2026FWパリファッションウィークの第三弾は、注目の若手とイベントなどのニュース

2026FWパリファッションウイーク、チェックリスト 3/3

2026FWパリファッションウィークの第三弾は、注目の若手とイベントなどのニュース

“ライジングスター”その後。【アランポール】と【オーガスト・バロン】

若手を語るにあたっては、まずは本誌2005年12月号で取り上げた“ライジングスター” 2ブランドのその後を追ってみた。今シーズンの若手の中でも群を抜いていたのは、アランポール。元コンテンポラリーダンスのダンサーとあって、本誌のインタビューでも答えてくれたように、世界観とボディの動きという両方の観点でダンスからのインスピレーションをまっとうする、端正な容姿のアラン。最新コレクション“レペルトワール”(レパートリー)の実現をサポートしたパリ装飾芸術美術館からは、発表の場だけでなく、膨大な衣装アーカイブスへのアクセスが提供された。おりしも同美術館では、18世紀のパリの貴族の屋敷での様子をオブジェや調度品、衣装で見せる展覧会"A Day In the Eighteenth Century: A Chronicle Of A Parisian Townhouse"が開催中(7月5日まで)。アランは歴史的コスチュームに夢中になり、コルセットやパニエスカートを研究してモダンに解釈。また、Les Teintures de Franceとのコラボレーションで18世紀のタペストリーのモチーフをプリントに落とし込んだ。さらに彼が得意とする一捻りしたテーラード・ピースは、ドレープやリボンなどフェミニンな要素と共存し、フェミニンとマスキュリンが絶妙な匙加減で融合。ちなみにアラン・ポールはPFW後には東京でもショーを開き、好評を博したばかり。

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アランポール。彼がリサーチで見た18世紀のロマンティックな花柄は、散りゆく花の刹那の美しさに消化された。 Photo: Courtesy of Alainpaul

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アランポール。チャンキーなニットとレディライクなスカートがコントラストを成す。 Photo: Courtesy of Alainpaul

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アランポール。ノスタルジックなニットとドレープを効かせたスカートの組み合わせ。Photo: Courtesy of Alainpaul

一方オーガスト・バロンはショーの開催を年に一度秋のみとしているものの、PFW会期中にはドーバーストリートマーケット・パリでパーティを。Real House Wifeと題された 2026SSコレクションのルック写真を編集した本の、出版記念である。デザイナーデュオ、ベンジャミン・バロンとブロー・オーガスト・ヴェストボが本誌インタビューで語ってくれたように、コレクション作りの原点はファッション撮影だった。だから彼らはファッションウイーク・カレンダーには迎合せずに、自身のコンセプトを遂行しているわけだ。そしてF W直後には、2026FWコレクションをオンラインで発表。Bedtime storyと名付けたコレクションの“キャラクター”としてイメージしたのは、穴に落ちて全速力で走り続ける不思議の国のアリスと、プロムパーティのために着飾る1970年代のティーネイジャー。だからこの機に公開されたビデオも幻想的で美しい。スタイリングはもちろん、ロッタ・ヴォルコヴァ。

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オーガスト・バロンのBedtime Storyコレクションより。Photography: Marili Andre, courtesy of August Barron

Bedtime Storyのビデオ

注目ブランドは【アブラ】と【ユニフォーム】

設立は2019年と最近ではないが、2024 年10月にランウェイデビューを果たしてから着実に評判を高めているのが、スペイン出身のアブラハム・オルトゥーニョ・ペレスによるアブラ(ABRA)。自身が履ける特大サイズの美しいヒールシューズを作りたいという願望からシューズブランドを始めた彼は、これまでロエベやジャックムスでも靴をデザインする一方、アブラでウィメンズプレタポルテを発展させるようになった。最新コレクションでは、パッチワークまたは誇張されたボリュームや装飾で、相反する要素のクロスオーバーを提案。

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アブラのアシメトリー・ドレス。Courtesy of Abra

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アブラでは、サイズ感やカッティングで誇張されたシルエットを遊びこともしばしば。Courtesy of Abra

そして今回話題となったデビューは、ユニフォーム(Uniform)。クリエイティブ・ディレクターは、ベッツィ・ジョンソン(Betsy Johnson。1960-70年代にポップカルチャーのブームに貢献したアメリカ人デザイナーBetsey Johnsonとは別人)だ。ブランド名に“ユニフォーム”を選んだのは、制服は不特定多数に向けたものなだけに着る人の個性を引き出すから。“シークレット・ショー”はシャトレ劇場にて、ウォッチ・パーティとの同時進行。ウォッチ・パーティとは昨年始まった、スポーツ観戦のごとくパブリックスペースで無料でスクリーン上のライブ配信を鑑賞できる集まりで、フィナーレ直前にはライブ動画を投影していた垂れ幕が落ち、背後から本物のショーがあらわになった。グレーやカーキ、黒など抑えめのトーンでアップサイクルのジャージィ素材を使ってのアイテムは、ポロシャツやTシャツ、レギンスなど。 “プロテクション”、“再構築”、“コントロール”をキーワードに、ドレープ、ツイスト、または誇張したシルエットでコンセプチュアルに仕上げた。ベッツィ自身のバックグラウンドは、イギリス北部出身の若手スタイリスト、コンサルタント兼コンセプチュアル・アーティストということ以外、今のところ公開されていない。今後も匿名性を続けるのかどうかも、気になるところだ。

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ユニフォームでは、デッドストックのジャージーを多用。 Photo: Courtesy of Uniform

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“プロテクション”の解釈か、ユニフォームでは腕を覆ったトップやアウターが多かった。 Photo: Courtesy of Uniform

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ウォッチパーティと一体化した、ユニフォームのフィナーレ。 Photo: Courtesy of Uniform

LVMH賞、2026年度の栄光は誰に?

毎年ニューホープに賞金やメンターシップが贈られる、LVMH賞。近年では桑田悟史によるセッチュウ、大月荘士のSOSHIOTSUKIらの日本勢がグランプリを受賞したことは、記憶に新しい。PFW期間中にバイヤーやメディア向けのショールームで作品を発表したのは、書類審査でセミファイナリストに選ばれた20のブランド。日本からはシュタインの浅川喜一朗 とSHINYAKOZUKAの小塚信哉、アントワープからはジュリー・ケーゲル、と知った顔も見られた。構築的なドレスで際立ったのは、テヘラン出身、トロント在住のイラン人女性、ゴルナー・アーマディアン(Golnar Ahmadian)によるゴルサー(Golsaah)。インドのカルティック・クムラ(Kartik Kumra)が手がけるカルティック・リサーチ(Kartik Research)は、手の込んだ刺しゅうで母国の職人技術のレベルの高さをアピールした。彼は、ニューヨーク市長ゾーラン・マムダニが就任式でそのネクタイを着用しことでも話題だ。またピエールパオロ・ピッチョーリいち押しの中国系イタリア人、ルカ・リン(Luca Lin)のACT N°1 は、コンセプチュアル・グランジとでも言おうか、他に類を見ないスタイルが新鮮。さらにイギリスのハリー・ポンテクラフトによるポンテ(Ponte)のブースでは、デッドストックの生地や難ありオブジェなどを素材とした一点一点が独立したアート作品の域。二ューヨークで昨年秋に初めてのショーを開いた中国人、ザネ・リ(Zane Li)によるリー(LII)のコレクションは、グラフィカルでインパクトが強い一方、コマーシャルの可能性もうかがわせる。コンセプチュアル、サステイナブル、サルトリアル、クラフトなど、その年のムードも毎年の審査結果に少なからず影響するが、今年はどうなることだろう?

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シュタインの浅川喜一朗 Photo: Minako Norimatsu

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ザネ・リ(Zane Li)によるリー(LII)は、ニューヨークでコレクションを発表している。Photo: Minako Norimatsu

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アントワープの王立アカデミー出身、パリでコレクションを発表するジュリー・ケーゲル。 Photo: Minako Norimatsu

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トロント在住のイラン人女性、ゴルナー・アーマディアン(Golnar Ahmadian)によるゴルサー(Golsaah)。Photo: Minako Norimatsu

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イギリスのハリー・ポンテクラフトによるポンテ(Ponte)  Photo: Minako Norimatsu

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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