こだわり抜かれた素材、美しいカッティング、繊細なディテール使い。服づくりにおける純粋な美を追求する姿勢から「マニアのための服」と称賛されながらも、つねにリアルクローズであり続け、世界中のモードラバーたちを虜にするJIL SANDER（ジル サンダー）。2017年にルーシー アンド ルーク・メイヤーがクリエイティブ・ディレクターに就任して以降、次々とヒット作を生み、この数年間でブランドはさらなる高みへ。今回は、自称「熱烈なジル サンダーファン」を名乗るSPUR.JPエディターの２人が、東京・表参道の旗艦店「ジル サンダー ブティック 表参道店」へ突撃取材。本気で欲しいアイテムを厳選し、ブランド愛を語り尽くします。しばし、お付き合いをば。
クリーンで実用的。麗しのスモールレザーグッズ
エディターAKIYAMA（以下A） あ、店に入った瞬間に目つきが変わったね。完全に真剣モードだ。今日はよろしく。
エディターHAYASHI（以下H） 「良品ハンター」はブランドの名品をかたっぱしから試着する企画だけど、こんな機会ってなかなかないよね。プライベートの買い物で「あれもこれも試着させて！」ってお願いするの、ちょっと気が引けるじゃない。大好きなジル サンダーのアイテムをじっくり吟味できるのは本当にありがたいです。
A それじゃ気合いを入れて、まずはスモールレザーグッズから見ていきましょうか。毎シーズンカラーバリエーションが豊富だけど、今季は特に鮮やかな色みがそろいました。目の覚めるようなブルーに惹きつけられる。
H サンゴ礁によって作られた海域を意味する「Lagoon（ラグーン）」という名前が付いているけど、まさに紺碧の海って感じ。これはイール（うなぎ）レザーだから出せる色だね。独特の縞模様のような表情と光沢感も奥深い。
A スリムな二つ折りなのにカードスロットが10ヵ所もある。そして紙幣も小銭もたっぷり入る。
H がま口が「パチッ」と閉まる音もいいんだよね、この「Goji（ゴジ）」シリーズは。使うたびに愛着が増していって。
A つまみの部分がゴジベリー（クコの実）をモチーフにしているから「ゴジ」。ネーミングにキュンです。
H ぽってりとした金ピカのカードケースもチャーミング。小さくても存在感がまばゆいから、バッグの中ですぐ見つけられそう。おまけに金運もアップしそう。
A ジップがL字に開くフラグメントケースは、クリーンなデザインと汎用性の高さが魅力。わたしは小銭やカード、領収書などのほかに、家の鍵も入れたい派です。
ベーシックなブーツに遊び心を添えて
A ヘビーユース確定なのが、黒のサイドゴアブーツ。
H ラウンドトゥに、ぷっくりとしたラバーソール。曲線使いが絶妙！ たまらなく愛嬌がある。
A いい意味でストイックさが削られるよね。ボリュームはあるけど履き心地は軽やかで、安定感もある。７cmヒールとは思えない歩きやすさ。
H サイドゴアブーツってタフな印象になりがちだけど、全体的に丸みがあってプレイフルなデザインだから、印象が違って見えるね。着こなしにユーモアが備わるというか。
A 確かに。かっちりとしたジャケットスタイルやクラシックなアウターのハズし役としても使えそう。モノトーンでシンプルにまとめた装いでも、これ一足でモード感をプラスできちゃう。
H 「あの人、さりげないけど、なんかおしゃれ！」がかなうブーツだね。
横長バッグブームの火付け役。大人気「カンノーロ」バッグの新作
A デビュー後、瞬く間にブランドのシグネチャーとなった「Cannolo（カンノーロ）」バッグは、今一番狙っているアイテムです。できれば今日、買って帰りたい。
H サクッと揚げた生地にたっぷりのクリームを詰め込んだ、シチリア伝統菓子のカンノーロがインスピレーション源。それを聞いただけでも食指が動くんだけど、この削ぎ落とされた筒状のシェイプを初めて見たときは衝撃だった。本当にお菓子のカンノーロみたいでワクワクすると同時に、モダンな造形美にため息が出たよ。
A ここ数シーズンの横長バッグブームの火付け役でもあるよね。ミニ、スモール、ミディアム、グランデとサイズ展開が豊富なのも魅力。ちなみにわたしは日常使いしやすいスモールサイズ推し。見た目はスリムだけど、長財布やスマホ、小物類は難なく入る。
H 最近街でおしゃれに持っている人をよく見かけるので、ますます憧れる。新作はトップハンドル付きなんだね。しかもショルダーストラップが取り外せる。
A ランウェイでのスタイリングをお手本に、クラッチ風に持つのもいいよね。ストラップを短めにして斜め掛けしている人をこの前見かけたんだけど、その持ち方がすごくかわいかったから、ぜひマネしたい。
H ピュアなホワイトレザーはダークトーンのアウターによく映えるね。そういえば以前、カンノーロ バッグを買った友人が、夫婦でシェアしてるって言ってたっけ。
A それ名案！ 夫と割り勘で買うという手もあるな。
お気に入りの星座モチーフでパーソナライズ
H わたしがひとめぼれしたのは、星座のペンダント。こうして並べると眼福です！
A 星座モチーフは2022年秋冬シーズンにも登場していたね。「ジル サンダーを自分色に染めてほしい」というメイヤー夫妻の思いが込められている。
H ここ数シーズンは「パーソナライズ」がクリエーションのキーワードのひとつになっていて、星座はそれを象徴するモチーフ。どれにしようか、かなり迷ってます。自分の星座か、家族の星座か、はたまた推しの星座か……。
A 推しの星座、いいんじゃない？ 大ぶりでインパクトがあるから、サイン会とかハイタッチ会で反応してもらえる可能性大。
H 確かに。じゃあ水瓶座で！ それにしてもこのいびつな造形、彫刻みたいだよね。見れば見るほど味わい深いし、職人さんの手の温もりが伝わってくる。
A チェーンの留め具が２ヵ所に付いていて、長さを調節できるのもポイント。短くしたときに、背中にチェーンが垂れ下がるのが素敵なんです。シンプルなニットやシャツに合わせたい。
有機的でコンテンポラリーなゴールドカラーのジュエリー
H 星座ネックレスに合わせるなら、やっぱり耳もとはゴールドカラーのピアスだよね。
A わたし、このフープピアスを愛用してるんだけど、ものすごく使えるよ。オールシーズン、どんな着こなしにもマッチしつつ、程よいアクセントになる。つけ心地も軽いし、毎日これでも全然飽きない。
H 耳たぶの下でチェーンが揺れるボールピアスも気になる。実際につけると大粒の玉が浮いているように見えるね。個人的にはキャッチの方を前にしてつけたい。
A ねえ、このバングル、植物のつるが巻き付いてるみたいじゃない？ こういった有機的なデザインは、メイヤー夫妻のクリエーションならでは。無駄なものは削ぎ落としつつも、あたたかくてやさしい。
H 自分でサイズ調節できるから、手首だけじゃなくて二の腕にもつけられそう。タイトなニットの上から重ねたら、それだけでコンテンポラリーな雰囲気に！
ニュアンスカラーで、足もとを主役に
A こちらも大人気のモコモコサンダル。今季の狙い目は、なんといってもこのピスタチオグリーン。
H このやわらかなニュアンスカラー、じつにジル サンダーらしい色だね。
A 目にも心地よいシアリングのアッパー、毎日なでなでしたら成長しそう。
H ソールにもしっかり厚みがあって、どんなに歩いても疲れ知らず。足がよろこぶ、ご褒美サンダルの決定版！
A 冬場はふわふわモヘアのソックスを合わせて。足入れするたびにうっとりするだろうなあ。
まるでアートピースのよう。通勤バッグにも最適なウーブンバスケット
A さて、ここからはワーキングスタイル目線で選んでいきたいと思います。わたしたち、猛烈に働いているので。
H アーティスティックな佇まいのウーブンバスケット、仕事バッグとしても大活躍間違いなしでしょ。
A ラージサイズはA４資料がすっぽり収まる上に、マチもあって抜群の収納力。しかも同色のレザーポーチ付きという気の利きよう。
H かたちはベーシックだけど、不規則なレザーの編み込みがモード感を底上げするよね。
A これぞ、手仕事の賜物！ ラフさと上品さのバランスがお見事です。
どの角度から見ても美しい、テーラードジャケット
H 大人のための定番アイテムがそろう「ワードローブ」コレクションから、憧れのテーラードジャケットをセレクト。何度見ても、シルエットの美しさに惚れ惚れします。着たときに、かたちがまったく崩れないのが本当にすごい。
A 羽織るだけで、背筋がピンと伸びる一着だよね。ウエストが少し絞られていて、後ろ姿がすっきり見えるし、スリーブにはプレスが施されているから、袖のラインもすごくきれい。どの角度から見ても完璧だ……。
H ハリのあるドライな質感もクセになる。この素材、確かジャパニーズウールなんだよね？
A そうそう、ウールでここまで立体的なシルエットが作れるのは、高品質とされる日本産ウールが使われているから。
H 「素材マニア」といわれるメイヤー夫妻、 さすがです。
A ちなみに創業者のジル・サンダーさんは、「掛けた状態でも、着ても美しい服」を作ることに徹底してこだわっていたそう。
H 服作りに対する厳しい姿勢から、「鉄の女」と呼ばれていた話は有名だよね。そしてメイヤー夫妻もそのこだわりをしっかり受け継いでいらっしゃる。そのことが、彼らのクリエーションからひしひしと伝わってきます。
実用的なのに夢がある、7 デイズ シャツ
A ジル サンダーといえば、日常に寄り添うファンクショナルな服を提案し続けてきたブランド。だからこそ、シャツ抜きには語れません。
H そのとおり。特に７ デイズ シャツは全力でおすすめしたい。
A 月曜から日曜まで、各曜日のムードに合わせてデザインされたコレクション。白と黒のほかに、今季新たにブルーのストライプが加わりました。
H この凛とした空気感がたまらない……。イタリア製コットンのパリッとした質感も素晴らしい。
A スタンドカラーのWednesday（ウェンズデー）は、ヒップがすっぽり隠れるロング丈なのでリラクシングに着られそう。程よく肩の力の抜けた週の中間の気分を、見事に表現しているなと感心します。
H 禁欲的なのに不思議と遊び心を感じるのは、ジル サンダーだから為せる技。できることなら全曜日そろえたい!!
ベーシックだけど“語れる”ニットをひとつ
A 続いて、秋冬の必須アイテム、ウールニットを着てみましょうか。
H こっくりキャメルのリブ編みに、すっかり心酔しています。着膨れない程度にふっくらしていて、実際に着るとほら、立体感が生まれるでしょ。
A サイドスリット入りで、身頃の丈に前後差があるから、肉厚でも軽やかに着こなせるね。体のラインを拾わないから、体型がカバーされるのもうれしい。
H 首元や裾などの編み柄が細かく切り替えられていて、控えめながらも語れる要素がたくさんある。こだわりが詰まった一品です。
暗めのアウターに映える花柄は、まとうだけで幸せな気持ちに
A 花柄は毎シーズン登場する、おなじみのモチーフ。
H ジル サンダーの花柄は、魔法の花柄。まとう人がとびきり幸せな気持ちになれて、歩くアートにもなれるから。
A わかる！ 単に華やかなわけではなく、芸術的な趣があるよね。このスカート、はいてみてわかったんだけど、裾がバルーンのようなかたちになってる。
H ほんとだ。ふんわりしてる。なめらかなジャージー素材だから、ドレープもすごくきれいに出るね。
A これからダークトーンの装いが増えていくから、鮮やかな色柄のボトムは重宝するね。アウターの裾からちらっと覗くだけでも明るい気持ちになれる。心にも花を咲かせてくれる一着。
細部に宿るこだわり。究極の美シルエットデニム
H トリを飾るのは、「ワードローブ」コレクションに新たに仲間入りしたジーンズです。
A この静謐な佇まい。パッと見ただけでも、普通のデニムじゃないってわかる。
H 深いインディゴとホワイトステッチのクリーンなコントラスト。そしてこの独特のハリ感。使われているのは岡山県産のデニムで、またしても日本の素材が登場。わたしは岡山出身でもなんでもないけど、なんだか誇らしいよ。
A 後ろもレザーパッチのない、究極にシンプルなデザイン。でもよく見ると腰まわりにダーツが入っていて、ヒップが美しく見えるように設計されている。
H ゆるやかなテーパードで、少しゆとりがあって、なにこれ、理想的な美脚シルエットじゃないですか。
A はき心地のよさも考え抜かれていて、内側は肌あたりがいいようにシングルステッチになってる。決して奇をてらったデザインではないけれど、こだわりが半端じゃない。
人生をともに歩みたくなるブランド
H メイヤー夫妻はデザイナーであると同時に、職人でもあるんだなと実感したよ。いいものを作るために、決して妥協しない。クリエーションの端々に、ふたりの確固たる信念を感じます。
A 同感です。知れば知るほど魅力に気づき、好きになる。
H わたし、決めた。来年の息子の卒園式と入学式のために、テーラードジャケットを買うことにします。さっきの袖を通したときの感動が、体全体にしみわたってる。
A 入学式で着て、さらにその６年後の卒業式でも着られるんじゃない？ もちろん、デイリーにも。それこそ一生ものだ。いい買い物だね。
SPUR.JPではファッション、SDGs、ジュエリーなどを担当。シンプルな中にもこだわりの詰まった服が好き。「ジル サンダーは、自分のためにある」と思い続けて早10年、あるいはそれ以上。最近は、７デイズ シャツのSaturday（土曜日）を週３で愛用中。
SPUR.JPではファッション、カルチャー、SDGsなどを担当。今回の取材を通して、ますますジル サンダーにぞっこん！ 購入してから肌身離さずつけているジル サンダーのお守りピアスや、メンズもののミニバッグや黒トップスなどを愛用中。カンノーロバッグと７デイズシャツはいつか絶対に購入しようと心に決めている。
