2017.02.23

透明感に満ちた絵を描く、澄んだ瞳の日本画家－田口由花

世界中のストリートでスタイリッシュな美女たちを見出し、スナップしてきた、フォトグラファーのミトグラフ。アップカミングな女性を見つけ出すことにかけては右に出る者なしの彼が、最近出会った注目の女性や、今いちばん会いたいイットガールを撮影する連載「M'IT GIRLを探して」。ウェブ版では、ミトグラフと「M'IT GIRL」の対談により、より深く彼女の魅力に迫る。第１回の「M'IT GIRL」は、新進気鋭の日本画家、田口由花さん。

奥行きのある、静謐な空気感の日本画に一目ぼれ

ミトグラフ（以下、M）「最初に田口さんの絵を見たのは２年前の初夏。地下街のショーウィンドウに展示されている絵の中のひとつが田口さんの『金の雨』だった。一目見て、『この世界観、好きだ』と思いました。田口さんの絵がもつ、がやがやしていない、静かでしっとりした空気感が、僕の撮りたい写真の世界観に似ていると思ったんです」

田口さん（以下、T）「『がやがやしていない空気感』はすごく大切にしていますね。余白を大切にしたいと思っていて、無駄なもの、描く意味のないものは描かないよう心がけています。余白にすっと手が入るような、奥行きのある画面をつくりたいと思っています」

M「『無駄な情報は極力省く』というのは、写真を撮るときにも大切なことですね。それにしても、田口さん自身と、絵の中の女性の雰囲気が似ていますね。絵の女性も、田口さんと同じく透き通った色の瞳をしているし」

T「描く人物の瞳に関しては、黒目をあまりはっきり描きたくないという思いがあるんです。どこを見ているか、どんな感情を抱えているか、わからないくらいのほうがいいな、と思って。絵を見るかたや、見るタイミングによって、いろいろな感情が読み取れたら嬉しいですね」

M「僕はよく女性を撮影しますが、自分の理想の女性像が多かれ少なかれ被写体に投影されていると思う。田口さんはご自身も女性ですが、女性を描くときはどんな思いで描きますか？」

T「きれいだなと思うモデルの、そのきれいな部分が素直に表現できるようにと願いながら描いています。具体的に大切にしているのは肌の質感と色み、そして髪の毛。女性らしさや女性の美しさがいちばん出る部分だと思うので。あとは内面の魅力もあるでしょうか。仲のいい友人にモデルを頼むことが多いのですが、モデルの性格を知っているので描ける表現もあるかな、とは思います。モデルとして好きなのは、ただ美人だというだけではなく、内に秘めたところのある女性ですね」

M「そういうモデルの芯の強さを描いているところに、僕は惹かれたんですね。僕がモデルとして好むタイプは、育ちのよさそうな子(笑)。お箸がちゃんと持てます、みたいな感じが、外見にもにじみ出ているような女性がいいですね。きっと、田口さんの描く女性像と共通する面があるんじゃないかな」

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「つくりたい作品」と「求められる作品」のギャップを超えて

M「インスタグラムに作品をアップしていることもあって、写真を見てくれる人の声は、僕にとってとても大切。もちろん『自分が撮りたいもの』を撮ってはいるんですが、『みんなが見たいと思うもの』を提供するのも大事だと思っているんです。おしゃれなファッションスナップや美女のポートレイトを撮りはじめたのは、そういう事情から(笑)」

T「すごくよくわかります。実は私、３年くらい前までは、今よりも内面的で暗いモチーフの絵を描いていたんです」

M（作品のポートフォリオを見ながら）「本当だ、全体的にトーンが今と違いますね」

T「使う色自体も暗かったですね。でも大学４年のころ、もっと元気がもらえる作品や、明るい気持ちになれる作品の方が、今の世の中に求められているのかもしれない、と思った時期があって。それで一旦、自分の内面性に目を向けるよりも、花や女性のありのままの美しさを素直に表現してみよう、と思ったんです。そこから画風がガラッと変わりました」

M「周囲の反応はどうでしたか？」

T「『前の画風の方がよかった』という声もありましたが、より幅広い層の人に興味を示してもらえるようになったという手ごたえはありますね。それはとてもうれしいです。ただ、そうやって２年ほど取り組んできた今、改めて以前の内面的なアプローチに回帰してみるのもありかなとも感じています。まだ先のことはわかりませんけれど」

M「今後がますます楽しみだなあ。ぜひ、一緒に何か作品をつくりましょう！」

photography:mitograph interview&text:Chiharu Itagaki