・クチュールは、新境地を迎えた。結果としてピーコートや上半身を包み込むようなレザーのジャケットはクリストバル・バレンシアガの1960年代の代表作を思わせる。またテックウェアは、セカンドスキンとしてボディラインを露わにする。吸湿性、通気性、抗菌性に優れたパフォーマンス素材であるProBodyのボディスーツやレギンスの一連はもはやアスレジャーではなく、洗練されたワードローブの一部となった。そして本コレクションでは、マノロ・ブラニクとのコラボレーションによるフットウェアの一連「BALENCIAGA | MANOLO BLAHNIK」 を発表。ピッチョーリ自身がマノロのアーカイブズから選んだミュールやスリングバックには、クリストバル・バレンシアガのビジューからインスパイアされた装飾も施された。
前回の記事で取り上げたように、ネクタイのトレンドはまだまだ続く。でもメンズライクではなくこんなふうにボディフィットなアイテムとの組み合わせは新鮮。Photo: Courtesy of Balenciaga
まさにスポーツクチュール、と言えるルック。シルクサテンのスリングバックはBALENCIAGA I MANOLO BLAHNIK、レギンスはProBodyのパフォーマンス素材を使ったテックウェア。Photo: Courtesy of Balenciaga
クリストバル・バレンシアガのアイコニックなジャケットを想起させるピーコート。Photo: Courtesy of Balenciaga
今回初、ピエールパオロ・ピッチョーリによるバレンシアガ・メンより、生前のクリストバル・バレンシアガ自身の装いを思わせるジャケット。モデルはフランスの若手俳優、バンジャマン・ヴワザン。最近はフランス映画『l'Étranger(2025)』で主役を演じて話題に。Photo: Courtesy of Balenciaga
赤が際立った若手のランウェイ。【SSSTEIN(シュタイン)】と【SONIA CARRASCO(ソニア・カラスコ)】
もう一人の日本のニューホープであるシュタインは、パリで3度目のランウェイを発表した後、LVMH賞のセミファイナリストに選出されたことを祝ったばかり。独学でカッティングや素材を学んだデザイナーの浅川喜一朗は今回、日常のちょっとした喜びをクリエイションの源としたとか。間接的にインスピレーションとなったのは、紅葉の色の変化や公園で見かけた老夫婦の後ろ姿、そしてファッション・フォトグラファーとして知られるジェイミー・ホースワークスの風景写真。スタイル的な着眼点と、情緒的で人間的な視点の融合が、彼のクリエイションを豊かにしたのだ。空気を含むように織って軽やかに仕上げたカシミヤのフランネルや起毛ニット、縮絨ウールと言った素材へのこだわりを語り出したら止まらない、浅川。今回はダークカラーの中に、スカーレット・レッドを差し色とした。シグネチャーである多機能のテーラード・ピースもマイナーチェンジで進化させて継続するほか、今回は一枚で2つのシルエットを楽しめるロングスカートなど、ウィメンズ・アイテムも追加。今後はウィメンズ・ラインも発表される予定だ。
やや縮絨させて光沢を出したダブルフェイスのウールカシミアのブルゾンは、表側にステッチが見えないように特別な職人技術で仕立てた。Photo: ©encens
ソフト・テーラードの赤のコートはやや起毛させた素材を使って、ふんわりと軽やか。Photo: ©encens
そして、今回初めてPFW公式カレンダーの一環でショーを開いた、スペインのソニア カラスコ。彼女はファッションスクール、IEDマドリードに学び、アレキサンダー・マックイーンやフィービー・ファイロ期のセリーヌで経験を積んだ後、2020年にブランドを設立した。クラフツマンシップに根差し、未完成な服で工程プロセスを提示するというコンセプトを貫いている。パリと銀座のドーバーストリートマーケットにも入荷されていて、日本でも人気上昇中だ。彼女が素材、特に糸にこだわることから、今回のショーのランウェイの仕切りにずらりと並んだのは、昔ながらの織機。メンズ、ウィメンズ混合のショーでは、裏返してサルトリアルな構造の内側を見せたディテール、仮縫いのように見えるハンドステッチ、フエルトのつけ襟などで服の構造を強調した。またブラウン、グレー、ネイビー、オフホワイトと言ったカラーパレットの中では、赤をアクセントカラーに。
赤のアイテムとネクタイ、二つのトレンドが入ったルック。ニットにもジャケットにも、仮縫いのようなステッチが施されている。Photos: Courtesy of Sonia Carrasco
複雑にレイヤーした襟元と足元のバランス感が絶妙。足元だけ赤、という粋な色使いにも注目。Photos: Courtesy of Sonia Carrasco
赤は小物で取り入れる。【HERMÈS(エルメス)】と【AURALEE(オーラリー)】、そして【RUBIROSA’S(ルビローサ)】
単色濃淡でまとめたルックに欠かせないのが、赤のバッグ、または靴。エルメスではメゾンのアイコニックなバッグの一つ、プリュムを赤で。オーラリーからも赤のハンドバッグが。そして、シーズンごとの新コレクションを発表しているわけではないけれど、特別にここで言及したいのは、ルビローサの赤のソフト・モカシン。ルビローサはオーセンティックでハイクオリティなシャツとニット、パジャマをカラーバリエーション豊富に揃えた、サンジェルマンの小さなブティック。詳しくは来月のミナコラムで。
エルメスの26-27FWコレクションで打ち出されたバッグは、プリュム。それも、赤! クラシックなグレーの濃淡のルックも、この色で一気にアップビートに。Photo: ©Filippo Fior
前回の記事で紹介したように柔らかさ、軽やかさを追求したオーラリーのベージュのルックにも、赤のハンドバッグが映える。Photo: Courtesy of Auralee
パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/