デビュー・コレクションが盛りだくさんだった2026春夏コレクションに続き、モード・シーンの真の転換期と言われた今シーズン。ハイエンドメゾンから若手のショー、イベントなどのニュースまで、2026秋冬のハイライトを3回に渡ってお届けします。
デビュー・コレクションが盛りだくさんだった2026春夏コレクションに続き、モード・シーンの真の転換期と言われた今シーズン。ハイエンドメゾンから若手のショー、イベントなどのニュースまで、2026秋冬のハイライトを3回に渡ってお届けします。
ウェルカムからアデューまで、PFW最新事情
通常よりショーが少なく、少しイレギュラーなシーズンとなった、2026FWパリファッションウィーク(以下PFW)。例を挙げると、トム ブラウンは2月初旬にサンフランシスコでのGQボールで、またヴァレンティノはファッションマンス終了翌々日にお膝元のローマで……と、パリではなく特別な機会に最新コレクションを発表した。メゾン マルジェラも来たる4月1日に予定されている中国各地でのイベントを鑑みてか、今回はPFWに参加せず。またメリル ロッゲは、ミラノで発表されたマルニでのデビューコレクションに集中するため、自身のブランドのパリでのショーは6月のメンズの時期に見送っている。一方メンズとウィメンズで年に4度もパリでショーを開いているサカイは今回“調整”を図ってルックブックでの発表に切り替えた。またコペルニは、ブランド再建のためお休みを発表。
ジョナサン・アンダーソンによるディオール、マチュー・ブレイジーによるシャネルは、それぞれ2回目のプレタポルテを発表し、メゾンの新しいヴィジョンを揺るぎないものにした。シャネルにおいてはショーに先駆けてマチューによる初コレクションが旗艦店に入荷し、“インド人モデル、バヴィタがアンバサダーに就任”と言うニュースも、フィーバーに拍車をかけた。またピエールパオロ・ピッチョーリによるバレンシアガは1月に展示会形式で見せた2026ファール・コレクションで初めてバレンシアガ・マンを取り入れたのに続けて、今回のランウェイでもメンズをミックス。そしてロエベからも、ジャック・マクローとラザロ・ヘルナンデスのデュオがクリエイションを司るようになって初めてのメンズがローンチされた。彼ら自身にとっても初となったメンズはウィメンズと同様、軽快でシャープで、クラフツマンシップの探求とモダンさを交錯させたルックの数々に溢れた。小規模ながら2度目のコレクションを発表したのは、デュラン・ランティックによるジャンポール・ゴルチエと、マーク・トマスによるカルヴェン。そして今回唯一の刷新は、アントナン・トロンを新アーティスティック・ディレクターに迎えた、バルマンだ。
グランパレで開かれた、シャネルのショーのフィナーレ。Photo: Courtesy of Chanel
チュイルリー公園内に設置した仮設会場では、モデルたちはハスの池の周りを歩いた。Photo: Valentin Lecron
最後に特筆すべきは、ピーター・ミュリエの“スワンソング”(最後のパフォーマンス)。フロントロウには自身のメンターであるラフ・シモンズや盟友マチュー・ブレイジーを迎え、北島敬三によるアライアのアトリエスタッフのポートレートをスクリーンに投影し(後に写真集『Alaïa Index No. 0』として出版)、アライアでの有終の美を飾った。今後私たちは、ミラノのヴェルサーチェで、彼の展開を追うことになる。そしてモード界の最新ニュースは、ザラとジョン・ガリアーノのパートナーシップ! 彼が創造性とクチュリエとしての技術を生かしてザラのアーカイブス・ピースを再解釈し、ハイクオリティの素材で仕上げるコレクションは、来る9月から2年間に渡ってシーズンごとに発表されるそう。9月のファッションウィーク中には何か関連イベントがあるのか? 次の展開が楽しみなところだ。
ベストは【CELINE(セリーヌ)】!モードの新しい指標
昨年7月のデビュー・ショーから3回目を迎えた、マイケル ライダーによる新生セリーヌのコレクションは、誰もが認めるところの、ベストオブザベスト。昨年のインタビューで感じ取った彼のデザイナーとしての姿勢は、“コンセプトよりも直感に忠実に”。そしてストーリーテリングではなく、純粋に美しくクールで自由にスタイリングできる服を作りたい、と言う実直さだった。毎回のコレクションで変わるのは、彼が感じるところの“今”だけだ。シンプルなだけに力強いコレクションに、今回もパリが、いや世界中が、沸いた。“ウィズ・バイト”(ピリッとした)、“スライトリー・オフ”(少しだけ外した)と言う彼自身の言葉は、どんなミューズやテーマよりも、セリーヌのコレクションを如実に表している。
オーバーサイズのシルエットは終わり(マフラーとイヤリングだけはオーバーサイズで!)。でもボディコンシャスではなく、なんともいい塩梅のフィット感。ボトムはバギーでもアーチでもスキニーでもなく、クロップドのフレアパンツがフレッシュだ。ワイドラペルのテイラードはどこか1970年代を感じさせつつ、レトロには転ばない。極細からサッシュベルトまで、ウエストマークのバリエーションの豊富さは、マイケルによる自由なスタイリングの提案かもしれない。“服を着ると、装いによってその日が変わる”と言う彼の言葉が想い出される。さらにさまざまな形のクラシックな帽子とちょっと大胆なアイウエア、ひじパッチからジャラジャラとしたチャームネックレスまで、小物は“ウィズ・バイト”のパーフェクトな伴奏役。白とクリーム、赤とチェリーピンクとバーガンディー、キャメルの濃淡、黒とネイビー、と言った微妙な色合わせ。オールホワイト、オールブラック。テイラードとルーズシルエット。ここには見たいもの、着たいもののすべてがある。
ショーのバックステージで、カルトな映画監督ガス・ヴァン・サントが撮影したポラロイド。Photo: Gus Van Sant
帽子とアイウェアがクラシックなルックに“バイト”をプラス。Photo: Courtesy of Celine
フレアのクロップドパンツは注目アイテム。Photo: Courtesy of Celine
黒やカーキ、キャメルに混じって、差し色はパープル。Photo: Courtesy of Celine
研ぎ澄まされた美しさ【TOM FORD(トムフォード)】
ハイダー・アッカーマンによるトム フォードのウィメンズとメンズ混合のショーも、先シーズンに続きベスト・コレクションの一つに数えられた。テーラードはますますシャープにアップデートされ、ウィメンズのスカート・スーツも非の打ち所がない美しさ。一方シャツではクラシックなストライプにレザーやアニマルプリントの襟をあしらうなど、大胆なディテールで一捻りした。パンツではハイウエストと1990年代のヒップハングの再解釈が共存。ショーの中盤ではシアな素材やレース、そして黒のレザーで縁取りしたトランスペアレントのアイテムが取り入れられ、ハイダーらしい官能性をデリケートに表現した。余談だが、ブランドのファウンダー、トム・フォードはファッション界からは去ったものの、自身の1990年代のヴィジョンが現代の新しい美意識として再注目されている。現在はアン・ライスが18世紀イタリアを舞台に描いた小説『Cry to Heaven』に基づいて、アデルを起用して新しい映画を準備中だとか。彼の動向も気になるところだ。
テイラードの技術が顕著な、スカートスーツ。Photo: Courtesy of Tom Ford
極細ベルトは、ヒップハングパンツの内側のストラップで固定されている。Photo: Courtesy of Tom Ford
細かいハウンドトゥースのスーツとストライプのシャツは、襟で遊んだ。Photo: Courtesy of Tom Ford
シアなボトム、そしてピンストライプのマスキュリンなジャケットの上にシャンパン色のサテンのボンバーズ、と言う組み合わせが心憎い。Photo: Courtesy of Tom Ford
パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/